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白花 清涼 

序章

3xxx年6月6日。


大粒の雫が地面を打ち付ける、そんな雨の日。

いつもならこんな日にわざわざ傘をさしてまで、歩く事なんてない。

けど、今日は静寂の中で奏でられる雨の音がとても心地よくて、

いつもの煩い「頭痛」もなかったから、気まぐれに散歩に出たんだ。


その時点で気づくべきだった。


この静けさは、いつだって嵐の前触れだ。


だって、ほら。

ふと目を向けさせられた細い路地に「ある少女」が横たわっている。


これは絶対に面倒事だ。

けど…。


(嗚呼、嫌になるな。自分の性分に)


私は少女のそばに近づいて、膝をつく。

じんわりと膝から、水たまりの冷たさが広がってくる。


「おい、大丈夫か?生きているか?」


私はゆっくりと少女の体を揺らす。

すると、ビクッと少女の体が1度大きく動く。

そして、ゆっくりと少女は顔が上がるが…、その顔には目がなかった。

眼球がある事を示すふくらみがないままに瞼は固く閉ざされ、

瞼の淵と頬の一部が同化している。


(これは………彼女の能力(オリジン)か?)


そんな彼女と目があったように思うと、彼女はふわりと笑った。


嗚呼、この顔を【俺】は知っている。




そう思ったら、手が伸びていた。

彼女の上体を起こし、自分が来ていた黒いコートで彼女を包み込む。

そして、ゆっくりと彼女を抱きかかえ立ち上げった。


『よいのですか?』


頭の中にいつもの「頭痛」の種の声がする。

その問いかけの意味を私は分かっていた。


「…さぁな。」


独り言のように私はつぶやいて、

かすかなぬくもりを持つ彼女を抱えて、隠れ家に続く暗い路地を進んでいった。

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