化合物者

空空

お試しセット

掌編■あとがき

 世の中に真実というものは存在しておらず、あるのは各々がそれぞれの身の丈に採寸した解釈のみである。

 わからぬものがあるのは許せぬと憤るものにも、わからぬものにかまける時間はないと寝転がるものにも、それぞれ了解する事実がある。それもまた流動的なもので、感化されて物言いを変えるものもあり、それを期待して人を操ろうとするものもおり、なので世の中はご覧の通り、おおいに混み合ってしまったのだ。

 いつの頃にも、化けるものはそこに上手く混じり合ってきた。時には看破され、時には絆され、化けるものは人と切っては切れない縁で結ばれている。

 親しい友が、実は狐かもしれない。親は狸で、恋人は月が見せた幻かもしれない。誰も、けしてそうではないなどと証明はできない。

 人の側もそろそろ、人でないものを化かす頃合いなのではないかと、筆者はただただ、それだけが楽しみなのだ。

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