(未定)※初めての恋愛っぽい小説
@nonoharupapa
第1話
スペースシャトル・チャレンジャー号が宇宙に向けて飛び立った時、僕はちょうど10歳になったばかりだった。
正確に言えば、1986年1月29日1時39分、つまり僕が10歳と1時間39分になった時だ。
どうして時間まで覚えているのかと言うと、僕は僕の誕生日に打ち上げられるというスペースシャトルを見るため、夜遅くまで起きていたのだ。
僕は子供部屋から顔を出して、親の気配を伺う。
両親の部屋からは何の音もしない。
テレビは1階のリビングと2階の両親の部屋にあった。
両親は寝ているはずだったから、目指すはリビングだ。
真っ暗な階段は普段とは異なり、どことなくよそよそしい。
音を立てないように一つずつ、慎重に降りる。
予想通り、リビングの電気は消えている。
冷蔵庫のコンプレッサーの音がやたらと響いている台所を抜けて、リビングに入ってテレビを付けた。
音を出してはいけない。
音量をゼロにすると、リモコンで各局を回した。
テレビに映ったのはちょうど打ち上げ数秒前だった。
メインエンジンに向かって火花が散り、ロケットに点火する。
だが、すぐには上昇しない。
まだ発射台とスペースシャトルを繋いでる固定ボルトがある。
数秒遅れて、赤い燃料タンクの両脇にある固体ロケットブースターにも点火し、固定ボルトが解除されると、白いスペースシャトルは垂直に上昇を開始する。
巨大な炎と大量の煙を吐き出しながら、始めはゆっくりと、次第にスピードを上げて、大空に駆け上っていく。
僕はそれをまるでサイレント映画のように見ていた。
僕の10歳の誕生日に宇宙に向かって飛んでいくスペースシャトル。
真っ青に澄み切った空を上昇していくスペースシャトルは、僕が大人になることへの期待と不安そのものだった。
空をも超えて、はるか漆黒の宇宙まで続いていくはずの白煙の軌跡に、これからの僕の未来を重ねていた。
T+72.284、打ち上げ開始から72.284秒後、スペースシャトル・チャレンジャー号は爆発した。
これが僕の10代の始まりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます