江戸バブル! 〜ローソク足で天下取り!? 天才相場師のぶっとび維新〜

はるはるな

序章 タイムスリップ!? 現代の天才相場師、江戸に舞い降りる

「いったい、何がどうなってんだ……?」


周囲を見回すと、目に映るのは着物姿の人々と古風な町並み。土と木の匂いが立ちこめ、行き交う大八車や籠(かご)が当たり前のように道を占拠している。

ごく最近まで俺は、東京のビル群にあるオフィスで深夜までチャートと格闘していた。FXや株、先物に仮想通貨……現代のあらゆる市場を研究し、独自の手法で資産を増やしていた自信満々の天才相場師。

しかし、ある日突然、古文書の「本間宗久」関連のデータを眺めていたところ、PCモニターが妙に光り出し、次の瞬間この江戸時代に放り込まれたのだ。まさか冗談で口にした「江戸で無双したい」が本当に実現するとは……。


「ちょっとそこの、兄さん。変な服装だなぁ」

見れば、浴衣姿の店のオヤジが怪訝そうにこちらを見ている。俺は慌ててYシャツの襟を直し、心だけは平静を保とうとする。

「ええと……ちょっと今は芝居の役作り中でして……」

「おお、そうかい? なんだか見慣れぬ布切れだな」

ごまかし半分でその場を離れる。とにかくこの時代でどう生活していくかが問題だ。


だが、俺には“相場”がある。幕末の“錦の御旗”ならぬ、“ローソク足”と現代のテクニカル分析を武器にすれば、江戸の経済をひっくり返せるかもしれない。

まずは何より資金が要る。いきなり町奉行所に捕まるわけにもいかないし、宿代や食事代はどうする?

その時、頭上から聞こえてきたのは勢いよく響く「チャリン!」という硬貨の音。どこかの商人が計算しているのだろうか……。金が目に入ると、現代のトレーダーマインドがうずく。


「……よし、とにかく市場に行ってみるか」

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