第4話 謝罪
スタスタと歩くアリスちゃんを追いかけていると、正面の机に座っていた人物がスッと立ち上がった。
その人物は黒いコートを羽織り、下に軍服を思わせる純白の衣装を身にまとっている。
遠目からでもわかる抜群のスタイル。距離が縮まるにつれ、その顔立ちがハッキリと視界に飛び込んできた。
輝くような銀色の髪、透き通るような白い肌、薄く開かれた紫の瞳、そして、わずかに微笑んで艶めく唇――。
なんだこれ、超絶美人じゃないか……!?
オレの足が一瞬止まった。まるで女神に見惚れるかのように、その場で立ち尽くす。
「まさかここが天国なのか……?」
つい、頭の中の言葉がそのまま口をついて漏れてしまった。
すると、その美女はくすりと微笑み、鈴を転がすような美しい声で返答した。
「いいえ、残念ながら違いますよ」
――ぐらり。
その瞬間、急激に膝から力が抜け、ガクガクと震えて崩れ落ちてしまった。
オレの周囲には意地悪な連中しかいなかったというのに、こんな女神レベルの美女が実在したなんて。
まさに次元が違う……膝が震えるのも当然だろう。手で抑えようとしても、全く収まらない。
そんなオレを見て、美女が小さく微笑んで口を開いた。
「解除」
その声が響いた途端、まるで魔法にかけられたかのように膝の震えがピタリと止んだ。
……え、何今の?
いやよくわからないけど、助かりましたあざっす!
とりあえず礼儀として挨拶をしなきゃと無意識に手を揉みながら顔を上げた。
だが、普段から自然な笑顔なんて浮かべたことのないオレの表情は、きっとニヤけた気持ち悪い笑みにしか見えないだろう。
でも仕方ない!だってこんな完璧な美女が目の前にいるんだぞ!平常心でいられるわけがない。
オレは自信を持ってそう断言できる。
美女が困ったようにこちらを見つめ、小さく首をかしげた。
「あの、よろしければ立っていただけますか?」
「あっ!はいっ!」
声が裏返ったのが自分でもわかり、恥ずかしさをごまかすため、膝をパンパンと叩きながら急いで立ち上がる。
「そんなに緊張しないでください。今回は私どもに非がありますので、まず謝罪をさせていただきたいのです」
……え?謝罪?
ちょっと待って、オレじゃなくてそっちが謝るの?
そんな展開、生まれてこの方初めてだし、何よりも身に覚えがない。
謝罪…。一体どんな顔で聞けば良いのだろうか。
オレが謝罪したときって、相手は大抵ニヤニヤしてた気がするが……
美女の言葉にどうリアクションしたらいいのか全くわからない。
「あ、あの……すみません、謝ってもらうようなことってありましたっけ?」
できるだけ自然に笑顔を作ろうと試みるが、顔の筋肉がうまく動かずひきつってしまう。
目の前にいるのは紛れもない絶世の美女。まともな対応なんて出来るわけない!
「はい。謝罪させていただきたいのです。そして、あなたの今後に関わる大切なお話もありますので、ご説明もさせていただければと」
美女の表情が真剣になる。その整った横顔が美しすぎて、またもやオレはポカンと口を開けてしまう。
「申し遅れました。私はここを統括する代表、シズク・アマギと申します」
「シズク・アマギさん……?」
「はい。シズクとお呼びください」
「あ、はい……シズクさん……」
シズクさんはニコッと微笑むと、一瞬で表情を引き締めた。
「では早速ですが、地球時間で約3日ほど前の出来事から順を追ってご説明いたします」
「……3日前?」
そう呟いた瞬間、周囲の照明が落ち、シズクさんの背後から巨大な黒いスクリーンがスーッと降りてきた。
スクリーンに映し出されたのは、まるでゲームのキャラクター選択画面のようにゆっくり回転する、焼け焦げた丸太のような黒い物体。
「こちらは一見ただの丸太に見えますが、実はれっきとした生命体です。
最近出現し、宇宙政府の指名手配対象となっています。現時点では彼らとの意思疎通が困難なため、正式名称はわかりません。仮に私たちは『フランジ』と呼んでいます」
美女の口から飛び出す予想外の言葉に、オレは呆然としてしまう。宇宙政府?生命体?指名手配?
「今回の事件で、初めて生きた状態での捕縛に成功しました。まずは映像をご覧ください」
スクリーンに映し出される映像。紫色の不思議な空間の中を、必死で逃げ回る丸太型の謎の生命体。
それを追跡する、未知の追跡者。
……待って、ちょっと待ってほしい。
絶世の美女が現れたと思ったら、今度はいきなり宇宙生命体とかって、一体どんな状況なんだ。
オレの混乱をよそに、シズクさんの美しくも冷静な言葉が響き、映像は淡々と進んでいった。
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