守り神よ、死線に立て
坡平仙人
序章
第1話「プロローグ:帰り道の幽霊」
その日、帰り道に河川敷を選んだ。
月に数回訪れる気紛れと言う名の本能に従って夜道を歩く。
淡い月明かりだけの闇に、人気のない道。
誰も居ない道を選んだのは、きっと一人になりたかったからだろう。
ふと、川を見やると、昏い川に沈む人影を見た。
水飛沫どころか水を掻き乱す音も聞こえない。
人影は人知れずするりと川に墜ちてゆく。
人影は複数だった。集団自殺にしてはあまりに物静かで、私はすぐに彼等が生き物でない事に気付き、安堵した。
幽霊が視えてしまったことに、驚きはなかった。
――顔の輪郭すら浮かばない、のっぺらぼうと目が合う。
彼等の臨死体験を邪魔する気にはならなかった。
視線を斬る。――ぱんっと風船が割れたような音。
幽霊たちは、どうしてか弾けて亡くなってしまった。
どうせ死んでいるのだ。私は気にも留めず足早にその場を歩き去る。
私は、死人に何の感傷も抱かない。その無常観はおよそ真面な人が持つものではない。
おそらくは、彼らが私のそう遠くない未来の姿だと、私は分かってしまっているからだ。
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