第9話「保管期限を超えた転生希望者たち」1/2
転生管理局第三課の資料室は、いつも静まり返っている。だが、今日は少し様子が違った。
「また書類が溜まってるぞ!」
翔真の声に応じて、伊万里が眉をひそめて資料室の扉を開ける。そこには、書類の山と共に、ひらひらと浮かぶ小さな妖精の姿があった。
「やっぱり、ココがいる……」
「また勝手に出てきたのか、管理妖精!」
「うん、だってさぁ、書類の山がね、もう限界突破してるんだよ? 古い転生希望者の申請書がたくさんあってさ、ちょっと遊んでみたくなっちゃった♪」
妖精ココは無邪気に笑いながら、書類の間をすり抜けていく。
「遊ぶって……一体何を?」
伊万里が目を光らせる。
「例えば、資料室の奥にある“保管期限超過リスト”のカルテを、ちょっとだけ拡散しちゃったりね~♪」
翔真が慌てて書類を掴む。
「それ、ダメですよ! あれは転生対象外か再面談保留の記録です! うっかり外に流れたら大問題に!」
「そうなのよ! でもココはお茶目だから困っちゃう」
すると、アルシアが静かに話し出した。
「保管期限超過の魂たちは、不安定なエネルギーを放ちやすい。外部に情報が漏れると、影響範囲が広がる恐れがある」
「そうそう。放っておくと、悪影響がこの世界のあちこちに波及して……」
伊万里は不機嫌そうに資料を整理しながら言った。
「翔真、君が監督しなさい。ココの動きをしっかり把握して」
「は、はい!」
翔真は深呼吸をして、気を引き締めた。
資料室の小さな混乱は、転生管理局の日常の一部だったが、決して見逃せるものではなかった。
「……ふふ、ココったら、こんなに混乱を起こすなんて思わなかったわ」
伊万里は資料の山の隙間にできた小さな隙間から、白銀の髪の天使・アルシアに向かって小声で呟いた。
「管理妖精は資料室の番人であり、遊び仲間でもある。彼女の存在は時に助けにもなるし、時に弊害にもなる」
アルシアは無表情のまま頷く。
翔真は書類をかき集めながら、資料室の奥から漏れ出たデジタルデータの断片が、ネットワークのどこかに散乱していることを端末で確認した。
「電子情報の拡散範囲は……予想以上に広がってます」
「このままでは、転生希望者の個人情報が漏洩するだけじゃない。魂の情報も不安定化しやすくなる」
伊万里が冷静に指示を出した。
「翔真、緊急に拡散した情報の回収と精査を。アルシア、保護すべき魂のエネルギー制御を。私が規則と対応マニュアルの整備を進める」
三人は一斉に動き出した。
その時、ココはにこにこと無邪気に翔真に話しかけた。
「翔真くん、たまにはこういう騒ぎも楽しいでしょ?」
翔真は苦笑いしつつも、「そうですね……たまには」と返した。
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