異世界でも死にたがり

ペクド

第1話 生きる理由を見出してくれてどーも

 こんな言葉は知っているだろうか


 君が生まれてきたとき周りの人はみんな笑っていて


 君は泣いていた


 だから、あなたが死ぬときは


 周りの人が泣いて


 あなたが笑っていけるような人生にしろ。



 いわゆる名言というやつだ。


 俺はこの名言が凄く大好きだ。


 でもね、父さん、母さん本当にごめん


 苦しい苦しい苦しい苦しい。でも心地良い


 全身が温かい。特にお腹。 


 この真冬の時期に、温かくなれてることはちょっぴり幸せなのかもしれない


 「蓮斗れんと!ね……おねが…」


今眼の前で叫んでいるこの人は、俺の母さんだ。凄く凄く大事な人。


 お腹より温かい人


 泣いてくれてる…


 嬉しいな。だけどなんだか照れくさい。


 「お……き…………!」


 なに言ってるのか全然わかんないよ。

 

 「…………あ………う!」


 知りたかったな。


 「………………………!!!!」


 最期の言葉——————


 

 ……………んあ………え…なんで………


 なんで目が………開けられ…………てんだ


 クソッ…………俺は…俺は…俺は………


 「うぁあぁぁぁぁあぁぁぁ!!」


 「はーいストップストップー黙れ黙れ塵」


 「うあぁあぁああ…?」


 「何じゃ?貴様のその返事は産まれたてのなんにも考えていない泣くことしか能のない赤子のようじゃな。」


 へ…………誰


 つかここ家のリビングかと思ったらなにこの真っ白に覆われた空間………


 「こら、なにか言え塵。いつまでも寝ていないで起きろ。本当に貴様は赤子なのか?」


 「ち、ちょっと意味分かんないんですけど、」


 「喋る前に起きろ塵。」


 「は、はい塵て…」


 よっこら………あ…走馬灯ってやつかこれ


 じゃあ今の状況、最悪なんてもんじゃないな。


 ……もう俺は死ねたんだろうか。

そんな感じはしていないのだが。


 でももう覚めなくていい。


 今更目が覚めたところで今の俺にはなにもないんだから。


 もういいだろう神様?どこまで苦しめるんだよぉ神様。


 畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生


 「何をブツブツいっておる…」


 「なぁ聞いてくれ!このまま夢を覚めさせないでくれ!起きたら地獄だ!地獄!」


 「起きる?既に貴様は今ここで起きているではないか塵。」


 「は?」


 「訳のわからないことをぺちゃくちゃ喋るでない塵。腸が煮えくり返る。」


 「お前、言わせてみれば全部クソ酷いこと言うじゃねぇか!走馬灯のくせに。名前くらい名乗れや!」


 「なんじゃ、不敬な。しかし、そうか、名前か……いや、そんなものはない。」


 「ない……って、ない?」


 「妾は悪魔だ。」


 「アクメ?もう設定グッチャグチャだなこの走———」


 「死因は自殺」


 「え…………」


 「身長は174cm体重は62kg不登校、恋経験無し、友達0人、あそこは包◯……」


 「お前、マジアクメだな。全部知ってるのか」


 「悪魔じゃ。そして、妾は叡智なのじゃ。理解できたか、凡夫。」 


 「そうか。もう全部どうでもいいけど、結果的に俺は…死ねたんだな。」


 「そうじゃ。腹部にナイフを刺しただけで死んだ。普通は死なん。弱いし哀れだ。」


 「へいへい。なに言っても無駄だよ。つかあれか、死因が死因だから、俺を裁くのか?」


 「おぉ、物わかりが早くて助かる平凡。」


 あれ、この悪魔さんの俺に対しての呼び名が段々良くなってる?もしかしてチョロいか?


 「てか、その全身黒いシャツ似合いすぎ!悪魔的!」


 「お、おぉそうか?シャツではないが……妾を褒めるのは当たり前じゃが、いい目をしておるな平凡。」


 「平凡が上限なんですね……」


 「こら、またなんの話をしておる。というか貴様と話す時間はこれっぽっちも取りたくないのじゃ。」


 「はいはい。なんですか?迎えに来てくれるのは地獄ですか?それとも舌引っこ抜かれますか?」


 「……いいや、その予定じゃが…」


 「じゃが……いも?」


 「少しは黙れんか。ふむ…今……貴様に地獄に行ってもらう必要は無くなった。」


 「えっマジで?それはまたなんで?」


 「選べ。」


 「選べ?」


 「ある"世界"に貴様を飛ばす。」


 えっまさかの俺異世界転生?ラノベの主人公?!なれる?!


 「その世界は魔法が当たり前の世界。」


 「おっ、魔法か〜。ちょっと待て、話が省略されすぎてて分からない。そもそもなんでそんないきなり俺を異世界に飛ばす意味があるんだ?」


 「意味?そうじゃな。では意味を見出そう。貴様には妾の"子"を殺す義務を課す。」


 「子を殺す?お前の息子をか…?」

 

 「そうじゃ。およそ100万年前に妾がその世界で生み出した6人の大悪魔じゃ。」


 「いやまあそれは百歩譲って殺すとしても、果たしてそれは…いいのか?自分の子なのに」


 「よい。なぜなら、そいつらの殺し方を妾自身が忘れてしまったのじゃ。放っておくのも癪でな。」


 「え?いや殺すための条件とかあるの?ちょー面倒くさそうなんですけど。」

 

 「五月蝿い。だから選べ。」


 「だから何を!」


 「貴様は今まで見てきた自殺者の中でも特に異質だ。妾に敬語を使わず、悪魔と名乗っても驚かない。更に、死にたがっていた。」


 「それは悪かった。敬語は死んだからどうでもいいとばっかり…」


 今更だがこいつが悪魔ってのは本当なのか?まだ信じちゃいないが…


 「そうだ、その態度。だからこそ、貴様は面白い。だから異世界に飛ばす。」


 「………だが、わしも悪魔とて、異世界に行くのにお弁当を持たせないわけではない。スペルを3つ与えよう。」

 

 「スペルとは……?呪文…魔法か?!」


 「そうじゃ!!ここからは黙ってよく聞け!!

1つ目の能力、自分より低い生命力ライブの者の体を5秒間乗っとることができる。」


 ……


 「2つ、1度だけ、貴様が死ぬ直前に妾の加護を授ける。つまり、貴様の命は実質2つとなる。」


 命が2つ?まあ……要らないけど。


 「そして最後。3つ、自殺は能力。」


 「は……お前、何を」


 「はっ。妾にはバレバレじゃ。貴様、異世界に転生して、そこでも自殺を図ろうとしただろう?」


 「………何故分かった?」


 「答えは既に出ておる!それは妾が悪魔だから!いいぞ!これこそ人間の醍醐味じゃ。

さぁ平凡、妾を楽しませろ!


 さぁ、選べ!!!!


 生きることを決心し、身を砕いて妾の子らを殺すか、それとも


 狂気を選ぶか!!」


 「……悪魔め。覚えていろよ。」


 「あぁその目!目!なんて気持ちが良い!」


 「いつかお前と子を、丸ごと殺す。俺に生きる理由を与えたことを後悔させてやる。」


 「はぁ…はあ…はぁ…そうね。でも、

後悔は妾がさせる。その醜い顔を、更に醜く不格好に仕上げて、また妾の眼の前に現れるといい。」


 「次にお前の目に現れるときはこない。俺を捉える前に、そんなことも感じさせる暇も与えずに殺す。」


 「いいわぁ……続々する。濡れる。」


 「うわっ…本当に濡れてんじゃねぇよ。」


 「はぁ…では、話もここまでじゃ。そして今、興が乗っておるから教えてやろう。妾が貴様を転移させる場所は、東の国フェーリング王国じゃ。」


 「なんだなんだ急に。随分と丁寧じゃねぇか。じゃあ俺からは、皮肉の意味でお前にどーもを贈るよ。」


 「はぅんっ…そうじゃな。貴様はそれで良い。では時間がない。さらばじゃ平凡。未来永劫醜くあれ。」


 「死ねっ!!」


 


 




 




 




 



 





 





 


 

 








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