第19話 補給
「ゾカ・ネストが五機も・・・三機は船外係留しかないわね」
酒やお菓子、たばこ他嗜好品の補充の他にリーゼ六機が補給された。
水や塩?
基礎的な食は……ちょっと言えない超高度なリサイクル系技術で賄われている。
それはどうでもいいとして。
「この機体はなんだ?新型か?」
透明感のあるエメラルドのような煌めきをもつ装甲を見上げる。
「顔付き…か」
「なんか……眠そうな目をしてますね」
二眼ステレオセンサーのタレ目加減が何というか……冬眠から覚めきってないうすらぼけたクマという肉食獣といった様子で、なんとなく安心したくなる癒しの雰囲気があった。
「うん…ナリスの専用機か?」
補給品の目録を読み上げ終わった輜重隊の兵があたしを向いた。
「このマサーンはソラビアレ少尉の専用機とのことです」
「えー……他の兵に使わせてもいんでしょ?」
専用機やるから出撃しろとか、自分一人こんなピカピカした機体で踊りまくって目立てとか……これはあたしの早期戦没を狙ったニナイ姉様の姦計?
「運用には勿論全ての権限がゾラ隊長にあるのですが……この機体の設計はザイログ様直々に手掛けたものでして、なにより」
「え?!マジで!絶対欲しい!!誰にも乗らせない!」
思わず噛みつくようにガッ付いてしまった…
「は、はい。そうですね、それにこの機体はソラビアレ少尉直近の戦いのログを解析し、少尉のマニューバに最適化されてるということです」
「そんな……パピプッペポ様がこんなあたしに……そう思って見れば、このリーゼってエメラルド色の宝石みたい……乗らずに一生飾っておく!」
「ちょ、ゾラ隊長!」
納品の人……輜重の兵が船長のあきれのあまりに上げた喫驚に続けた。
「ザイログ様はこの機での実戦データを欲しています。言わばこの機で共にソラビアレ少尉と戦いたいということではないでしょうか」
えっ!あたしと一緒に……
「一緒に……戦場へ出れば……何時でも一緒……」
(……名を聞いてなかった)
(サムス伍長です)
(まりんぬだ。そうか、よろしく頼む)
なんか後ろで馴れ合いが行われているが今さら過ぎん?なんか良いことでもあったのだろうか。
良い事?あたしのイーコトつったらもう目の前のコレよ!
あ!そうだ、なんつったっけ、このリーゼ。
「ねえ!この子の名前は?」
「この子……マサーンです。モリノークブランド発振の為の一機目です」
「モリノーク・マサーン……素敵な名前!」
船長の羨ましそうな声が背後から聞こえてきた。
「森のクマさん…」
「含意ではなく偶然ですが、装甲デザインには古の肉食獣のヌイグルミがモチーフの一つとして採用されています」
「リーゼをヌイグルミの代わりに……?」
耳へと届いた背後の会話に胸が熱くなる。
これはパピプッペポ様からの贈り物。
激励や慰みではなく、込められているものは、期待。そして戦果。
「わかりました、早速ご覧に入れましょう。先ずはナリスと船長のアタックでフラフラに疲弊してるあの死にかけの戦術目標を捧げます!」
振り返る。
「船長、出るぞ!」
「えっ、ムリですよ。納入されたばっかの機体を直ぐに出せるわけないじゃないですか」
「そんな……パピプッペポ様の期待が……!」
「そんな拙速で機体壊したり撃墜されたら期待どころじゃないでしょう、呆れられてしまいますよ」
「それは絶対に嫌だ!」
船長の後ろからなんだっけ……サムスか、サムス伍長が現れた。
「機体データはありますので、シミュレータで機体の挙動なあどを確認されるのがよろしいでしょう」
「それだ!」
あたしは早速エアコムを起動し補給データからマサーンの機体情報全てを引き抜くと、自分の部屋へと飛び込みリーゼ対戦ネトゲを立ち上げるのであった。
「もう今夜は眠らない!万年ティア4の奴等め、思い知らせてやる!」
Mod他様々なアプリのユーティリティ群を入れ忘れたあたしは当然の如くボコボコにされたのだった。
ああ、あたしのマサーンが……
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