第四章 王都で、相棒そっくりの女性と出会う

第21話 強敵、竜人族の黒騎士

 旅をする準備が着々と進む。


「とはいえ、オイラたちはどういう体で向かうモジャ? 『容疑を晴らしに来たモジャー』って言ったところで、門前払いを食らうモジャ」


「その辺は、任せてもらいたい。ワタシが、ドリスさまと話を通しておく」


「わかった」


「どうした、モモコ? 浮かない顔をしているが?」


「いや。ちょっと、これからはガチな冒険が続くんだなって」


 そうか。よく考えたら、オレたちはエンジョイ勢なんだよな。


「クニミツも、いつの間にか強くなってる」


「お前は割と、ネタに振ってるよな」


「それでも勝てたから。でも今回は、そんなにうまくいくのかなって」


 ネタ装備は、これで最後になるかもしれない。それくらい、マジな戦闘が続くと思う。


「だから、ちょっと思い出がほしい」


 モモコが、マイク型の杖を取り出す。


「吟遊詩人と踊り子、取ってたでしょ?」


 モモコは、歌って踊れるダンサーだ。


「わかった。最初で最後のライブをやろう」


 オレもギターを出して、港町に繰り出す。

 

「そういうわけだ。試しに、港町で一曲演奏してみようかな」

 

 ジョブを取ったからと言っても、演奏していなければ腕がサビついてしまう。


「吟遊詩人のジョブなら、我々も数名取っておる。楽器の手伝いはできるぞい」


 ドワーフが、ドラムを担当してくれるそうだ。


「ありがたい。手を貸してくれ」


「生き返らせてもらった、恩ぞ。演奏くらい、手を貸そうぞよ」


 というわけで、港町の酒場にて、セッションを試みた。


「飛び入りでも、受け入れてもらえるのか?」


「港の危機を救ったんじゃ。クニミツ殿らの頼みとあらば、断る奴はおるまい」


「じゃあ……」


 ジャラーンと、オレはギターを引く。


 メンバーはモモコの他に、ピエラもいる。

 世界の裏側で助けたドワーフたちには、バックバンドを担当してもらった。


 オレたちの世界で歌われていた、オーソドックスなアニソンを、モモコが熱唱する。


 モモコの歌を初めて聞いたが、とんでもなくうまい。


 即興ライブだというのに、酒場は大いに盛り上がった。


 


 王都へ経つ日を迎える。

 


「というわけで、オイラたちはお留守にするモジャ。その間、村はみんなに任せるモジャー」


 ウニボーがお願いすると、村民たちは「おーっ」と景気よく返答をした。


 近くの街で馬車を借り、三日ほど進んだときである。

 

「王都の領域に入ったモジャ。空気がめちゃ変わったモジャね」


 オレにもわかった。【世界の裏側】の気配だ。


「うわあ!」


 冒険者が、森から飛び出してきた。同時に、屈強な武闘家が血まみれになって、森から吐き出される。あれはもう、助からない。


 オレは、慌てて馬車を止めた。


「何があった!?」


「化け物だ!」


 剣で森を指しながら、冒険者は半狂乱になって逃げ出す。


 こんな静かな森で、強めのモンスターかよ!


「マイナーチェンジした武器の性能を、試すか」



 森に入ると、えげつない数の魔物たちが王都へ向かっていた。木々をへし折りながら、イモムシのような巨大生物がのっしのっしと這いずっている。あそこから、モンスターが湧いているのか。


「クニミツ、モモコ、ザコは任せてっ!」


 帽子を頭で押さえつつ、ピエラが先行した。ザコの魔物たちを、雷魔法で黒焦げにしていく。森に雷を落とすと、草木に燃え移ってしまう。だから地面に電流を放って、体内から破壊するのか。見事だな。


「いくわよ、イモムシども! 【アイシクル・レイ】!」


 指から冷凍光線を浴びせ、ピエラがモンスター共を凍らせる。


 水鉄砲を見せただけで、あんな術を思いつくのか。つくづくピエラは天才だ。


「この火炎放射器だが、森で放つと大惨事だな」


「心配ない! 氷結ブレスにもなるぜ!」


 ルイーゼに使用方法を教える。


「そうか。世話になる! ブレスを喰らえ!」


 氷結ブレスを、ルイーゼが魔物たちにぶちまけた。


 オレたちの仕事は、イモムシ戦車の始末である。


「デカいのを一発、お見舞してやるぜ!」


 オレは、ランチャーを構えた。


 イモムシ戦車の口の中に、どデカいロケットを撃ち込む。


 ロケットを食った大型イモムシが、足を止めて身体をのけぞらせた。


「もう一発くらいな!」


 さらに連発して、悲鳴を上げさせる。口が開いたところに、さらにロケットを食わせてやった。


 イモムシ戦車が、連結部分も含めて爆発した。 


「デカい魔力を持ったヤツが、来るわ! 気を付けて!」


 冷凍光線を、ピエラが虚空に当てた。


 ルイーゼも、凍結ブレスを放つ。


 だが、交差した冷凍攻撃は、なぞのシールドによってあっさりと阻まれた。


「強烈な凍気の攻撃だが、我の鉄壁の防御を突破することはできんぞ!」


 黒い騎士が、イモムシ戦車の頭から出てくる。全身黒尽くめのヨロイで、やたらデカいグレートソードを持っていた。その姿は、二足歩行のドラゴンを思わせる。


「あの声と、強固な装甲……ヤツは」


 ルイーゼが騎士と対峙しようとしたが、ザコの攻撃に阻まれた。

 

「任せろ。よし、やったるぜ!」


 オレは、黒い騎士にランチャーを放つ。


「ふお!」


 敵が顔面に、ランチャーを受けた。


 欠けた走行のパーツから、火花が散っている。


「こいつは……人間じゃない」


 この世界に、地球と同じ機械文明があるかはわからない。


 が、コイツの身体がとにかく未知なるテクノロジーでできているのはたしかなようだ。


「なに、あのデザイン!」


 モモコが、すっかり大興奮している。


 わからなくもない。オレも内心では、驚いているからである。


 あれは、どう見てもロボットだ。もしくは、金属生命体か。


 顔の大きさからして、人間がカブトをつけている風ではない。あれが顔なのだ。


「うわあ、懐古趣味と中二病をうまいことかけ合わせた、かっこいいヤロウが現れたな!」


 デザインにどことなく漂う、九〇年代臭が凄まじい。こんなの当時にはいっぱいいたなーと。


「でも敵っぽい。残念」


 仕方ない。参考にだけしよう。 


「わが同胞スキュラを倒したのは、貴様らか!」


 野太いおっさんの声で、騎士がオレたちに凄む。


 どうやら黒騎士は、スキュラの仲間だったらしい。【世界の裏側】の住人確定だな。


「このアビスナイト・ブラックドラゴンのヴリトラが、王都ともども貴様らに引導を渡してくれよう!」


 ヴリトラと名乗る騎士が、オレたちに襲いかかる。


「モモコ、油断するな!」


「わかってる」


 オレが正面で騎士と対峙している間、モモコには背後から銃を撃ち込んでもらう。ザコ相手に使うマシンガンではない。二丁のレーザー砲である。いきなり全力モードだ。


「シールドバッシュ!」


 オレは防御しつつ、盾で殴りかかる。


 グレートソードを片手で振り回しただけで、相手はオレの盾を弾き飛ばした。


「フン。珍妙な武装を操る者たちよ。さすがに強いな。しかし、こちらとてブラックドラゴン。おいそれと受けてやるわけにはいかぬ!」


 だがオレの剣も、モモコの銃撃も、ヴリトラの硬い装甲に阻まれる。硬い! こっちはスキルとか、全開でぶっ放しているのに。


「加勢する!」


「ザコは全滅したわ!」


 ルイーゼとピエラが、増援に加わった。


「やはり、お前はヴリトラ!」


 黒騎士ヴリトラを、ルイーゼは知っているようである。


「なんと、ワシ以外に竜人族ドラゴニックが!」


「ブラックドラゴン族、我々が壊滅させたはずでは!?」


「あんなショボい侵攻で、誇り高きブラックドラゴンが死ぬかよ! 魔王より賜ったこのボディのおかげで、生きながらえておるわい!」


 ヴリトラが、剣を振るう。


「王都とともに果てるがよい! 【オーラ・スマッシュ】!」


 特大のオーラ・スマッシュをヴリトラが放った。


 オレたちは、一斉に跳ぶ。


 森があっという間に、はげ山へと変わった。山すら切り捨てるほどの威力かよ!


「まだまだ……ぬお!」


 紫色の閃光が、ヴリトラを切り裂く。


「おのれ、貴様は!」


 閃光の正体は、女性のニンジャだった。


 顔の下半分は紫の頭巾で覆われている。


 それでも、オレにはわかった。


 さっきのニンジャ、モモコそっくりだと。

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