第13話魔法学園から来た少年少女
「リオって、どこから来たの?」
朝焼けに包まれる街道沿いの宿場町。朝食を取る合間、ミリィがリオに尋ねた。
「んー……ちょっと遠いところ。すごく、すごく遠くだよ」
「また適当な……」
隣でスープをすすっていたユースが呆れたように言うが、リオはどこ吹く風。
パンをちぎってルルに分け与えながら、のんびりした口調で続けた。
「俺、スキルも職業もないしね。ただの旅人ってだけ」
「でも魔力、桁外れでしょ。昨日の一撃、正直震えたよ」
「ふふ、ちょっとだけね」
ミリィは真剣な目をしてリオを見つめる。
「……リオ。お願い、しばらく一緒に旅してくれない?」
「え?」
「今回の研修、本当は先生が同行するはずだったの。でも直前で急病で来られなくなって、私たちだけで来たら、あの魔獣でしょ? 厳しいから……」
「私たち、次の目的地は“ラズニアの丘”。魔力の流れを調査するのが課題なの」
「ラズニア……あの辺、最近魔物が活性化してるって聞いたなあ」
リオは少しだけ考えた。
本来ならこのまま自分の旅を続けるつもりだった。けれど、あの二人の魔法は決して下手じゃない。むしろかなり優秀だ。だが、それでも“足りない”のが今の世界だ。
「いいよ。一緒に行こうか、ラズニアの丘まで」
「本当に!?」
「うん、でも条件がひとつ」
「条件?」
「途中で見つけた美味しいものは、絶対に全部味見すること」
「……へ?」
「あと、のんびり歩く。朝はゆっくり出て、お昼は川辺で休憩。基本、寄り道する」
ユースが額に手を当てて呻いた。
「な、なんという自由……いや、この緩さ、逆に最強か?」
ミリィは笑ってうなずいた。
「分かった、守る。約束する!」
「にゃー!」
こうして、旅人リオと魔法学園の少年少女、影猫ルルの三人旅が始まった――
数日後。
ラズニアの丘へ向かう街道を歩いていると、三人はふと、不思議な光景に出くわした。
「……なんか、地面、きらきらしてない?」
丘の麓。草原の一部が、うっすらと輝いている。
リオが近づいて膝をつくと、そこに“魔法陣”の残滓が残されていた。
「これは……誰かが魔法陣で何か召喚しようとして失敗した跡だな」
ユースが真剣な表情で調べ始める。ミリィも風魔法で周囲を探る。
「リオ、こっち! 足跡があるよ! 一人じゃない、二人……いや、三人分!」
リオは一歩進むと、空気の揺らぎに違和感を覚えた。
「魔力……漏れてる。しかも、これ……ちょっと嫌な感じのやつだ」
「嫌な感じ?」
「うん……冷たくて、嘘くさくて、無理に捻じ曲げられた感じ。もしかしたら、“悪魔系”の術式かも」
ユースとミリィの顔が引き締まる。
「つまり誰かが、悪魔召喚の禁術を――?」
その瞬間、周囲に響いた奇妙な笑い声。
「――おやおや。鼻が利くね、坊や」
三人が振り向いた先に立っていたのは、黒いローブをまとった青年だった。
肩に止まったカラスの目が、ぎらりと三人を見据える。
「初めまして、旅人さん。君の魔力……とても、興味があるよ」
リオは静かに一歩前に出る。
「自己紹介は後にして。まずは、その術式の意味を聞かせてもらおうかな」
続く――
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