第25話 例の自宅ダンジョン

 オレたちは、例のダンジョンへ飛んだ。ウニボーにポータルを開けてもらおうとしたら、レティ姫が開けてくれた。

 

「ワントープくらい、ブクマするっしょ。ガキの頃に連れてこられたときに、とっくにブクマしたわー」


「たしかに。ボクもだわ」


「ノームだもんね。ファストトラベル魔法とか余裕っしょ?」


「まあ余裕よね」


 レティ姫とピエラが、魔術トークで話し合っている。専門用語が多すぎて、理解できないが。


「へえ、ここがクニミツの領土なんだ。キレイじゃん」


 オレの領土に到着して、レティ姫があちこちを見て回った。


「これがあんたらの【かまど】と【作業台】かー。ウチらが使う【錬金釜】とは、ちょい違うね」


 さすが魔術大国の姫様である。家に置いてある家具を、【かまど】と【作業台】だと一発で見抜いた。


「見なよ、アニエス! スケルトンがいる! ウケる!」


 レティ姫が指をさす先で、ガイコツ夫婦が畑を耕している。


「ボクの召還獣として、普段はここでお仕事させているわ」


「へえー。ネクロマンサーでもないのに、スケルトンって使役できるんだ」


「自分の意思で、こっち側に従っているのよ」


「興味深いね。まだまだ知らない魔法がいっぱいあるじゃん。おもしろー」


 姫がスケルトンたちにあいさつを終えて、いよいよダンジョンへ。


「うわー!」


 冒険者だろうか、数名の戦士がダンジョンの入口に吐き出された。


「さすがに四〇分越えはムリかー」


 頭をかきながら、冒険者たちはダンジョンを去っていく。


「あのダンジョン、ワタシは潜ったことがないんだ。どこまで強くなるのか」


 そう話すルイーゼ同様、実はオレたちもあのダンジョンに潜るのは初めてだ。


 ただのメイドだった少女が、モモコと肩を並べるくらいになったほどである。かなりの効果が期待できそうだが。


「おっ、なんだこれは」


 だだっ広い部屋に、魔物が無限湧きする。ノームの亡霊が、魔物を大量に召喚しているのか。


「人数に乗じて、大量に湧くみたいなんだよね。三〇分耐えたら、ボスが出るの」


 レベルに合わせて、だんだん敵も強くなっていく。


 オレたちクラスになると、初めから敵が強かった。


 ボスが現れる前に死ぬと、ダンジョンから追い出されるらしい。さっきの冒険者たちみたいに。


 ローグライクのサバイバルゲームみたいな構成なんだな、このダンジョンは。そりゃあ、強くなるわけだ。


「おっ。おっ! あおっ!」


 油断していると、負けそうになるな。


「ボスが現れたぞ!」


 中央に現れたのは、ガイコツ型のノームだった。ボロを着ている。


「あのボスを倒して、レベルをひたすら上げました」


 ダンジョンを出ると復活するので、レベル上げは楽だったらしい。


「ワタシがやってもいいか? 強さが頭打ちしている気がしてならない」


「どうぞどうぞ」


 先陣を、ルイーゼに譲る。


 相手はそれなりに強いが、抵抗もできずに破壊された。攻撃力もたいしてなく、頑丈なだけという印象である。


 ルイーゼくらいになると、楽勝か。


「どうだ?」


「すごいな。かなりの経験値が体内に入り込んだ気がする」


 自分の身体を擦りながら、強くなったのを実感しているようだ。


「悪名高い、ノームだったわ。当時は強さもえげつなかったのよ」


 身内の面汚しだったと言わんばかりに、ピエラはボスを罵倒する。


「これなら、数周回っただけでかなりのレベルに到達しそうだな」


「気が遠くなるくらい周回しました」


 当時を語るアニエスは、目にハイライトがなくなっていく。


「ですが、『じゅう』という武器の再現はできませんでした」


 やはり銃は、この世界にはないんだな。飛び道具なら、魔法が発達している。剣から衝撃波まで出せる世界だ。銃を作ってまで、有利に立つ必要はない。


 それでも、オレたちは銃にこだわった。


 ためしに、目の前で作って見せる。ちょうど銃の調節も必要だったし。大砲から、水鉄砲までを開発した。


「なるほど。大筒状の杖を、振り回している構図なのですね? 難しいわけです」


 触っただけで、アニエスが銃の仕組みを言い当てる。


 この世界における銃の構造なんて、初めて知った。


「モモコ、お前知ってたか?」


 ブンブンと、モモコは首を振る。


 この世界の銃が、魔法の杖扱いだったとは。めんどくさい工程を挟んで、魔法を撃ち出してんのな。


「変に銃を組み立てたところで、理屈がメチャクチャになりそうだな」


 ピエラは銃の内部構造を、瞬時に魔法技術に転用している。試行錯誤の末に、使い慣れている方を選んだ。


 その後もオレたちは、ダンジョンに何度も挑戦をした。


「初心者向けダンジョンって聞いていたのに、やたら歯ごたえのあるフロアになったな」


「やられっぱなしは、イヤだったんでしょうね」


 ピエラが、先祖の言葉を代弁する。


 だが、そのおかげでレベル不足が補えた感じがした。ケガの功名ってやつか。


 とはいえ、レベリングも楽ではない。周回していくうちに、レベルアップも頭打ちになってきた。


「ここらが限界か」


 半日でここまでレベルを上げられたら、上等である。


「ねえ、ちょっといいかしら?」


「どうぞ、ピエラ」


「スケルトンたちも、潜らせたいんだけど?」


 ピエラが言うには、スケルトンたちもレベルが上がるのかチェックしたいという。


「いいな。攻略させてみるか」


 そういえば、スケルトンが実戦で戦ったところを、見たことがなかったな。


「やってみるわね」


 オレたちも、ピエラについていく。

 

 ダンジョンに潜ってすぐ、ピエラがスケルトン二体を召喚した。


「んじゃ、行きますぜ」


 スケロクが、拳を胸の前で当てる。


「行きますえ」


 妻のスケチヨが、杖を振り回した。


 現れたのは、敵のスケルトンである。


「ザコは引っ込んでてくれや!」


 飛び蹴りの一撃で、スケロクはスケルトンの群れを破壊した。


 さすがに、なめ過ぎか。


 スケチヨは、次に出てきたスライムを、範囲攻撃魔法で焼く。


「もっと強いのは、いまへんのかえ?」


 スケルトン夫婦の要望に答えたのか、オーガや式神のキツネなどが現れた。


 それさえも、スケルトン夫婦は蹴散らしていく。


「いやあ、いい汗をかきやした」


 ダンジョンの外へ出て、スケロクが額を拭う。


 スケルトンのどこに汗腺があるのかわからないが。スケルトンなりのジョークなのか?


 いい狩り場を紹介してもらったお礼に、オレたちはレティ姫たちに料理を振る舞う。といっても何も用意していなかったから、バーベキューだが。


「あー、ステキ。こうやって立ち食いも悪くないね」


 大口を開けて、姫が肉にかぶりつく。


「貴族様に見合うメニューじゃなくて、すまない」


「いいのいいの。気を使わないでよ」


 窮屈なテーブルマナーなどは、正直姫の性に合わないという。


 この姫なら、そうだろうな。


「それより、男の意見が聞きたいな。男子ってさ、だいたいの場合かなりウブなわけ?」


「さあ」


 現場を見ていないので、オレはよくわからない。あの王子のことだから、チャラい姫より清楚なアニエスを選んがような気もする。


「心当たりは?」


「結構、サービスしていると思うけど?」


 姫はネグリジェ姿で相手宅の寝室に飛び込んだり、風呂に全裸で乱入したりと、積極的にアプローチをしていたらしい。


 だが、まったく相手にされていないとか。


「アタシって、そんなに魅力ないかな?」


 食事を終えて、姫様の悩み相談となった。


「そんなことはないだろ? 引いているだけじゃないのか?」


「引いてんの? 姫であるアタシが裸体を晒しているのに、ガッツかない?」


「たしかに、据え膳食わぬは、とはいうが。やりすぎだ」


 もっと三歩くらい引いてくれたほうが、男性としても接しやすいかなと。


「大丈夫。姫は魅力的」


 モモコが、助け舟を出してくれた。


 こういうときは回答ではなく、共感してくれる相手が必要だな。


「そうなん? よかった」


「女あまりとかも、あの王子ならありえない。案外一途だし」


「だよねえ。アンタにぞっこんだもんね」


 また、姫が意気消沈する。


「見た目はそうかもしれない。でも、中身はおそらく姫様の方がいい」


「どうだろうね?」


「自信を持って」


「やってみるけど……っ!」


 姫様の腰が、ピカピカ点滅していた。王族用の通信端末が、光っている。


「どうしたの……わかった。すぐに帰るよオヤジ!」


 どうやら、ドルリーの国王からのようだ。


「またヴリトラが現れたって。国の騎士だけじゃ、押さえられない!」

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