第11話

「……何だこれ」


 女神が手に敷いている物を手に取る。


「紙と……ボタン?」


 そこにあったのは何かがびっしりと書いてある紙と、小さなボタンだった。


 ボタンは白い台座に金の装飾が施されており、押す部分は金色とかなり豪華な見た目だ。


 ひとまず、俺は紙を読んでみる。


『鈴木旬様へ。

この度は、私のミスで異世界へ全ステータス1で送ってしまい、大変、申し訳ありませんでした。』


 謝罪……?

 目の前にいるんだから直接言えば良くないか?


 俺は違和感を覚えながら紙を読み進める。


『このことを大天使様に知られると、私は間違いなく無職になってしまうので、すみませんが、ステータスの修正は出来ません。私にも生活があるんです。』


「は……?」


『ステータスを直す代わりに、押すと一日一度だけ蘇生することの出来るボタンをお渡しします。これでどうにかしてください』


「おい……!」


『本当に申し訳ありません。どうか、ご理解下さい。

女神より』


「てめぇーーーーーーーー!!!!!」


 俺は女神を怒鳴りつけた。


 人々の模範のような人格者であるべき女神が、自分のミスを修正するんじゃなくて隠蔽するだと!?

 しかもそれを被害者である俺に対して堂々と伝えるだと!?

 舐めてんのか!?

 完全に性根が腐ってやがる!


「顔上げろボケ!!! 説教してやる!!!」


 女神は俺の罵倒も何処吹く風で、無言のまま土下座を続行している。


「おい!!!」


 俺は紙をポケットに突っ込み、女神の肩に手をかけた。


 そのまま軽く揺すぶる。

 凄まじい違和感を覚えた。


 肩を揺すぶる度に、体全体が傾いているのだ。


「………」


 俺は女神を一際強く揺すぶる。


 女神は転がり、四肢を天に差し出した。

 土下座の形のまま。


「……は?」


 女神、じゃない。

 これ、人形だ。


「だあぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」


 俺は女神人形の首を引っ掴み、叫びながら投擲した。


 女神人形は数度バウンドし、四肢を天に差し出した状態で止まった。


「お前ぜってぇ殴るからなあぁぁぁあ!!!」


 俺は咆哮した。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「ふぅー、ふぅー」


 ひとしきり女神への罵詈雑言を叫び、少しだけ落ち着いた俺は、女神人形を椅子代わりにして座っていた。


 ああ、クソ!

 ふざけやがって!

 何が、すみません!

 何が、どうにかしてください!

 どうにかすべきなのは手前だろうが!

 あいつビンタしてやりてえ!


 何とか、あいつを殴る方法は無いだろうか……




 ……ま・て・よ?


 俺が魔王を倒したら、大天使様とやらに会えるんだよな?


 その時に、この件について洗いざらいぶちまけたら……


 俺は邪悪な笑みを浮かべた。


 女神は罰せられ、大天使様は俺を地球に返してくれる……

 何だったらクソみてえな境遇に置かれていた俺に同情して、何かサービスしてくれるかもしれない!


 完璧なハッピーエンドだ……!


 よし!

 やってやる。

 やってやるぞ……!


 何が何でも勇者共をぶっ飛ばし、女神をぶっ飛ばし、地球に帰る。

 絶対にだ!!!


 俺は決意を固めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る