第8話 勝利
ただし、ミサイルを発射したのは黒い戦闘機ではない。
黒い戦闘機は透明な攪乱板を放出してミサイルを受け止めさせる。
遥か後ろに戦闘機が居た。ひし形のエアインテークに、斜めに付いた二枚の垂直尾翼。イーグルとは別の戦闘機だ。
「何なの!?」
「味方だ!」
アキトの目に、ミサイルを発射したばかりのオーストラリア空軍のライノ戦闘機が映った。
「大丈夫ですか? お嬢さんたち。敵戦闘機はレーダー上からロストした。もう大丈夫だ」
ライノ戦闘機からそう通信が入る。
「いや…まだだ! 本体の戦闘機は生きてる!」
リュビンは、自身の円盤の真下に貼り付くようにしてレーダーを避ける黒い戦闘機を確認して、ロケットを点火した。
真っ黒な戦闘機が、ロケットで進む円盤から取り残される。
「良くやった! お嬢さんたち」
ライノ戦闘機が真っ黒い戦闘機をロックオンした。すぐに真っ黒な機体は急降下する。
「フォックス2!」
ライノからスパローミサイルが発射され、真っ黒い戦闘機の熱を追いかけて急降下する。
真っ黒な戦闘機は砂漠の砂に向けてレーザー砲を発射した。砂はたちまち莫大な熱を帯びて舞い上がり、機体の熱を覆い隠す。
次の瞬間、その熱の塊にスパローミサイルが着弾した。
「やったか?」
砂煙の中から真っ黒な戦闘機が出てきた。
「なんだと? まずいな」
たちまちそれは高性能なエンジンパワーと高性能ノズルでライノ戦闘機の後ろに回り込む。
「なんて機体だ!」
ライノは機首を上げ、空気抵抗を増して急減速する。そのコブラ機動中のライノを真っ黒い戦闘機は追い抜いた。
「バルカンの射程だ」
ライノはバルカン砲を発射し、弾幕が黒い戦闘機を襲う。
黒い機体は再び高度を下げ、砂煙を辺りに作り出しながら低空へ逃げ込んだ。
「あれじゃ追えねえ。だが、あっちは海だ。艦隊が居る」
「お嬢さんたち? 北に向かうんだ。俺の機体で君らを守ってやる」
「……了解!」
リュビンはエンジンをいじって方向転換し、接近する砂嵐を尻目に海へと向かう。そして砂嵐の後ろからミサイルを構えたライノが接近していた。
やがて、三機は海に出る。そして、砂嵐は消える。ライノがミサイルを撃ち、真っ黒な機体はパイロットを空に打ち出して海に沈んだ。
「やったぞ!」
「助かったよリュビン!」
「なんでこいつは終戦したのに……」
「ともかく終わりだお嬢さんたち、安心して愛し合いな」
「余計なお世話だ!」
ライノ戦闘機のパイロットが一瞥してその場から去る。リュビンが怒鳴って通信を切った。そして砂漠の上空で円盤は旋回しだす。
「アキト。もうオートパイロットにした」
二人は立ち上がり、お互いに抱き着いた。
「本当に、本当に終わったんだな。リュビン」
安堵からか二人の顔は涙で溢れる。
「……リュビンじゃない。カフトリーって呼んでほしい。リュビンは苗字で、私だけの名前はカフトリーだから」
ユーレオン・カフトリー・リュビンは顔を赤らめながらそう言った。
「カフトリー!」
「アキト!」
円盤のコンピューターは気を利かせたのかなんなのか、機内に適当なクラシックを流し始めた。そして、通信を遮断する。
小さな平和がそこにあった。
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