二合目『始まりの山』
ジリリリ!と私の携帯からアラームが鳴る。
「ん・・・」
目を軽く掻いてシュラフから身を起こす。
「そうだった。今日は、箱根山に行くんだったね・・・」
けど、ここの景色も収めないとね〜
髪の毛は左側だけを結んで、制服の袖に腕を通そうとしたが我慢して、ひし形模様の編み込みの服を着て、下は制服のスカートを履いた。
「さて・・・箱根山からの日の出を撮るぞ〜!」
けれど、聞いていなかった事を思い出す。
「どうして、登山靴の方が良いの?」「どうして、普通のリュックだとだめなの?」「どうして、登山届を書いて出さないといけないの?」まあ、他にも聞きたいことはあるが今はいいかな。
「やっぱり、山から見える日の出ってきれい・・・!」
本当は、お寺とか回ろうと思ったけどお母さんに『キャンプばっか行かないで新しい趣味みっけたら〜?』と言われていたけど、今日登ってダメそうだったらあいつに謝ればいいか・・・
「さて・・・朝ご飯、作るか」
あらかじめ切っておいた野菜たちをコッヘルに入れて、水を入れて・・・と。
「ん〜スープ作ったことないから、どれぐらいで完成なのかわっかんない・・・!」
とりあえず、よく火が通っていれば大丈夫か・・・
「野菜スープはとりあえずは大丈夫・・・」
ご飯ものは、カレーが少し残ってるからそれ食べるとして・・・
「とりあえず、炊くか〜」
飯盒に米を入れた後に、水を入れて直ぐに蓋して固形燃料を使って炊くことにした。
「そういえば、連絡来てないかな・・・?」
携帯を確認してみると、お母さんから『大丈夫〜?』とメールが入っていた。
「一応生存報告するか〜」
コールになってすぐに『ガチャ』と音がなった後に『どうしたの?』と一言聞かれた。いや、こっちが聞きたいんだけどな・・・あはは
「今、予定通り進んでる」
『そう・・・良かったわ』
「あの・・・それでさ、私」
『どうしたの?急に畏まって・・・』
「箱根山がよく見えるキャンプ場にいるんだけど」
『まあ!景色の写真、帰ったら見せて』
「うん。お母さんさ私に『キャンプばっか行かないで新しい趣味見つけたら?』って言ったの覚えてる?」
『ええ。忘れるわけないじゃない』
「・・・あのね、私・・・登山を始めようと思うんだ」
『なんですって!?』
「私さ、景色を見るのってすごい好きなの」
『でも・・・』
「どんな険しい道も、天気も知りたくって・・・」
『駄目よ!!』
「え・・・どうして!?」
『万が一、怪我なんてしたら大変じゃない!』
「もう、登山が好きな子に言っちゃってるし。その・・・昨日の時に言えばよかったんだけどさ。それは・・・ごめん」
『お母さんは、認めません』
「ーーそんな」
『あなたが成績も上げるって条件で始めさせたの覚えてないの?』
「っ・・・!」
『どうして、登山に・・・・』
「・・・もういい」
『あ、ちょっと!!』
私は電話を切った。
直ぐに、お姉ちゃんから『おはよ』とメールが入っていた。お姉ちゃんにも聞いておこうと思って、電話をかけた。
「お姉ちゃん」
『どうしたの?』優しい声が聞こえる。
「さっきね、お母さんに『登山する』言ったんだけどさ」
『話を聞いてらえなかったんでしょう?』
「どうして、それを?」
『お母さんの声で目が覚めたの』
「そっか。お姉ちゃん、ごめんなさい」
『どうして?』
「ーーえ?」
『どうして謝るの?』
「私が登山するなんて言ったから・・・」
『ううん、それは違う』
「・・・でも!」
『私はね、ひよりがキャンプするって聞いて嬉しかった』
「もう半年以上だよ、その話・・・」
『うん。中学では、いっつも机に突っ伏してたのも聞いていた私はね・・・ようやく自分に合う趣味を見つけたんだ!ってね』
「私、どうしたらいいんだろうね」
『登ってきたら?』
「ーーえ?」
『山に』
「でも、お母さんに!」
『・・・夢を諦めるくらいなら、頑張ってから後悔したほうがいいと思う!って言ったんだってね?』
「ーーどうしてそれを?」
『聞いたのよ、私の友達に』
「とも・・・だち?」
『そう。あの子からも重ねて言われたよ』
「何を?」
『ひよりに言われた通りだって』
「っ・・・!!」
『それと、私からのアドバイス。もし、登山を続けたいなら”なんで登りたい?”って理由を軸にするのがいいかもね』
「私言ったよ?」
『う〜んあの理由だとね、正直・・・心配なんだと思う』
「心配?」
『うん。急にさ山に登ってさ、立ち上がれないほどの怪我を負ったとして・・・ひよりはどうする?』
「それは・・・」
『・・・今すぐには答えられないか。でも、私はひよりの事を誰よりも信用してるよ』
「ありがと・・・」
『水臭いこと言わないで』
「うん」
『私からも、お母さんに言っておくから・・・まずは、登っておいで』
「ありがとう、お姉ちゃん!!」
『そんじゃ、後でね〜』
「うん!」
ブツ!と電話が切れた。その後すぐに朝食を食べ終え、コーヒーを飲んだ。
「そういえば、登山に必要なものって何があるんだろ?」
携帯の検索機能を使って調べてみた。
「へえ〜意外と持って行くものあるんだね」
ちょっと聞いてみるか・・・3コールほど流れて電話に出た。ガタン!と小物ではない落ちる音がした後に
『いてて・・・』
と聞こえた。
『あ、ごめ〜ん』
「何してたらそうなるのよ?」
『ちょっとね、ハンモックで寝てたら急に電話がかかってくるんだも〜ん』
「そうなのね、あはは・・・」
『どうしたの?』
「一応聞こうと思ったんだけどさ、私みたいな初心者って何持ってけばいいのかなってさ?」
『あ〜そうそう!』
「さては、言い忘れたわね?」
『軍手ってある?』
「焚き火のがあるけど・・・」
『私、登山用に持っていくよ〜』
「どうして?」
『滑落防止』
「低山でも?」
『低山ではね、お守り位になるとは思う』
「そうなんだ〜」
『ひよりぐらいだったら”高尾山”とかの山から始めるのが無難だと思うけどな〜』
「箱根山を登った後に考えてもいい?」
『そりゃもちろん!』
「あと、持って行く物は?」
『水分!』
「水分って自販機あるんじゃないの?」
『いや、ないよ』
「ないの!?」
『そんなに驚くことじゃないって』
「じゃあ・・・」
『そうだね。飲み物は登山道に入る前に買っておくのがおすすめだよ〜あ、あと”行動食”も!』
「行動食って?」
『っておい・・・そこからか』
「なくても登れると思うんだけど・・・」
『じゃあ、車で例えてみよう』
「車?」
『そう。車ってさ”何がないと”動かないと思う?』
「鍵とか?」
『違う。ガソリンだよ』
「あ、そっか。ガソリン入れないとどうなるの?」
『止まる』
「ええ、止まるの!?」
『当たり前でしょ・・・んで、それを私達に表すと?』
「ぐう・・・確かに」
『そういえば、ザックはどういうの?』
「家にあった黄色くて、ペンギンのロゴがついてるザック」
『ーーまさか』
「どうしたの?」
『なんでもない。ほら、準備しないとだし・・・また後で』
「ん」
『あ、そうだ。交通機関って使う?』
「折りたたみのロードバイクを・・・」
『え〜きついと思うけどな・・・』
「ソナの?」
『じゃあ、体感してみる?』
「簡単にヘタれる体力じゃないってことを見せてあげるわ!」
電話を切り、軽く準備したあと箱根山の麓に向かった。
は、いいものの・・・
「やっぱ無理ぃー!」
ゼイゼイ、と息を吐きながらロードバイクを押してようやく箱根ロープウェイ駅『姥子』駅についた。とりあえず、自電車の駐車場に停めて往復の切符を買った。
「ちょっとだけ・・・休憩」
次のロープウェイまで時間あるし。
「コンビニ、何かあるかな?」
コンビニに入った私は、板チョコと羊羹、水とコーヒー、パンを買った。
「ありがとうございました〜!」
近くにあったベンチでパンを一つ開ける。
「おお・・・すごい」
パンの香りもそうだけど、何より・・・味も美味しい!!
「ん〜美味しい・・・!」
はあ・・・寄ってよかった。コーヒーを一口飲み、ロープウェイに乗った。
「おっぷ。ひとおおいなぁ・・・」
ザックを前に背負い直して、人とぶつかりそうになりながらも箱根登山ロープウェイ『大涌谷駅』に着いた。「う〜ひとおおかった・・・」
『お〜い!』と手を振りながら、アイスを食べてる日向がいた。
「ちょっと!人が多くて大変だったのに、アイスって・・・」
「ひよりんも食べる?」
「人の話、聞いてる・・・!」
言葉を遮るようにアイスを掬ったスプーンを私の口に入れた。
「あ、美味しい・・・じゃなくて!」
「・・・きぃ、抜きなよ?」
「え?」「今回は、大涌谷から箱根山に登ろ〜う!」
「ロープウェイとかは?」
「もちろん、なしよ!」
「ええ・・・」
「気落とさないで」
「だって・・・」
「そうだ。これ貸してあげる」
「なにこれ?」
「当ててみて」
「老人とかがついてる杖?」
私がそう言うと、ソフトクリームを食べてた日向が『ゴホ!』と噎せた。なにか間違っていただろうか?
「違うよ〜」
「じゃあ、どう使うの?」
「ソフトクリーム持ってて〜」
「うん」
「これはね”トレキングポール”って言って、っこう使うの」
日向が実践的に使っている。
「へえ〜そうなんだ!」
「そう」
「ちょっと時間が早いし、実践しながらゆっくりしてからいこっか!」
「うん!」そうして、30分ぐらい休憩してトレッキングシューズの紐を締めて、ザックも背負い直した。
「よっし、それじゃあ・・・私達の始まりの山に・・・しゅっぱ〜つ!」
「行こう!」
例え、誰かにこの趣味を否定されても・・・侮辱されても、立ち直れるかわからないけれど・・・それでも・・・
「ねえ」
「ん〜?」
「ありが・・・!」
「山頂についてから」
「そうだね、日向」
登山とキャンプ。2つに興味なんて初めからあったわけじゃない。
だけど私は、さらなる高みへ目指します!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます