凡人転生者、赤ちゃんから鍛えて万能の超能力者になる 〜ノストラダムスの予言が実際に起こるようですが、オーバーキルできる実力を身につけました〜
渡良瀬遊
第1話 赤ちゃんになったよ
1999年の7月、俺は死ぬんだと思っていた。
――そう、ノストラダムスの大予言だ。
16世紀の星占い師・ノストラダムスいわく、1999年の7月に空から恐怖の大王が降りてきて、世界が終わるのだという。
あのころ、テレビや雑誌では、しょっちゅうこの話題を取り上げていた。
今から思えばとんだホラ話だが、あの頃の俺は「もしかしたら、本当に……」と心のどこかで思っていたんだ。
けれど、1999年の8月になっても、世界は滅びなかった。
10歳の夏休み、空は突き抜けるように青く、セミの声だけがやたらとうるさかった。
やがて夏休みが終わり、秋になっても雪がふっても恐怖の大王がやってくることはなかった。
そうして、2025年の今になっても、世界は続いている。
でも、俺――
思い返せば、人生は徐々に悪くなっていた。
その始めは6歳、幼なじみの女の子・
俺は友だちがいなくなることが怖くなり、新しい友だちをつくることに
大企業のリストラのニュースの中で育ち、安定したルートなんてないんだという事実を嫌でも叩きつけられた。
テストで良い点を取ることの意味がわからず、徐々に学校に行くのが苦しくなっていった。
そして災害があり、俺が就職することには経済は冷え切っていた。
そのしわ寄せは俺たちに来て、ブラックな環境で怒鳴られながら働くことになった。
30代も中盤を過ぎて、気づけばただ呼吸をして、仕事をして、眠るだけの毎日……。
友達もおらず、恋人なんていたこともない。
両親も他界して、誰に何を言われることもなくなった。
だから、あの日――あの朝も、いつも通りだった。
満員電車に乗るために駅のホームで並んでいると、階段の近くが騒がしいのに気づいた。
「キャーッ」「逃げろ!」そんな叫び声が上がったかと思うと、
何が起きているのか理解できないまま、俺はその波に巻き込まれ――そして、見た。
血まみれの男が、包丁を振り回しながらこちらに向かってくるのを。
その目は完全に
逃げようとしたが、足が動かなかった。
次の瞬間、熱いものが胸に走った。
「がっ……!」
……刺された。
少し離れたところで悲鳴が上がった。
呼吸ができなかった。地面に倒れ、視界がどんどん暗くなっていく。
温かい血が腹部から流れ出し、俺の
(ああ、これでやっと終わるのか……。まあ、もういいや……。結局、世界は滅びなかったな……)
そんな考えが浮かぶと同時に、ふと初音ちゃんの顔を思い出した。
(願いがひとつ叶うなら……)
もうこの世界に未練はないけれど。
(1日だけでいいからあの頃に戻りたいな……。まだ明日が楽しみで、初音ちゃんと遊んでいたあの頃に……)
そして意識は、ふっと闇に溶けた。
☆★☆
「――レンくん」
女の子の声がした。
(あれ、俺……?)
まだ生きてるのかな。
もう死んでもよかったのに。
「レンくん、ごめんね……」
(誰だ……?)
俺のことを心配してくれるような人はいないはずなのに。
でも、どこか懐かしい気がする。
目は開けられない。
どうしてか、すべてが白に染まっている。
「……ごめんね。わたし、この世界のレンくんを
(君は、誰だ……?)
「まだあなたは死ぬべきじゃなかった。残された運命をつかって、わたしの意識を過去に連れていって……」
(過去……?)
「少しだけ、レンくんの無意識を貸りるね」
その瞬間、俺の頭の中に映像が流れ込んできた。
――深海魚と巨人が混じったような、黒い大きな化け物。
――見えない力に吹き飛ばされる大人たち。
――叫びながら、白目をむいて倒れていく子どもたち……。
そこでプツンと映像が切れた。
☆★☆
気づけば、とても寒い場所にいた。
(うわ、寒っ!)
「おぎゃあ、おぎゃあ!!」
あれ……?
「おぎゃーっ!!」
(声が出ないぞ。てか、目が
あれ、あれ?
状況がつかめないでいると、ふわりとした温かいものが俺の
「おぎゃあ……」
(気持ちいい……)
タオルケットのようだ。
ふかふかしてて、とても安心する。
でも、なんだろう、この感覚。
体全体がゆらゆらと揺れて、まるで空を飛んでいるみたいだ。
(天国にのぼっているのかな……)
「おぎゃあ……」
何か大きなものに抱き上げられているような心地よさを感じる。
そうこうしていると。
「おめでとうございます。1989年7月1日午前8時32分、元気な男の子ですよ」
(1989年……? 聞き間違えた……? てか、俺何年か寝てたの?)
だが、そのとき、聞き覚えのある声がした。
「
(あ……)
昔、毎日聞いていた声だ。
そして、今はもう聞けなくなってしまった声。
「
「はい」
そして、俺の
「ふふ……。蓮くん、これからよろしくね」
(母さん……)
それは、俺が27歳のときに交通事故で亡くなった母さんの声だった。
(夢なの……? でも……)
あまりにも懐かしくて。
幸せになれなかったことが申し訳なくて。
「おぎゃあ、おぎゃあぁぁぁぁ……!!」
俺は、大きな声で泣いてしまった。
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