第21話

「あの、踊ってみたなんだけど」


「兄さんは自分でどんくさいって言うくらいだから自覚あるんだよね?」


「はい……」


 しょんぼり。まあ、確かに姿見の前で踊ってみたら自分で自分に呪いをかけてるみたいだったけどさ。


「いやまあ兄さんの不可思議な踊りでも皆喜ぶだろうけどねえ」


「そこまで言われてやるわけないでしょ」


「それがいいよ」


 因みに俺は顔だけじゃなく身体全体が美しいらしい。骨格や筋肉の付き方なんかも。なんか黄金比がどうのこうのって言われたことがある。だから体を動かすのは上手いはず、らしいのだが……。前世、運動音痴だったからなあ。俺がどんくさいのはそれが影響してるんじゃなかろうか。


「そんなことより兄さん、健康診断だよ」


「お外出たくねえよう……」


 怖いよお。


「こればっかりはしょうがないよ。大人しく病院行こう」


「顔隠しても意味ねえのどうにかならないかな」


「信者は顔隠したくらいじゃ見抜いてくるからねえ」


「大竹さん達には苦労をかけるなあ」


「中川さん達もね」


「あいつらは勝手にやってるだけでしょ」


「まあまあそう言わずに」


 ……晃ってあいつらに甘いよな……。











「ふー」


 本条家の外に出て煙草を一服。大事な仕事の前の儀式。


「松田」


 いきなり声をかけられるのも慣れてきた。


「なんだよ、ちゃんと外で吸ってるし消臭スプレーも持ってきたぞ」


 携帯灰皿もな。


「ならいい。本当なら銀一様の為に喫煙自体をやめてもらいたいが」


「……俺もやめようやめようって思っちゃいるんだがな……殉職した奴とか大怪我して後遺症残っちまって引退した奴のことを思い出すと吸いたくなるんだ」


「我々の流儀だ。銀一様が何も言わないのならば我々もまた何も言わない」


「おまえらが吸わないのって銀一坊っちゃんに言われたのか?」


「直接は言われていない。ただ、銀一様は煙草の煙が苦手なのだ。だから我々は吸わない。吸っていた者はその日に辞めた」


 こいつらほんと。


「うーん。辞める努力はしてみるが」


「無理はするな」


「ありがとよ」











「いやじゃいやじゃそといきたくないのじゃ」


「のじゃロリになっても駄目だよ」

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