第19話
今日のゼミはとてもギスギスした空気だった。
誰も喋ろうとしないのだ。他のグループから楽しそうで和やかな会話が聞こえてくるたびに落ち込んだ気分になってしまう。
重い鉛よりもずっと肩に負荷がかかる空気がこの場に充満している。
「いい加減、誰が伝えたのか言ったらどうなんだ、おい」
荻原はすでにキレている。
「あんただって可能性があるの、忘れないでよね」
「俺がやるはずないだろ。なあ、東村!」
「う、うん」
下を向きながら情けない返事をした。どこか自信なさげな表情も垣間見えた。
「東村くん、何か隠していることがあるなら、すぐに言ったほうがスッキリすると思うよ」
「東村とは、前のゼミのあと話したんだ。コイツは知らせていないって確認済みだぜ」
「荻原には聞いてない。東村くんに聞いてるの」
「ああん!?」
「あんた、ちょっと黙ってなさいよ!」
「うるさいな!わかったよ」
「僕はやっていません。特に理由もないですし」
「ほらな!」
雰囲気的に何か隠しているような気がするし、気のせいだったのか。
「あ、あのっ、もし、犯人さんがいても、この場で話すのは難しい空気だと思います。」
他のグループも作業中なのに、ここでいきなり謝るのは、注目が集まってしまう。
「誰が他のグループに教えたのか、わからないけどさ、あたしたちのグループのテーマはそのままでいいの?」
「それは大丈夫。私が、そのグループのリーダーさんと話して、うちのテーマはそのまま使うことになったから。」
「ふーん、それならこの時間でどんどん作業を進めた方がいいじゃん」
「一ノ瀬の意見に賛成だ!俺も黙ってただ時間を無駄にするよりは作業を進めた方がいい」
「あんたと意見が同じなんて、なんか気持ちわるい」
「たまには、意見が合ったっていいだろ!」
「やっぱりなんか気持ち悪い」
「お前ほんとに腹立つな」
「僕もそう思いますね。インタビューが終わったとはいえ、僕たちの再開発に対する意見がまだ、ぼんやりしているので、そこを詰めた方がいいと思います」
東村の眼鏡は午後の光に当たって煌めいている。
「そうだな」
とりあえず重い空気は取り除かれた。私たちのグループも周りのグループと同じ雰囲気とはいかないが、作業を進めることにした。
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