2章苦悩の3分咲き
お昼時、僕らは此処の中にある神社に来ていた。この神社は年中満開で純白の枝垂れ桜が御神体で通称『願掛け桜』と呼ばれている。『自分の現状を必死に変えたいと願う者に花びらが力を授けん』という伝承は市内の人の殆どが知っている。そして知らない人でもこの桜の美しさに惹かれてやって来る。正直言ってかなり美しいと思う。
そんな桜に『いじめられている現状を変えたい』と願った瞬間に突然強風が吹き、僕と桜子の所に花びらが落ちて来た。だが僕のはすぐに萎れてしまい、桜子のは萎れず、すぐに8枚になった。僕らは一瞬で伝説が実在する事を理解し驚いた後に笑い合った。
桜子の花びらと僕の萎れた花びらを見比べて、桜子のはあんなに元気で笑顔なのに僕のはとても元気がなく笑顔でない。
桜子の笑顔を思い出して僕はもう2度と桜子みたいな真っ白な笑顔には成れないのだと思い少し哀しくなった。
「オメデトウ。君八選バレた」
「は?君は何言っているの?」
僕の目の前に現れた全身が真っ黒な青年の意味不明で感情がない言葉に思わず驚いて固まってしまった。
「コノコトバの意味ガ分カル日八刻一刻ト近ヅイテイル。ソレマデコノ日常ヲ楽シンデね」
まだ固まっている僕を横目に彼は不気味に笑い去っていった。
レストランに入り料理を頼んだ瞬間にスマホに電話がかかってきた。その主は明俊だった。感情よりも疑問が思い浮かぶ。何故電話なのかで何故今頃なのか。僕は考えすぎて『何故』の渦に呑み込まれた。
「電話に出なくていいの?」
桜子は僕を一言で現実に戻してくれた。腹を決めて電話に出る。
「どうしたの?」
低く警戒する声で問いかけた。
「明日、明後日学校に来てくれないか?」
真剣な声で言われてもこの言葉には怒りを通り越して呆れてしまった。謝罪もなしに用件を伝える人が何処に居るんだか。
「謝罪が出来ない人の言う事をなんで僕が聞かないといけないの?」
冷静だが怒っているのが伝わったのか明俊は黙りこくってしまった。
「それについてはほんとにごめんな。…くめきぬせぬかせういおそゆわるかのそそそてふへもかて。ヒントは3。それじゃ」
彼は言い終わったらすぐに電話を切ってしまった。僕はさっきの言葉の意味を考えていた。漢字だと文が成り立たないから平仮名か。僕は少しの間考え結論を出した。3がヒント?…、そうかこれはシーザー暗号か!元の文の内容はクラスのマドンナである
「優君、唇から血が!」
指摘されるまで出血にも自分の怒りにも気付かなかった。僕は「このくらいの怪我大丈夫。心配ありがとね」とお礼を伝えた。
大切な人を傷つけて笑っていて良い訳がない。どんな手を使っても同じ目に合わせてやると決意した瞬間あの桜が一瞬紅く色付いた気がした。
運ばれて来たオムライスはほんのり少し鉄の味がした。
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