新しい展開
これは、予想外の展開だ。
窓の外を眺めながら、颯汰はため息をついた。
(何であの2人が一緒にいるんだ…)
同じ制服を来た女子2人が向かいにあるゲームセンターへと入っていく。
その後ろ姿は間違いなくマナとひかりだった。
(あの2人、面識あったのか?)
もしあるとすれば、恭介のことだろうか。
ひかりは恭介のことが好きではなかったはずだ。
(特に関心もないみたいだったし)
どちらかと言えば、かなに気があるように見えた。
しかし、かなは維澄と恭介は姫名と付き合っている。
(もしかしたら、2人はー)
カチャンとカップを置く音で我に帰る。
目の前に座ったはなが、こちらを覗き込んでいた。
「颯汰?どうしたの?」
「……何でもない。知り合いがいただけだよ」
「そっか」
いつの間にかテーブルに置かれていた皿が殻になっていた。
「ひかり」
翌日の昼休み、教室を出て行こうとするひかりを呼び止めた。
「何?」
「どこ行くんだ?」
「マナ先輩のとこ」
「悪い。今日はこっちで食べない?」
「え?」
「桜たちもいるし」
あれ、と指差すと窓側に座っていた西宮桜が手を振っていた。
彼女の隣には、かなとナツが座っている。
「わかった」
意外にもあっさりと、ひかりは教室に戻った。
窓側のかなたちに近寄り、弁当を広げている。
(よし、行くか)
パンを片手に、教室を出て行く。
待ち合わせての相手は、意外にもすぐ近くで待っていた。
「お待たせしました」
「待ってないよ。それじゃ、行こうか」
マナと一緒に特別棟の2階へ向かう。
誰もいないのを確認してから、パンの袋を開く。
「マナ先輩とひかりって、接点ありましたっけ」
「かな繋がりだよ。それとこの間、お昼休みにひかりちゃんと話したからかな」
「そうなんですね。てっきり、恭介が関係してると思ってました」
あえて鎌をかけると、マナはビクリと肩を揺らした。
窓の桟を握りしめていた手にギュッと力が入るのがわかった。
(ふーん。少なからず関係しているのか)
姫名と恭介が付き合ったことが関係しているのだろう。
マナも恭介のことが好きだったのだから。
黙ってしまったマナに申し訳ないと思いつつ、パンを食べる。
黙り込んだ2人の間に、気まずい沈黙が落ちた。
「……私とひかりちゃんのこと聞いて、何するつもり?」
「何もしませんよ。……ただ、気になっただけです。2人が仲のいい理由が」
「うーん…。私も、よくわからないんだよね」
「え?」と顔を上げると、マナは困ったように笑っていた。
「特別な出会いだったわけでもないし、一緒にいようって約束したわけでもないの。…ただ、隣にいてくれたんだ。それが当たり前みたいに」
そう言って、彼女は眉を下げて笑った。
全てを吹っ切れたような、軽くなったような笑顔だった。
(……もしかしたら、この2人は案外…)
上手くいくのかもしれないな。
そう思いながら、見上げた空は雪雲が広がっていた。
今年はホワイトクリスマスだろうか。
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