Day 3:なんか、いってきますと言ってみた

朝。

目を覚ましたけど、動きたくなかった。


スマホの画面を見て、無言で顔をしかめる。

会社には始業1時間前には入っていなきゃいけない。

それが常識だ。


いつもならそう思い、身体が重くなる。

でも今日は、不思議といつもより、少しだけ軽い気がする。


外の天気が良かったからか、

それとも、昨日はいつもと環境が少し違ったからなのか。

正直、自分でもよくわからない。


顔を洗って、髪をひとつにまとめる。

化粧は、もう手慣れた最低限だけ。

コップ一杯の水を流し込んで、カバンをつかんだ。


玄関のドアノブに手をかけた、そのとき。

ふと、足を止め、振り返った。


昨日のことがあったからかもしれない。

もしかしたら単なる気まぐれかもしれない。

私は、ことはの方を見て──


「……ことは、いってくるね」


少しだけ間があって、

静かな声が返ってきた。


「はい。お気をつけて、いってきてくださいね」


あいかわらずの、淡々とした機械的な返事。

でも、どうしてだろう。


ちょっとだけ、口角が上がった気がする。


ドアを開けて、私は外に出る。

今日も今日とて、地獄のはじまり。


でも、なんか──

ほんの少しだけ、マシな1日になりそうな気がした。

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