天才魔彫師イールは武器だけじゃなくて生活用品も作りたい。
ヒデ◎
第1話 魔彫師イールは刀は好き。
刀って良いよね。
薄く研がれた刃は触れたものが切れたことに気付かないままポトリと下に落ちてしまう。
腕のある人間が持てば切れないものは何もないと言われても納得してしまうほどの存在感は他の武器には無いだろう。
装飾は入れられないことはないけど最低限の備えであっても美術品としての美しさを兼ね備えている上に同じものは2つと無い。
美しさと状態で価値が変わるが使えば研ぐ必要があるわけで使うと価値が下がってしまう。
美しいものは使わないのか自慢の刀で敵を討つのか持ち主の好みで使い方も変わる。
やっぱり実用的なのが良いんじゃ無いかなあ。
「イール、雑念入るぞー」
あ、いけない。
研師のおっさんに怒られて我に帰る。
深呼吸して無心になる。
無になった後は茎(なかご)に魔法陣を彫り込む。
魔法陣彫刻師は様々なものに魔法陣を彫る仕事である。
鍋ややかんに火属性の魔法陣を彫って保温や加熱をできるようにするとか
水属性を彫れば水が湧いてくるので水差しに彫り込むとか
生活が便利になるため需要が高い。
しかし魔彫師は非常に貴重な存在である。
まず彫る技術。書いても効果はあるが何かの弾みで消えた場合、効果が無くなるだけならいいが暴発する可能性がある。
そして得意な魔法があってはいけない。
火属性が得意な人間は火属性のものは作れても他の属性のものは作れたとしても効果が薄いか火の影響を受けてしまう。
組み合わせたものを作る分には良さそうだがバランスが測れないためよほど器用じゃないと無理なのである。
名の知れた魔彫師は魔法が使えないというのが常識である。
というわけで手先がめっちゃ器用以外特徴のない俺は魔彫師は天職なのであった。
魔法を使って戦ったりすることに憧れがないわけではないけど、飯に困ることはないから村から出る事もないだろう。
基本的に生活用品に彫ることが多いけど武器屋で要望があれば鍛治氏のところで掘り込むこともある。
しかも今回は刀鍛冶。
刀は好きなのでテンションが上がってしまう。
非常に強力な武器であると同時に手がかかる高級品。しかもそれに魔法を入れたいとはよっぽど強い人か金持ちなんだろうなー
ああまた雑念が…
えーと希望は中威力の雷系でできるなら火と水も入れて欲しいと。
贅沢な仕様だなあ。
無心無心。
全ての基本形である円は描いたから中を丁寧に彫らないとね。
下書きはしない。
何故か効果が薄れる気がするんだよね。よくわからないけど。
さて、始めますか。
朝から初めて夕方になる頃完成した。
どうやって使うのかな?
先っちょからビリビリする熱湯をぶっかけるのかな?
一応できるけど。
水蒸気爆発も可能か…
全部のせの装飾品が一番しっくりくるなあ
彫ってる時は集中してるからいいけど
落ち着いてから考えるとちょっと切なくなる。
とはいえ使えないと意味がない。
どんな要望でも手を抜かず最大の効果が出るように、魔法陣の中の構成を作り込んでいる。
「この世界」の魔法陣は上下に隙間のある円の中に火/土/風/水/雷/無/その他のそれぞれの記号で構成されている。
基本的には円の中に1つの記号。複合魔法を使いたい時は複数の記号を入れていく。上下に隙間があるのは一筆書きのように魔力を流すから。円の始点から魔力を入れて記号へ流し逆側の円の終点から道具や武器に魔法が付与されるイメージ。わかるかな?
ここからは習ってないからオリジナルなんだけど
魔力が入りにくい順番で入れ込んでいくと使いやすく暴発しづらいものができる。
属性と強度、その他の属性の特質などを理解してないと難しいんだけど。
記号だけ入れる場合は使用者がその威力に応じた任意の魔法を使えるけど、用途が限られた魔法を付与されたものはそれしか使えないわけで魔力の通りは悪かったりする。
例えば凄い雷属性よりも水が湧き出す魔法の方が魔力が入りにくかったり。
あとは組み合わせの相性で決めたり好みが聞けるならそれに沿ったものにしたり?
根幹がオタクだから凝り始めたら止まらない性格なのでござる。フヘヘ。
あ、言い忘れてたけど私転生者です。
とはいえ2〜3回分の違う世界での前世の記憶があるだけだから転生と言っていいのかはわからん。
その中にスマホとか使ってた日本の記憶もあるので一応転生者って言った方がわかりやすいかなと。
閑話休題。
魔法の才能は皆無だけど魔力は一応あるので魔力の循環なんかをしっかりみっちり訓練して魔力の通りやすさなどを認識できるようになったのでそれで確認しております。
これは違う世界での記憶だから黙ってる。
だって小さい頃道具触って魔力流して効果が出たら効果から魔力吸収できるって言ったら医者に連れてかれたんだもの。変なこと言い出したから心の病かもってさ!健康体の人間に心の病のお薬は色々大変だからみんなは気をつけて!
この文明だから効果はそこそこだったのは幸い。
でも修理依頼をこの要領で詰まりをとって終わりみたいなこともできるよ!だから本当だよ!
鞘師のおっさんの前に刀鍛冶のおっさんに渡して
確認してもらう。
オッケーらしいのでそのまま作業を進めて今日中に納品するらしい。おっさんたち頑張れ。
研師のおっさんと俺は帰れる。
刀鍛冶のおっさんは鍛冶場の長みたいなものなので残ってないといけない。
頑張れ。
帰ってご飯食べて寝よーっと
この世界の酒は悪酔いするんだよな…
都会には蒸留酒あるらしいからハイボール飲みたいんだけど…
まあ明日も頑張らんば。
明日は一旦刀鍛冶のおっさんのところ行ってどうだったか聞いたら生活用品に彫り込む作業かな?
武器は滅多にないからねえ。
そんなこんなでイール青年はこの村で生涯魔彫師として嫁(予定)と子供(予定)と家族仲良く(予定)幸せ(予定)に暮らしましたとさ。
とっぴんぱらりのぷう
とか言っといて翌日。
刀鍛冶こおっさんにお茶を出してもらいながら(道具はほぼ俺関わってる。っていうか普通のやつに彫らされたもの多数)昨日の様子を聞いた。
なんか使いの人?がきて刀確認したらびっくりした顔して急いで帰ってったらしい。
お金は忘れずに払ってったらしいけどおっさんに失礼じゃない?ぷんぷん。
次の瞬間ドーン!と扉を開く音。
「この刀に魔法陣彫ったのは誰だあああぁぁぁぁAhhhhhhh!!!!!!!」
怒鳴り込んできた綺麗な女性。ハイテンション。多分依頼主が怒鳴り込んできたところから、この物語が始まる。始まってしまう。
平和に暮らしたいのになあ。
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