僕の宗教戦争
頭カカエル
第1話 序章
宗教は救いではない、洗脳と支配だ。
俺がこの考えに至ったのは二十の誕生日の時だ。この考えになるまでには、俺が十五歳の時まで遡る、まぁ気長に聞いてほしい。
僕の名前は北村マルス、父は日本人で母はイギリス人だ、苗字は父のを次母が僕の名前を考えた。僕が住んでいるこの国は旧オーストラリア、又の名を新世界連合国という、二〇三〇年、世界は大災害の影響で、土地は荒れ果て作物は育たなくなり、動物は死に食糧が無くなった。
その影響で各国は資源を求め、戦争を起こし、力のない人々は飢えや病気に苦しみ、世界の約半分は死に絶えた。
それから十年戦争は終結、残ったのは不毛の土地と力のない人々、そこで立ち上がったのが信仰宗教マーレンだ、マーレンは世界中の有識者が集まって出来た宗教で、戦争によって残った様々な人種をまとめ上げるために、宗教という形で始まった。
マーレンは残った人類を、土地のダメージが少ない、オーストラリアに移住させ。人々に仕事や食糧を割り当て、世界を統治していた、それから数十年、この国では、人は生まれた瞬間に生涯する仕事と身分が決められ、死ぬまでそのカーストが変わることはない、僕は農民で、父は炭鉱夫だった。父は鉱山での仕事中に過労で死んでしまった、納める税金が、足りなかったからだ。
この国では、役職と家族の人数によって、納める税金が決まっているのだ、払えなければ、代わりの物を、マーレンに献上しなければいけない、うちには献上できる物などない、そうなれば僕か母を献上するしかない、父はそうしたくなかったのだろう。汗と炭に塗れた父は、くしゃくしゃの金を持って、鉱山の中で死んでいたらしい。
父は国の制度に殺されたのだ、父は誰よりも働いていた、それでも金が足りなかったのは、割り振られた仕事のせいだ、限られた土地で掘れば、掘るほど、取れる資源は少なくなっていく、炭鉱夫という、職業は金を稼げないのだ、せめて他の仕事ができていれば、あるいは自分の中にあるマーレン、への反逆心と、マーレンを頼らなければ、生きていけない矛盾が、俺の心の中で渦巻いていた、そして俺は母さんに疑問を投げかけた。
「お母さん、僕たちが税金を納めてる、マーレンってなんなの?」
「マーレンっていうのはねぇ、神の使者様たちの事さ、私たちに適した仕事を与え、食料や家を、みなに分配する事で、この国を平穏に、皆が幸せに暮らせるように管理してるんだよ。私たちが働いて手に入れた、食材やお金を集め、人々に正しく分配する、そうやって、この世界は二〇〇年間安定と平穏を保って来たのさ」
母は、いや、この国の人間は皆口を揃えてこういう、それはマーレンが二百年間ずっと、そのように学校で教えてきたからだ、だが自分はそう思わない。皆が幸せに平穏に暮らしていく、ためにマーレンがあるならなぜ、父は死んだんだ、なぜ僕達は働いても働いても、幸せになれないんだ、だが自分はその言葉を口にする事はない、皆と違う意見を言えば僕は異端者、この世界では生きていけないのだ。
「そうなんだね、母さん僕は農耕の仕事に行ってくるよ」
そう言って僕がいくのは農耕ではない、国のスラム街ドン底町だ。
ドン底町は、イギリスの裏路地を、彷彿とさせるような場所だった。
狭い路地が入り組み、建物同士が、密集して立ち並び、日が当たることはまれだった。街の至る所にはパイプが通っており、その姿が町をさらに陰鬱にさせていた。パイプからは水が漏れ、地面はいつも湿っていて、臭いも、また相当なものだった。町全体が不衛生な状態にあり、暗い雰囲気が漂っていた。
日が当たらないため、街全体が常に薄暗く、暗闇が不安を誘うような、雰囲気を醸し出していた。ここはマーレンの教えに背き、追放された物達の溜まり場だ、この国の人々は、ここにいる物達を差別する事で、自分の小さな、虚栄心を守っている。だが俺は、この町の人達が好きだ、なぜなら、ここにいる人達は皆んな俺と同じで、この国とマーレンに疑いを持っている。
ある日、この街の長である源蔵爺さんは俺に話しかけてきた。
「おめぇさん、この世界いやマーレンに疑いを持ってるみたいだな」
とても浮浪者には見えない、綺麗な身なりと、服の上からでもわかる異様な筋肉、源蔵爺さんはその力で、マーレンからこのドン底町を守っている。
「疑ってるっていうか気に入らないだけですよ、確かにこの国でしか生きられないし、食事も家も提供して貰ってるけど、割に合わないすぎる」
俺の愚痴を聞いた後、鼻で笑い源蔵爺さんはとても興味深いことを口にした。
「この国でしか生きられねえって、おめぇ本当に外の世界の土地が、人類が暮らせない状況だと思ってるのかよ?はっ学校教育の賜物だな」
「なんだよ、その言い方、まるで外の世界を知ってるみたいに」
「知ってんだよ、俺は元々マーレンにいた人間だ、試しにお前の知ってる歴史を言ってみろ」
ただの浮浪者の戯言とは思えない、ほどの説得力がその声と目のを奥の光にあった。そして、俺は、学校で教えられてる、歴史について語った。
「へぇ、学校ではそんな風に教えてるのかい、半分正解だな」
「半分?」
「あぁ世界で大規模の災害が発生して、戦争が起こった事は本当だ、だがな土地が使いもんにならないっていうのは嘘だぜ。本当の歴史はな、知識を持ってる、民間人を戦争に巻き込まれた、ていで殺したんだよ。世界の半分が死んだのはそれが原因だ、そして、なんの知識もない、ガキや発展途上国の人間を、海に囲われた、オーストリアに閉じ込め、何年にも渡って、仕事を与え管理してきた、余計な知識は何も教えずにな、それで疑う事を知らない神を信じる、人間達に最低限度の生活を与え、徴収した税金で権力者達は遊んで暮らしてんだよ」
信じたくないが、それが本当なら合点がいく、違う仕事をしているのに、変わらない暮らしや、生まれてきた時点で、やる仕事が決まっているのも全て、人によって管理されてたからだ。だが一つわからないなぜ?
「なぜ源蔵爺さんはこんな事を、いやマーレンにいたならこんな生活をしているの?」
この事を聞くと源蔵爺さんは数秒の沈黙の後話し始めた。
「俺にはな、マリアって言う好きな女がいた、彼女はお前と同じ、マーレンではないこの国出身の人間だ、綺麗な褐色の肌に、人を惹きつける天性の性格、そして、何よりも、こんな頑張っても生活の変わらない国で誰にでも優しい女だった、当時マーレンだった俺はマリアの地域の管理担当だった、俺はマーレンという立場を忘れ、マリアと恋に落ちた、幸いマーレンはマリアを嫁に迎えることに、反対はしなかった、それどころかマリアの家族もマーレンの立場にしてくれると、皆んなが納得してその案を承諾しようとしていたが、一人納得していなかった、それがマリアだ。正義感の強い彼女は、この真実を許せなかったのだろう、マリアはこの真実を人々に伝え、反乱を起こし、自分達地域の待遇を上げてもらおうと、反乱を起こした、その事実を聞いた俺は急いで、マリアがいる地域に向かった、でも遅かったよ着いた時には、民衆と一緒に五体を分けられ晒し上げられてた、綺麗だった褐色の肌は元の色がわからないくらいにボロボロに赤黒くなっていた、そこにはマリアだった何かがあったんだ」
俺はその話を聞いて言葉を失った、自分がもし今の不満を、口にしていたらどうなっていたのだろうと、思う恐怖と、マーレンの行いへの怒りで体が震えているのだ。
「そんな顔するなって昔の話だ」
「なぜ、源蔵爺さんは、僕にそんな話をしたんだ?」
「なぜって、マリアは俺から聞いて、武力でこの世界を変えようとしたが、おめぇは誰にも言われることなく、この世界の異常に気づいてやがった、ゴミ溜めの中で、自分が汚いことに気づける人間はそういねぇ、おめぇさんだったら、この世界のを変えるのを、そして俺のマーレンに対する、復讐をしてくれとおもったからだ」
そして俺はその言葉をきいて決心がついた。
「僕はやりません」
「なんでだ、おまぇさん、マーレンが嫌いなんだろ、真実を知っても、従い続けるって言うのかよ」
「マーレンが気に入らないのも、事実だが、俺には家族も恋人もいる、マーレンに逆らわなければ、死ぬまで平穏に暮らせるんだ、俺はこの真実を知れただけでも満足だよ」
「わかったよ、おめぇにはまだ家族がいるのか、悪いな変な話に巻き込もうとして」
源蔵爺さんはそれ以上何も言わなかった。
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