第21話 緒戦1
宇宙の闇を電子機器の光に囲まれ、ひたすらに進む。
動かない星々と、ほんの僅かに位置を変えて行く惑星達の光。
前方に浮かぶ光がインジケータにロックされ敵性判定、撃滅目標としてマークされる。
見てて下さいパピプッペポ様……
「あたしがこのまま先鋒として突入する。ナリス中尉は進入ラインをクロスさせ……」
『はぁ?一機しかない身軽でムリすんなよ。一番槍はあたし等に任せなっ!』
三機編隊の強力な競落効果による慣性突入は、新型で頭二つ分ほど強力な推進デバイスを搭載するゾラのマサーンを置き去り、その機体の姿はあっという間に三つの光点になってしまった。
「えー、どうしよ……あ、撃ってる」
敵航巡艦ヴァルナの手前で既に発進、迎撃展開に入っていた敵リーゼ群と戦闘が開始された。
「スインギングに使える高重力体は……」
戦闘機動コンピュータが近隣の惑星群ではなく、太陽フレアとそれを受けてそれなりの電磁気力を帯電するガス……氷塊の帯をマーク、電磁加速のレールと突撃軌道を視界内、暗黒の宇宙空間に描き出す。
「最速の軌道はこれだけか……まーいいや」
ナリスに出し抜かれ全てがどうでもよくなってしまった……いや違う、冷静になれたのよ。
ゾラは、頭のなかでブチブチとモノローグを呟くと、戦術コンの誘導に乗って突撃を開始する。
重粒子砲の射程に入ったのか、視界の先で羽虫が如く……羽虫なんてネットの辞典でしか見たこと無いけど……飛び回っていた輝点が次々とマークされてゆく。
「……墜ちろ、クソバエ」
呟きつつ、ネトゲで拾った多弾頭Modパックに入ってたスラッグモードでショットを行う。
殺虫スプレーと題されたそれは、散弾の一弾頭単位に重力子マーキングによる誘導性を持たせたブレットアプリで、威力も弾速も遅くスニーニングで浸透し嫌がらせでブッパしたあとサーベルの慚撃戦で多少有利になるんじゃね的な愉快系Modだ。
あたしのマサーンのガンに最適化を行った多弾頭炸裂弾は、突撃速度にも負けずそれなりの初速で撃ち出され爆発的に飛散してゆく無数の閃光となって敵リーゼ群へと襲いかかっ……え?
「全弾命中……ウソでしょ?!」
宇宙空間のそこかしこで咲き乱れる花のように爆散して行く敵リーゼ群の只中を、突撃連射モードに切り替えたガンを間抜けにも構えつつ通過して行く。
「デコイ…欺瞞エフェクトかっ!しかし重力子パターンまで……うっ!」
直感的な驚異の妄想に両足を踏み込み機体をダイヴさせる。
直近を高出力のエネルギー線が通過して行く。
「なんだこのパワー……戦艦でも来たっての?!」
喫驚と共に振り向く。
爆散し炎の華となった敵機の影から重粒子ビームが伸びていた。
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