第2話

「裕也。27日、お相手に会いに行くぞ。」

「はい。」

はぁ。またか。俺の父親はなぜだが俺をすぐ結婚させようとしてくる。どんなに俺が嫌がってもお構い無しだ。おそらく、自分が生きているうちにでも孫に会いたいのだろう。

「...本当に自分勝手な父親だ。」

「裕也様。」

「ん?」

「今度お会いするお相手に関しての情報なのですが、」

「ああ。どうだった?」

「それが、少々妙な点が多くて...。」

「妙な点?」

「はい。もともと裕也様に来ていたお見合い相手は鈴宮家の次女、鈴宮瑠奈だったのですが、向こうから変更になったとのお知らせが。」

「変更になった?」

「はい。次女ではなく、長女になると。」

「長女の年齢は?」

「まもなく、19歳になるそうです。」

「19歳。」

「はい。」

19歳でまだ嫁いでいないのは、この時代では遅いことになる。

本来では、18歳で嫁ぐことが多いからだ。

「19歳で嫁ぎ先がなし。」

「ええ。おそらく、我々が婚約破棄をすればもう嫁ぎ先はないかと。」

「ああ。そうだな。」

「もう少し、鈴宮家について調べてみます。」

「ああ。たのむ。」

もともと、鈴宮家については世間のものが知っている範囲でなら知っている。

しかし、どれもいい情報ではなかった。

仕事熱心な父親と、お金遣いが荒い母親。

そして二人の娘。

一人は、消極的。

もう一人はワガママで自己中。

「わけあり家族か。」


「玲奈。挨拶を。」

「はい。お初にお目にかかります。鈴宮玲奈と申します。」

「玲奈さん、これからは裕也と夫婦になる身。そんなに固くならなくてもいいのよ。」

「はぁ。」

これは完全に戸惑ってるな。

されるがまま状態ってわけか。

「僕達は邪魔者だから、早めに退散するとしようか。」

「ええ、そうね。」


気まずい状況だな。

「あっ、あの。」

「...。」

「瑠奈でなくて申し訳ございません。もし、嫌でしたら婚約破棄していただいても構いませんので。」

本来なら、婚約破棄を恐れるはずなのに、婚約破棄をしても構わない。

婚約破棄されることに慣れている?

ここで、俺が婚約破棄をしたら、おそらく彼女は...。

「...飯塚裕也。」

「えっ?」

「飯塚裕也だ。俺の母親も言っていたことだが、これから夫婦になるのだからそう固くならなくていい。」

「えっ、じゃあ、婚約破棄は?」

「何を言っている。そんな事するわけ無いだろ。」

「そうですか。」

「なるべく早く迎えに行く。いつ去ってもいいように片付けはしておくこと。良いな?」

「はい。」


「拓也。」

「はい。」

「鈴宮玲奈について詳しく調べてくれ。」

「かしこまりました。しかし、なぜ彼女について?」

「少々気になることがな...。」

「裕也様が気になること?」

「ああ。彼女の手が荒れていた。」

「手荒れがひどいと?」

「ああ。普通に過ごしているだけなら、中級階級だとしてもあんなに手荒れはひどくならないはずだ。」

「なるほど。つまり、家族から虐げられている可能性が多いと。」

「ああ。だから頼む。」

「かしこまりました。急いで、情報を集めておきます。」

「ああ。」

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