『異世界転生スキル無し:魔力ぶっぱ旅人のんびり冒険録』

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第1話転生と、魔力ぶっぱという現実


朝――というには眩しすぎる光の中、青年は目を覚ました。


「……ん、ここは……?」


空はまっさらな白、地面も壁もない。まるで夢の中にいるような、不思議な空間だった。


「あなたが目覚めてよかった。ようこそ、転生の間へ」


現れたのは、神々しさと厳格さをあわせ持つ“女神”だった。長い銀髪、真っ直ぐな金の瞳。その美貌に見とれる間もなく、彼女は淡々と語る。


「あなたは事故により命を落としました。次にあなたの魂が向かうのは、“異世界”です」


「……あ、俺、死んだんだ」


リオ。16歳。高校生。事故――飛び出してきた子猫をかばった時、トラックに轢かれたのだった。


「異世界に行く人には“スキル”を授けるのが通例ですが……あなたの場合、少し特殊でして」


女神は申し訳なさそうに言う。


「……スキル、ありません」


「……え?」


「あなたの“魔力量”が常識外すぎて、スキルの付与が干渉に耐えられませんでした。仮にスキルを与えたら、即暴走して魂が崩壊します」


「……」


「ですので、代わりに“あなたの魔力”そのものを活かして生きていただくことになります。魔力操作の才能は極めて高く、コントロールできれば、他のスキルに頼らずとも十分以上に……」


女神は続ける。


「――あ、ちなみにスキルがない代わりに、あなたの寿命、すでに“上限なし”です」


「え、なんで?」


「魂の強度が、神格に近いので……私より硬いですね。もしかしたら、神様の生まれ変わりかも知れないですね。」


「……」


「でも本人に自覚はなくていいです。今を生きてください」


「雑だなおい!!!」


そんなこんなで、リオは異世界に送り出された――



---


目覚めたのは、森の中だった。木漏れ日が優しく、鳥のさえずりがどこか懐かしい。


「……寒くもないし、動けるし……これ、ほんとに異世界か」


服は地味な旅装束。小さなカバンの中に、食料や水筒、そして一冊の分厚い魔導書。


「魔法……読めるかな、俺」


ページをめくると、まるで日本語のように意味が理解できる。どうやら言語も“転生特典”らしい。


「……よし。まずは歩こう」


彼は“旅人”としての一歩を踏み出した。魔法を極めるでもなく、王になりたいわけでもない。ただ――


「釣りできる場所とかあるといいな。あと、できれば温泉も」


のんびり、飄々と、生きていくために。


しかしこのとき、彼はまだ知らない。

その魔力が、やがて世界を揺るがすほどの存在になることを。


いや、本人は最後まで気づかないかもしれないが――


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