【その頃、救済の光は】
【救済の光】。ベルンの町にて活躍をしていた、Bランク冒険者パーティーの名前である。
一時期は多種のダンジョン踏破、強力なモンスターの討伐、あらゆる依頼をこなしていた彼等であったが、最近はその勢いがなくなっていた。
なぜそうなってしまったのか、それは……とある2人がパーティーを抜けてしまったからと言われている。
「なぜ、この程度のポーションしかできない……ッ!」
救済の光、パーティーリーダーのアルドは深い怒りを滲ませながら、新たに加入をしてきた錬金スキル使いに言い放った。
アルドはギルド内にて、テーブルの上にポーションを置いた。周りには他の冒険者もいるがそんなことを気にしてる暇などなかった。
新たに加入してきた錬金スキル使いは、アルドと向かい合うようにテーブルの反対側に座っている。
「そうは言いますけど、これはかなり良い出来のものですけどね。これ以上の質を求めてるなら、材料費などがもっとかかります」
「……ミクスならこれで作っていた。お前も出来るだろ! 錬金スキル使ってるならこれぐらい当然だろ!」
「あの人とオレを同列に語られるのは困ります。確かにオレはミクスさんに色々教えてもらいましたけど、だからと言ってあの人と同じようにしろは無理なんですよねー」
「だとしても効果が低すぎる! 魔力回復ポーションはミクスなら2本で魔力は全快出来ていた。なのに、お前の場合は4本かかる! どんなに手を抜いたらこうなる?」
「一応言いますけど、これが普通です。間違いなく、市販されているレベルではあるんです。それくらい分かっているでしょ?」
とある錬金スキル使いは、軽く笑いながらアルドにそう言い返す。錬金スキル使いからしたら、作り上げたのは至高とまではいかないが、質が良いポーションであるのは言うまでもなかった。
「……いや、お前がミクスの弟子だからか! あいつの仕返しのために質の低いのを作ったのか? 私情を割りきることもできないのか?」
「いえ、ちゃんと作ってます」
「どうだかな、材料費も要求があまりに高い。こちらの要求が出来ないなら自費で材料を買ってやれ。ミクスならやっていたぞ? 弟子ならこれぐらいはやってみろ」
「それはミクスさんが異常なだけでしょ。以前の救済の光は黒髪の子が材料を用意してたとか聞いてますけど。本来なら材料費とかがこれくらいかかります」
アルドと錬金スキル使いの冒険者はそこで話が平行線になった。アルドはこれくらいはミクスも出来たのだからやれと言って、錬金スキル使いはそれはミクスだから出来た事であるから出来ないと言い返す。
こんなやりとりを何度もしており、同時にミクス離脱後、他の錬金スキル使いとも同じようなやりとりをしていた。
救済の光は中々、ミクスの穴を埋める錬金スキル使いが集まらなかった。その理由はミクスですら追放をするならば、そんな穴を埋めるのは不可能であると他の錬金スキル使いが思ったからである。
他にもミクスが錬金スキルについて、指南をしていた冒険者が多数おり、それに恩義を感じている冒険者が多かった。それゆえに不義理を許せないと思うものが多く、加入をしないと言う理由もあったからである。
ただ、それでも救済の光はBランクパーティー。それだけの実力がある集団ならば門を叩く冒険者もそれなりには居た。
しかし、来る者が全員ミクスの……いや、ミクスとシエラの穴を埋めることが出来るはずもない。
「もういい。お前は追放だ」
アルドは現状に満足ができず、そう錬金スキル使いに言い放った。しかし、それが分かっていたように錬金スキル使いは椅子から立ち上がった。
「もう、お前のような低脳を置いておくのは限界だ。役立たずは消えろ。錬金スキルの使い方をミクスが教えていたと聞いてたが、この町の錬金スキル冒険者のレベルは低いな。自分はある程度できても、教えるのが下手なタイプか」
「ミクスさんは教えるのも上手なタイプですけどね。それが分からないようじゃ、程度がしれますし。それに……限界は別の意味な気がしますけどね」
「……っ」
「ギルバード、イザベル、フィオナ、この3人は最近色々とやばいと聞きますけど。怪しい薬とか金とか、手を出してるとか……ミクスさんがいる時はこんなんじゃなかったでしょ」
「黙れ」
「ギリギリ倫理を保てていたのは、あの人がストッパーだったからでしょうに。それを分からず追い出して、崩壊の手前になってるんだから笑えてしょうがないです」
「……おい、お前マジで殺すぞ」
アルドにそう言われて、錬金スキル使いは肩をすくめて笑った。そのまま、これ以上は何も言わんと言う表情でギルドを去る。
そして、アルドだけがそこに取り残されて、新たに他の錬金スキル使いを探し出した。
◾️◾️
「よう」
「なに?」
「どうだ、救済の光を追放された気分は?」
「別に、特に学びはなかった。ミクスさんが入ってた場所だから学びがあるかなと思って入ってみたけど、何一つ学ぶことはなかった」
少し前に、救済の光を追放された錬金スキル使いは、Cランク冒険者の剣士に話しかけられる。
互いに男であり、気さくな仲のように話を進めていく。
「お前、ミクスさんに憧れすぎだろ」
「憧れは悪いことじゃないさ。ただ、入ってみてミクスさんが凄いのが改めて分かった」
「ふーん、聞いてた以上のヤバい場所だったのか」
「あぁ。しかも、アルド以外はなんかヤバいのに手を出してる感じがあった。前より現状は深刻かもな」
ギルドから離れながら、2人は歩き続ける。剣士は錬金スキル使いが、救済の光に所属をして得た知見が気になっているようで質問を続ける。
「深刻なのか。ヤバいのってなんだ?」
「金とか、変な黒い泥みたいな薬を飲んでたりな」
「マジか……最近あいつら雰囲気変わったとは思ってたんだけど」
「ミクスさんは倫理観が強い人だった。だから、ストッパーにもなっていたんだろうけど。それと同時にポーションの要求値が異常に高い」
「そりゃミクスさんのポーションだから、高いのは当たり前じゃ」
「いや、それだけではないと思う。なんと言うか……錬金スキルの範疇じゃない気がしたな」
錬金スキル使いは自分が体験してきた事を伝え続ける。話を聞けば聞くほど、剣士はその話の続きを聴きたくなった。
「黒髪青目のシエラ、あの子が素材を作ってたのは聞いたことはあったけど。そこに要因があるのかもな。ミクスさんがあのパーティーに留まって、そして、サリアの町にまで着いて行ったんだ」
「何か意味があったと言いたいのか」
「そうだな」
2人はシエラと言う少女を思い出し、そして、そのシエラが何かあのパーティーでも大きな役割を果たしていた事を推測する。
「ミクスさんが居たからオレも入ってみたが、想像以上だったな。倫理がない者は荒んでいくだけだ。無論、アルドもな」
「アルドもか。話を聞く限り、その中だとマシな感じがするが」
「その中ではって話で、普通に考えたら最悪だな。ただ、あいつはミクスさんに強い嫉妬があったんだろう。パーティーを回していたのが表向きが自分なだけで、円滑だったのはミクスさん、それとシエラがいたからだったかもしれんと思ってるみたいだったな」
ミクスとシエラが消えたことで、救済の光が大きく変化をしてしまっていた。
「あいつ言ってたぜ。錬金スキルがあれば……ってな」
「錬金スキルだけじゃな。それにアルドは勇者のスキルがあるんだろ。勇者スキルを持ってる奴が、錬金を羨むとはな」
「あぁ、意外だ。ただ、勇者のスキルは確かに本物だ。あいつの単純な実力だけなら、Aランクにも行けるかもしれない」
「……マジ? Aランクはヤベェな」
「でも、あいつは単純な実力だけを求めてるわけじゃないみたいだな。力で従う奴はいても、慕ってくれる人はいなかったからな」
アルドの強さと才能は本物であったが、彼が求めていたのは全く別のものだった。
錬金スキル使いはそれを悟った。
「後世に名を残すような偉人を目指しているんだろうさ。嘗ての勇者のようにな。よく、英雄譚を読んでたみたいだからな。でも、あんな適当で短気なやつには無理だろ」
「なるほどね。あぁ、正反対のミクスさんが人に囲まれてたのが嫌いだってことか?」
「あの人は人に与えることができる器が大きい人だ。自分の研究結果や錬金の仕方をわざわざ本にして配ってたくらいだ」
「アルドか。確かに英雄の器ではないな。悪い噂しか聞いたことないし、暴力沙汰と他人の女にも手を出すとかもあったしな。そんで女の相手の男を馬鹿にしたりとかもあった」
彼等2人はそのまま歩き続けていく。アルドに対しての、評価は最低であった。また、他の救済の光に対しても評価が低く、それがさらに低くなっていた。
「──ミクスさんが消えて、落ちぶれたって噂が本当なのは分かったな」
錬金スキル使いが最後に発した言葉でその話題は締めくくられた。しかし、そこで剣士はシエラのことで気になっている事を思い出した。
「そう言えば、シエラって子はミクスさんとどう言う関係なんだろうな?」
「さぁ、知らん。ただ、前に見た時は明らかに好意持ってる感じだったけどな。オレも含めて、全員が黒髪青目に対しては拒否反応があったからな。でもミクスさんは普通に対応してたし、そういうところじゃね」
「そりゃそうか。それは惚れるな」
「いつもミクスさんを見てたな。凄い分かりやすかった。ただ、ミクスさんは妹みたいな感じで見てるな」
その後、彼等はその話を最後に別の話題へと切り替わった。しかし、すぐさまミクスがAランクとなった話が回ってきて、また、ミクスの話題を話すことになる。
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