第4話 亮と吉弘
会場には微妙な空気が広がる。
浅沼蒼一の名前が発表されると、記者たちの間で囁きが起きる。
彼があの告発事件以来、表に出てこなかったことを知っている者たちにとって、その突然の登場は衝撃的だったからだ。
長い間沈黙していた男が、いきなりこの場に現れたことに、驚きと疑念が交錯していた。
「浅沼蒼一です。本日はこのような場に立つことができて、非常に驚いています。私がこの様な場に立つことは正直もうないと思っていましたから。
しかし、この場にこうして立たせて頂きこの様な重大な役目を拝命した以上は皆様のご期待に応えられるよう全力を尽くす所存です。
又、私はこの番組を通じて、今まで私が抱えてきた思いとともに、真実を伝えることができればと考えています。」
俺がそう言うとカメラのフラッシュが猛烈に焚かれる。
これは凄いな。
今までは不祥事を起こしたタレントのニュース、それを報じる側にしかいなかった。
だが成程、こちらに立つとこういう気持ちになるものなのか、これは貴重な体験だ。
恨むぞ東堂、さん。
沢木真帆はその様子を静かに見守りながら、次に進めた。
「そして、もう一人。かつて大和テレビに所属していた、大崎若菜です。」
大崎若菜の登場には、浅沼ほどの衝撃はなかったものの、やはり控えめな彼女の存在感が少しだけ会場に違和感を与えていた。大崎は少し身を縮めるようにして立ち、マイクを取った。
「大崎若菜です。こうして再びメディアの前に立つことになり、少し緊張しています。でも、この番組に関わることで、私が出来ることを精一杯やっていきたいと思います。」
大崎の言葉は静かであり、どこか影を感じさせる。
控えめな彼女の登場に、記者たちの表情はまだ硬いものがあった。
彼女のキャラクターがあまりメディアに出ることがなかったため、その不安そうな表情に少しだけ同情的な目が向けられた。
真帆は大崎を見つめ、続けた。
「この二人が新しい番組のメインキャスターとして登場し、視聴者の皆様に信頼できる情報を届けることを誓います。この番組『RePurge』は、過去の問題に正面から向き合い、透明性の高い報道を目指していきます。放送は本日22時から。ぜひご覧ください。」
会場にはしばらく沈黙が続き、記者たちはそれぞれの反応を見せていた。
しかし、真帆のしっかりとした口調。そして二人のキャスターに込められた覚悟が、少しずつ会場の雰囲気を変えつつあった。
「申し訳ありませんが両名は番組開始の時間も差し迫っておりますので、
これで退席させて頂きます。
ご了承お願い致します。」
真帆から司会を受け継いだ男性が記者たちに告げる。
記者たちは少し残念そうにしながら、退席する二人の背中を見送った。
【浅沼蒼一がメインキャスターに!? なんで今になって戻ってきたんだろう】
【話題性の金儲けだろ?所詮メディアなんだよ変わらねえって】
【浅沼やっぱイケメンだよなあ】
【大崎若菜もメインキャスターって、ちょっと地味な感じがするけど大丈夫かな】
【ちょっと控えめすぎて心配】
【浅沼自分の告発の件蒸し返すつもりかな】
記者たちが次々とメモを取り、カメラのシャッター音が再び鳴り響く中、会見は一層緊張感を帯びていった。
真帆が席に戻り、浅沼と大崎が静かに退席準備を始めると、次々と質問が飛び交う。
「沢木室長、Inovexの立ち上げに関して、具体的にどのような課題を最初に解決しようとしていますか?そして、その実行にはどれくらいの時間がかかると見込んでいますか?」
真帆は再び立ち上がり、質問に冷静に答える。
「最初に解決すべき課題としては、組織内での透明性の欠如と、外部との連携不足です。
特に、視聴者との信頼関係の回復が急務だと認識しています。これらの問題は短期的な成果を求めるものではありませんが、Inovexが目指す方向に沿って、着実に改善していく所存です。」
その言葉に、会場内の空気が少し和らいだように感じられた。
「では、浅沼蒼一氏がメインキャスターに復帰するにあたって、番組内容に何か新しい試みはあるのでしょうか?彼の過去の告発事件が影響することはありませんか?」
別の記者が鋭い質問を投げかけた。沢木は深呼吸をしてから答える。
「私たちは、過去の事件については真実を追求する立場でいます。
そしてRePurgeの番組内容に関しても、徹底した透明性と、視聴者に対して価値ある情報提供を最優先に進めていきます。
浅沼蒼一氏はその信念を共有しており、彼自身もこれまでの経験を糧に、番組に取り組んでいくつもりです。」
記者たちは少し納得した様子を見せるものの、疑問の余地が残る表情を浮かべていた。
「大崎若菜さんがメインキャスターという点についてはどう思いますか?
彼女は司会者としては少し控えめに見えますが、今後どのように起用されていくおつもりですか?」
再び質問が飛んだ。沢木は微笑みを浮かべつつ、静かな声で答えた。
「大崎は、確かに控えめなタイプですが、その持ち前の冷静さと確かな知識がこの番組に必要な要素だと考えています。
メインキャスターとしての成長は今後見守って頂ければと思います。」
会場内の記者たちの反応は一段と鋭くなった。
「ところで、Inovexの資金調達についてですが、今後どのように進めていく計画ですか?特に外部支援を募る際の戦略について知りたいです。」
その質問には、東堂が答えることとなった。
「Inovexは、最初は社内資金を使い、信頼を得ることを第一に進めています。
その後Inovex自体が独立した資金調達を行えるよう方策を練っていく形になろうかと思います。その際は皆様のアイデアも是非拝聴させて頂きたく存じます。」
ニヤリと笑う東堂。
記者たちはそんな東堂と視線を合わさぬようにそれぞれにメモを取ると、もう一度、全体の流れを把握するように目を伏せた。
沢木真帆は再びマイクを取ると、会場に向けて告げた。
「本日はお忙しい中、私たちの記者会見にご参加頂き、有難うございました。
今後のRePurgeを通じて、大和テレビの改革と共に私たちのビジョンを皆様にお伝えできることを楽しみにしています。」
最後に一言、真帆は会場に静かな決意を感じさせる。
「それでは予定のお時間になりましたのでこれで会見を終了させて頂きます。引き続き、ご注目頂ければと思います。」
司会の終了の声が会場に響く。
記者たちは立ち上がろうとする者、まだ聞き足りないと座したまままんじりともしない者、各々分かれていた。
そんな中、東堂がマイクを握る。
「ああ、皆さん記者の皆さんもオンライン試聴の皆様もなんですが、どうです?
このまま我が社の新番組ここで一緒に見ませんか?」
「しゃ、社長?」
驚く真帆、その狼狽ぶりがこれが東堂の独断の思い付きなのだと周知させる。
ライブ配信を見ていた亮と吉弘が、ソファに腰掛けながらスマホを手に取る。亮は画面をじっと見つめながら、唇の端をわずかに上げて言った。
「いや、これ予想以上に面白かったな。東堂社長、まさかの思い付きで番組視聴しようとか」
「確かに。なんか、ちょっと面白い方向に行ってる気がする。
あの発言、完全に気分でやっただろうな。スタッフあんな反応してるし」
吉弘は少し笑いながら言った。その表情には、会見開始当初とは違う面白いものを見つけた子供の様な変化があった。
「でも、逆にあれでオンラインの視聴者も巻き込めるし、広報的には大成功じゃね。
会見自体も沢木さんの言い方が冷静だった分、どんな反応があるか楽しみだ」
亮は少し考え込んだ後、画面をスクロールして次々と上がるSNSの投稿を見ながら言った。
「それにしても、Inovexの資金調達とか、ほんとにやる気あんのかって感じ。
社内の信頼を得るって話だけど、まわんないだろそれじゃ」
「でも、今の大和テレビが外部スポンサー付くような状況じゃないし、かと言ってクラファンしますっても誰も入れないだろうから仕方なしなんじゃね?」
「確かに」
亮は納得した表情を浮かべながら、スマホを吉弘に向けて見せた。
「ほら、SNSで結構盛り上がってる。社長の言葉、少しは信じてみようかなって思ってる人も増えてきてるみたい。」
「うーん、皆、素直だなあ。まあ、見守ってるけどね。それより飯と飲み物買いに行こうぜ」
「え?吉弘、泊ってくの?」
いつ誘っても終電に乗って自宅に帰る吉弘が珍しい。と、亮が尋ねる。
「そりゃ、今から新番組と会見ライブで試聴してたら終電無くなっちゃうんだから仕方ないだろ?」
拗ねたような吉弘の反応を見て破顔する亮。
「なんだよ吉弘、しっかりハマってんじゃん、お前は素直じゃないなあ」
「うるさいよ、ほら行くぞ」
吉弘はちらっと亮を見て、再びスマホを手に取った。二人は会見後の余韻に浸りながら、いそいそとコンビニへと出かけて行った。
会場の裏側、待機室で浅沼蒼一は静かに立っていた。
今、目の前に迫った大きな決断の瞬間が、まるで時の流れを止めてしまったかのように感じられる。
俺はここに立つべきだったのか?何を今更。繰り返した自問自答。
あの日、東堂、さんに張られた左頬を摩り俺は気合をフンっと入れなおす。
正直言うとやはり怖い。あの時のように、俺がいくら青臭い正義を叫ぼうとも無責任な連中に石を投げつけられるんじゃないか。
その時俺はまた同じようになってしまうんじゃないのか。
「そうなったら今度は右を張り倒してやるさ。」
そう言って笑った男に今度はこう言ってやろう。
次は訴えてあげますよ東堂、さん。と。
そんなことを思っているといつの間にか浅沼の顔の緊張も幾らかほぐれてくる。
そして、俺はふと隣に立つ大崎若菜のことを思う。
地味で大人しそうだな。彼女に会った第一印象だ、たぶん殆どの人間が同じ印象を持つだろう。
こんなんでアナウンサーなんかできるのか?
これも、殆どの人間が同じ感想だろう。
でも俺はそんな彼女の教育係になった。
正直ついてないなと、そう思った。
けれど大崎若菜は努力家だった。
大きな声を出し、ダンスを習いに行って、アナウンサーとして相応しくなる。
その為に目まぐるしく動いていた。
変なセミナーの受講は止めさせたが。
そんな彼女を俺は巻き込んだ、だからじゃない。
俺が居なくなった後も社内で頑張った。
閑職に追いやられても大和テレビで一人頑張った。
俺の戻る場所を遺してくれた。
そんな彼女へ俺が贈るのは償いの言葉じゃいけない。
そんなのは努力家の彼女に失礼だ。
その時、スタッフが声をかけてきた。
「準備が整いました。始まります。」
俺は顔を上げ、何とかその虚勢を張りつつ、深呼吸をした。
大崎若菜と共に、この新しい舞台に立つ覚悟を決める。
だから、俺は彼女に、
大崎若菜に一言だけ告げる。
「若菜、行くぞ。」
浅沼がスーツを翻し若菜を先導する。
その手にひかれ若菜はエスコートされる。
「はい。」
毎日、毎日練習した。笑顔と大きな声と共に。
「皆さん、こんばんは。浅沼蒼一です。しばらくメディアの世界から離れていましたので、こうして再び皆さんとお会いできることを、正直なところ、少し緊張しながらも楽しみにしていました。
久々にテレビへと戻ってきましたが、どうぞ温かく見守っていただければと思います。
これからも、真摯に報道に向き合い、皆さんに信頼されるような情報をお届けしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。」
「こんばんは、大崎若菜です。私はまだまだ経験が浅いので、少し緊張してしまっているのが正直なところですけれど、精一杯頑張ります。
テレビの仕事は初めてというわけではないですが、こうして生放送でしかもこんな大役で皆さんとお話しするのは、やっぱりドキドキしますね。
でも、少しでも皆さんに有益な情報をお届けできるよう、確りとお伝えしていきますので、どうぞよろしくお願いします。」
番組が進行するにつれ、次第にその空気が変わり始める。
番組はまるで静かな風の中で進行しているかのようだった。
初めの数件はよくある時事ニュースといった感じだったのだが、一件、また一件と次々告発が行われる。スタジオは徐々風がうねりを帯び始めているかのようにざわめきを増していく。
「まず最初に取り上げるべきは、大和テレビの過去に起きた数々の問題です。」
浅沼の声が低く響くその言葉に反応するように、モニターに次々と映像が映し出された。
映し出されたのは、かつて大和テレビで起こった不正経理、労働環境の悪化、さらには内情を知られることなく暗黙の了解で続けられていた不適切な慣行の数々。
大崎若菜は無言でモニターを見つめ、その顔に強い決意と共に微かな不安を浮かべる。
そんな彼女をちらりと見やり、浅沼が続ける。
「皆さんの記憶にも新しいかもしれません。報道規制や操作されていた情報。
私たちがこの業界で長年知らされてきた本当の顔について、今夜、明らかにしていきます。」
画面が切り替わり、関係者の証言や告発が次々と流れ始める。
モニターは匿名の元社員が、ある会議室で圧力をかけられる様子を映し出す。
それは制作現場での隠蔽工作の手口を告発する内容。
テレビ業界の暗部が静かに映し出されていく。
「これが我々の目にした本当の現実です。」
浅沼の言葉に続き、若菜がその資料に目を通しながら言葉を発する。
「不祥事を隠し、あたかも何事もなかったかのように振る舞う。しかし、真実はこのようにして明るみに出ます。」
その瞬間、さらにスタジオ内の風は勢いを増す。
番組の進行が一段と加速し、次々に暴露される事実は衝撃的だった。
大和テレビ内のパワハラ問題、過去の不正取引、裏で操られていた視聴率操作の実態。
テンポよく途切れなく、まるでよくできたシネマの様に話題が切り替わる。
浅沼は冷静に、しかし意思を込めた言葉を放つ、それは途切れた時間を繋ぎなおすために、それは真実を解放するために。
「そして、ここからです。これは、皆様に最も知って頂きたい事実です。」
その言葉が更にうねりを加速する。
スタジオはまるで暴風雨の街中の様。
大崎若菜は視線を落とし、手元の資料に目を走らせながら、次の展開に備える。
自分たちの番組がこのような告発の場になることを予想はしていた。
予想はしていたが、これはあまりにも。
若菜はその重みを感じながらも、自らの心が吹き飛ばされぬよう次のセクションの準備をしていた。
番組の進行は嵐のように、視聴者の関心を渦巻く中心へと吸い寄せていく。
浅沼と大崎が進行する中、次々と大和テレビ内部の問題が明らかにされていく。
浅沼蒼一が真剣な面持ちで次の告発文を読み上げる。
「それでは、こちら。スタッフからの内部告発です。
長年、トップの意向に従い続けることを強要されてきたスタッフが、自らの信念を持ち続けられずに圧力に屈した実態を告白しています。」
大崎若菜が少し目を細めながら補足する。
「視聴率を重視するあまり、真実の報道が軽視され、虚偽の内容で番組が構成されることも多かったとのことです。
特に、スポンサーとの関係が絡んだ不正な操作を疑われているという証言もあります。」
スポンサーとの不適切な会話が交わされるシーンを次々と映し出す。その度にスタジオは驚きの声と静寂が交錯する。
浅沼はその後も冷静に言葉を続けた。
「これが、最後の告発となります。大和テレビの元重役が過去に行われた「不正な人事異動」について、未だにその影響が残っていると証言しています。
役員たちの間で権力闘争が繰り広げられ、能力や経験よりも、いわゆる「忠誠心」が優先されたという事実です。
この噂は社内でも、そしてネットメディアでも囁かれてきたことではありますが我々はこの噂を白日の下に晒す準備と、決意が出来ました。」
若菜がこれに続ける。
「人事異動の裏には、視聴率や番組内容とは全く関係のない要素があったことが判明しています。
これにより、スタッフやキャスターたちが心身ともに疲弊し、番組の品質にも影響が出ていたと語られています。」
スタジオは、暴風の目に入ったかのように、しばしの凪に包まれる。
スタッフの息遣いさえも放送に乗ってしまいそうな、一瞬の静寂。
その緊張感と静寂は、視聴者にも伝わり、今この告発がどれだけ大きな波紋を広げるかを予感させる。
そしてこの凪を抜けた時、いったいどれほどの嵐が訪れるのか。
だからこそ、浅沼は一歩踏み込んで語りかける。
「これらの問題が明るみに出ることで、視聴者が大和テレビをどのように見直すのか、私たちも深く考える必要があると思います。
今、私たちに求められているのは、透明性と誠実さ。視聴者に正確な情報を届けること、それが私たちの使命です。」
大崎も小さく頷き、続けた。
「こうした告発があることで、我々は自らの過ちを振り返り反省できると思います。
反省なき再生など有り得ない。私はそう思います。
視聴者の皆様には、ぜひ私たちの反省と再生を見守って頂きたいと思います。」
その言葉を受け、番組は次の内容へと進み、視聴者はテレビ業界の暗部に光を当てる番組の進行を、息を呑んで見守っていた。
番組が進むにつれ、SNSは爆発的な盛り上がりを見せる。
#大和テレビの闇暴露
#浅沼と若菜を守れ
#報道の革命
【これは歴史的放送だろ…震える】
【ここまでやる報道番組が今まであったか? これぞ本物のジャーナリズム!】
【浅沼も若菜さんも覚悟が違う。こんなの、絶対に応援するしかない。】
【テレビ業界の膿を全部出し切れ!視聴者は見てるぞ!】
【これが本当の報道だ!未来の教科書に載るレベル!!】
だが、一方でこんな声も聞こえ始める。
【大丈夫なの?ここまでやって、圧力とかかからないの?】
【明日には番組ごと潰されるんじゃ】
【んんん??そんな大したこと言って無くね?】
【みんな知ってたけどそれを言ったのが凄いんだろが、阿保なんかお前は】
熱狂と不安が入り混じり、SNSの勢いは止まることを知らない。そして、
嵐はもう止まらない。
浅沼蒼一は、番組の最後に静かな口調で語りかけた。
「さて、ここまでで、私たちが暴露した数々の問題が、いかに深刻であるか、ご理解頂けたでしょうか。
しかし、まだ終わりではありません。実は、先程最後にとご紹介した事実の中には、私たちが追及すべき、さらに大きな疑惑が存在します。」
大崎若菜は、少し緊張した様子で彼に続く。
「はい、実は私たちの調査によると、わが大和テレビの旧経営陣の中に不正行為へ深く関与していた人物のいることが明らかになりつつあります。」
浅沼はその言葉を受けて、さらに話を続ける。
「彼は、過去に何度も業界内でその名前が上がっていました。スポンサーとの不正な取引や、視聴率操作の背後に彼の存在があった可能性は高い、そしてその彼の行動の裏に大きな利権構造との癒着があったことも。」
若菜は手元の資料に目を落としながらも、視聴者に向けて強い眼差しを向ける。
「彼が関わっていた可能性のある取引や指示が、我々の手元には集まってきています。
我々は既にこの情報を当局に届け、全面的な協力を申し出ています」
浅沼は冷静な表情のまま、さらに言葉を重ねた。
「今回の暴露を機に、彼やその背後にいる人物がどれほどこの業界を、そして皆様の血税を不正行為に流していたのか。
倫理の許す限り皆様にお届けしていきます。
その確たる証明として我々は本日午後1時。
前大和テレビ副社長並びに現社外取締役鶴田圭一、
そして現豊後県知事高田明花。
この両名を告発致しました。」
浅沼蒼一はそう言葉を締めると大崎若菜と共に深々とお辞儀をした。
番組は終了し、見飽きた公共CMがテレビ画面には流れ始める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます