チート持ちの激強転生者。「そんな事より、一杯飲まないか」名誉や賞賛より、彼が求めるは至福の一杯
Gai
第1話 とりあえず、登ろう
「なっ、あっ…………」
冒険者、という簡単な仕事であれば街中での労働作業を行い、難しい仕事であればモンスターという人間ではない異形の存在と戦い……時には同じ人間でありながら明確に悪人と分類される存在、盗賊と戦う。
そんな職業に就いている青年、マルカス・ナバーム。
彼は、ある山のところで、複数体の亜竜……ワイバーンと呼ばれるモンスターの死体が転がっている場所に、一人の男が石に座っている光景を見た。
「ん? あぁ、君か。どうだ、一緒に一杯飲まないか?」
男の名は、コウキ
正式な名は神崎嵩希……この世界に転移した、異世界転移者である。
そんな彼こそが、ワイバーンという名の亜竜を複数体……一人で殲滅させた冒険者。
男は殺伐とした光景の中で、優しい笑みを浮かべながら、マルカスに一緒に一杯飲まないかと……コーヒーを差し出した。
「ここは……どこだ?」
日本人の大学生として生活を送っていた彼は、自身の身に起きている現状を飲み込むのに時間が掛かっていた。
嵩希は、自分が死んだと思っていた。
登山サークルの仲間が落下しそうになったところを助け、自身が落下。
当時の痛みも覚えており、意識がなくなっていく感覚も覚えている。
そこから目覚めたとなれば、場所は天国らしき場所? もしくは、病院の中である。
しかし、目覚めた場所はそれらではなく、森の中であった。
「夢……夢? 夢にしては……うん……うん…………うん、リアルだよな」
傍にある木々の感触に、地面の感触。
自身の頬を抓った感触……痛み、どれも非常にリアルである。
「夢じゃない……夢じゃないとしたら、ここはどこなんだ?」
生きているのかもしれない。
だが、自分が今どこにいるのか解らなければ、行動することが出来ない。
「待てよ。そういえば俺の服…………登山用の物じゃなくなってる」
自身が身に付けている服が変わっていることを把握。
更に、今更ではあるがサバイバルナイフではなく、確実にそれよりも大きい得物が腰に携帯されていることに気付く。
「…………ナイフ、じゃなくて。短剣……ってやつ、か?」
刃の長さ的に、明らかに使用したことがあるナイフよりも長い。
自分の現状が、明らかに訳解らなさ過ぎる状況に頭が混乱するも、嵩希の眼に……一つの山が映った。
「………………とりあえず、あの山に登ってみるか」
距離はそれなりにある。
水がないという恐ろしい状況ではあるが、一先ず進むしかない。
だが、嵩希は数分後に、更に恐ろしい状況に遭遇する。
「ゲギャギャ」
「人間……じゃない、よな」
遭遇したのは、一メートルほどの大きさしかない、薄緑色の小鬼。
(もしかして、ゴブリンってやつ、なのか?)
頭が更に混乱する中、嵩希の表情から自分に対して怯えていると判断した小鬼……ゴブリンはニタニタと笑みを浮かべ、勢い良く襲い掛かる。
「っ!!!!???? えっ」
何とかしなければならないと思い、とりあえず携帯されていた短剣を抜いたが、当然ながら肉を捌くためにナイフを使った経験はあるが、生物を殺す為に振るったことはない。
だが……気付いた時には、一撃でゴブリンの首を刎ね飛ばしていた。
「…………これ、俺が……やったのか?」
確かに自分は動いた。
しかし、短剣の扱いなど習ったことがない自分が、先程の様な動きを出来る訳がない。
そう思った時、嵩希の頭に……指示の様なものが脳内に浮かんだ。
(す、ステータス?)
思い浮かんだ内容通りのことを念じると、嵩希の前に一つのウィンドウが浮かび上がる。
「おわっ!!! な、なんだこれ……………………俺の、ステータスってやつなのかな」
名前の欄にはコウキと記されており、年齢は……十五歳と記されていた。
「えっ…………なんで?」
コウキこと嵩希は大学生であり、お酒も飲める年齢に達していた。
なので、十五歳というのはあり得ないが……自身の体をぺたぺたと障り、妙に納得がいった。
「確かに、ちょっと身長が縮んでるか……それで、えっと…………なんだこれ」
本日、何度目になるか解らない疑問が零れる。
スキル欄という場所には、こういった事に詳しくない嵩希であっても、ふざけていると……所謂、チートであろうと思われるスキル名が記されていた。
戦闘センス・極み
魔術センス・極み
製作センス・極み
鑑定・極み
アイテムボックス・極み
鑑定阻害・極み
………………
…………
……
といった感じで、多くの極みと付いたスキル名が記されていた。
「…………ちゃんと理解した方が良いよな」
ゴブリンの死体から離れ、一度自身が有しているスキルがどういったものなのかを把握することにした。
「まぁ……とりあえず生きられる、ということか」
魔術センス・極みのお陰で、嵩希は魔力という力を消費することで水を生み出すことが出来る。
その水を飲み水として使用することが可能。
加えて、ネットスーパーというスキルのお陰で、お金を消費して嵩希が生きていた世界の食材や道具を購入することが出来る。
そのお陰で、そもそも水不足や食料不足で死んでしまうということはない。
(残高が四百万……っていうのは、もしかして大学の学費かな?)
残高欄に記されている金額。
そして、全く知らない生物が存在している……おそらく、自分が生きていた世界とは異なる世界。
そこから、自分が有している大量のスキルなどは、誰かが恵んでくれた者ではないのかと推測。
「ってなると……そうだよな……………………はぁ~~~~~~~~~~~」
推測が本当であればあるほど、自分が死んだということを自覚する。
恋人こそいなかったが、家族仲が良好であり、登山サークルのメンバーとの中も良かった嵩希としては、やはり心に来るものがある。
「…………………………そうだな。とりあえず、山に登ろう」
直ぐにもう会えないであろう者たちへの想いは消えない。
それでも、男はまずは山に登ろうと決めた。
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