京都花影抄
志乃原七海
第1話緋色の絞りと偽りの名匠 -
京都花影抄 - 秘められし伝統の闇 -
第一話 京友禅に散る紅涙 - 緋色の絞りと偽りの名匠 -
序章:雨中の工房
梅雨時の京都は、今日も朝から霧雨が煙り、その気配は容易に晴れそうにもなかった。古都の風情をいや増す湿気は、しかし、佐藤菜々美の取材ノートを握る手に、じっとりとした不快な感触を残したまま離れない。フリーライターである彼女は今、京友禅の老舗「錦染苑(きんせんえん)」の門前に立っていた。創業二百年を誇るこの工房は、伝統に胡座をかくことなく革新的な作品を生み出すことで知られ、その当代随一と謳われる名匠・綾小路雅山(あやのこうじ がざん)は、菜々美が手掛ける特集記事の成否を握ると言っても過言ではない人物だった。
「おはようございます、佐藤です」
工房の事務所に声をかけると、奥から雅山の娘であり、自身も新進気鋭の友禅作家として注目される綾小路香織(あやのこうじ かおり)が姿を見せた。三十代半ばとは思えない肌の白さと、どこか憂いを帯びた涼やかな目元が、見る者の心を捉えて離さない。その佇まいには、容易には内をうかがわせない、深淵を覗くような危うさが漂っていた。
「佐藤さん、お待ちしておりました。父は既に、染色場におります。…一度あそこへ入ると、なかなか戻ってこないものですから」
香織に促されるまま、工房の奥へと足を進める。石畳の中庭を抜けると、染料の独特な匂いと、布を蒸す湯気が立ち込める染色場が見えてきた。そこには、白い作業着に身を包んだ綾小路雅山が、外界の音など一切遮断したかのように、巨大な反物に向き合っている姿があった。六十代後半とは信じられないほど背筋は伸び、その眼光は、まるで獲物を狙う獣のように、一分の隙も見せず友禅の筆を運んでいた。その仕事ぶりは、一種侵しがたい神域のようでもあった。
「父は一度作業に入ると、周りの声など、まるで届いていないかのようです」
香織が力なく笑いながら言う。その横顔には、父への畏敬と、どこか諦観にも似た感情が滲んでいないでもなかった。雅山の手から生み出される色彩の洪水は、まるで男の魂そのものが奔流となって反物の上で踊っているかのようだ。人間国宝に最も近いと囁かれる男の技とは、こういうものなのか。…疑う余地はなかった。
取材は数日にわたって行われた。雅山は多くを語ることはなかったが、友禅への執念、伝統と革新への渇望を、時折見せる射るような視線の奥に隠してはいなかった。菜々美は、彼の言葉の端々から、その孤高の魂の奥底に触れようと試みたが、その全貌を掴むことは容易ではなかった。
最終日の朝。菜々美が錦染苑を訪れると、いつもとは明らかに違う、息を詰まらせるような空気が、工房を支配していた。香織が蒼白な顔で出迎えた。その瞳は潤み、何か恐ろしいものを見たかのように、焦点が定まってはいなかった。
「佐藤さん……父が、父が……」
その声色に、菜々美は、この古都の静寂を破る、抗いようのない何かが起きたことを悟らざるを得なかった。
第一章:緋色の凶兆
染色場は、いつもと変わらぬ染料の匂いに満ちていたが、そこに雅山の姿はなかった。代わりに、床に、まるで打ち捨てられたかのように人影が横たわっていた。その周囲には、異様なほど甘く、そして微かに鉄錆のような匂いが漂い、菜々美の嗅覚を不穏に刺激して離さなかった。
「雅山先生っ!」
菜々美の声は、張り詰めた静寂の中で、かろうじて音になったに過ぎなかった。
白い作業着は不自然に乱れ、その首筋には、細い布で獣のように絞め上げられたのではないかと思わせる、赤黒い鬱血の痕が、見る者の目を背けさせずにはおかないほど生々しく残っていた。雅山の目は、もはやこの世の何物も映してはいない虚空を見つめ、その傍らには、彼が精魂込めて制作していたはずの最高傑作の振袖の一部が、何者かの悪意によってか、見る影もなく引き裂かれ、床に散らばっていた。
そして、菜々美の目を釘付けにしたのは、雅山の冷たくなった手のすぐそばに、まるで禁断の儀式に捧げられたかのように置かれた一枚の布切れだった。それは、まるで男の流した血そのものを染め上げたかのような、禍々しいまでに濃い緋色の絞り染めの布で、工房の他のどの色とも調和してはいないばかりか、この世のものとは思えないほどの異様な存在感を放っていた。
すぐに警察に通報され、ほどなくしてサイレンの音が近づいてきた。現れたのは、京都府警捜査一課の葛城(かつらぎ)と名乗る、四十代後半の警部だった。鋭く、どこか獰猛さすら感じさせる目つきで現場を見渡し、部下に無駄のない、それでいて有無を言わせない指示を飛ばす。その眼光は、古都の伝統という名の厚いベールを容赦なく引き剥がし、その奥に隠された真実を暴き出そうとするかのように鋭利で、感情を読み取らせることは一切なかった。
「あんたは?」
葛城の視線が、茫然と立ち尽くす菜々美に向けられた。その声は低く、相手の腹の底まで探るような響きを持っていた。
「フリーライターの佐藤です。数日前から錦染苑の取材を……」
「部外者はあちらへ。ここはあんたが嗅ぎ回っていい場所ではない」
葛城は事務的な口調で菜々美を下がらせようとする。その言葉には、微塵の配慮も感じられなかったが、菜々美は反論する気力もなく、おとなしく距離を取るしかなかった。しかし、この異様な現場から目を逸らすことは、どうしてもできなかった。これは単なる殺人ではない。もっと深く、暗く、そして抗い難い何かが、この伝統という名の工房の奥底に潜んでいるのではないか。その疑念が菜々美の心から離れなかった。
鑑識作業が進む中、番頭の藤代宗也(ふじしろ そうや)が駆けつけた。普段は実直さを絵に描いたような男の顔が、今は言葉では言い表せないほどの驚愕と、まるで己の罪と向き合うかのような苦悶に歪んでいた。
「旦那様が……なぜこのような……信じられません……あり得ないことです……」
藤代は、雅山に長年仕えてきた古参の番頭で、工房の内部事情に最も通じている人物の一人と言って過言ではなかった。彼の動揺は、尋常ではなかった。
葛城は香織と藤代から事情聴取を始めた。その詰問は、容赦がなかった。
「綾小路雅山に恨みを持つような人物に心当たりはないか? 些細なことでも構わない」
香織はか細く首を横に振る。「父は仕事一筋の人でした。誰かにそれほどの恨みを買うようなことは……私には思い当たる節がございません」その声は震えていたが、瞳の奥には何かを隠しているような光が揺れていないでもなかった。
しかし、藤代は少し言葉を濁した。その目には、何か言い知れぬ怯えの色が浮かんでいないか。
「旦那様は、その…職人としては超一流でいらっしゃいましたが、妥協というものを一切知らない方で、時に人を寄せ付けない厳しさもおありでした。特に、作品のこととなると、神懸かり的なまでの集中力で、一切の妥協を許さなかった。ですから、反発を覚える者が皆無だったとは……言い切れないかもしれません。…しかし、これほどの事態に至るとは…」
葛城の目が鋭く光る。その視線は、相手の心の壁を突き破ろうとするかのようだった。
「工房内で、後継者争いのようなものはなかったか? 男たちの嫉妬や野心が渦巻いていなかったと、本当に言い切れるのか?」
香織が顔を伏せる。その白い首筋が、妙に艶めかしく見えたのは気のせいだろうか。
「それは……私と、数名の弟子たちの間で、いずれ誰が錦染苑を継ぐのかという話がなかったわけではございません。でも、父を殺めてまで……そのようなこと、考えられません」
藤代も頷く。「確かに、香織お嬢様や若手の有望な弟子たちの間で、旦那様の技を継ごうという、ある種の闘争心のようなものはございました。しかし、それがこれほど禍々しい殺人に繋がるほどの確執があったとは……私には到底思えないのです」
鑑識官の一人が、葛城に何かを報告した。葛城の表情がさらに険しさを増す。
「被害者の首を絞めたと思われるのは、友禅の染色工程で使う、目の細かい絹の布だ。そして、この緋色の絞り…我々が錦染苑で目にするものとは、どこか趣が異なるとは思わないか? これは尋常なものではない」
鑑識官がピンセットでつまみ上げた緋色の布は、雅山が用いる繊細な友禅とは明らかに異質で、もっと原始的とも言える力強い、そしてどこか呪術的な絞りの技法で染められたものではないかと見受けられた。その色は、まるで血の記憶を呼び覚ますかのようだった。
「この布切れ、どこかで見た覚えはないか? 男の持ち物か、女の持ち物か、それすらもわからないか?」
葛城の問いに、香織も藤代も首を傾げるばかりで、明確な答えは返ってこなかった。
「いいえ、このような強烈な緋色の絞りは、うちの工房では通常使いませんし……父の作風とも異なるように思います。見たことがないものです」と香織は答えたが、その声には確信が伴っていなかった。
菜々美は、遠巻きながらもそのやり取りを聞いていた。緋色の絞り染め…。それは何を意味するのか。犯人が残した、何かの挑戦状なのか。それとも、そこには言葉では語られない、人間の業と情念が絡み合った、より深い因縁が隠されているのではないか。
第二章:偽りの名声と影の存在
数日後、菜々美は独自に調査を始めていた。雅山の死は、京都の伝統工芸界に大きな衝撃を与え、様々な憶測が、まるで瘴気のように飛び交ったが、そのどれもが確証を得るには至らなかった。そんな中、菜々美はある禁断の囁きを耳にする。
「綾小路雅山ほどの大家になると、全ての工程を一人でやるわけではない。下絵や一部の染色を弟子に任せるのは珍しい話でもない。だが、雅山先生の作品の中には、ほとんどゴーストライターならぬ『ゴースト染師』が手掛けたものもあるんじゃないかってね…それは業界では公然の秘密、触れてはならない領域だったのさ」
そう語ったのは、雅山とは別の工房に属する古参の職人だった。その目には、羨望と、どこか軽蔑の念が宿っていないでもなかった。
「もちろん、確たる証拠があるわけではない。だが、あそこまで多作で、しかも常に高い水準を保てたのは、影で支える何者かの存在なしには、あれほどの仕事は不可能だったのではないかと囁く者は、決して少なくなかった。その影の存在は、雅山の光が強ければ強いほど、濃くなっていったんだ」
菜々美の胸に、その言葉が棘のように刺さって抜けなかった。もし本当に「ゴースト染師」が存在したなら、その人物は雅山に対して、愛憎入り混じる複雑な感情を抱いていないはずがない。搾取され、その才能を食い物にされていたとすれば、それは雅山への底知れぬ憎悪となり、殺意を抱かせるに十分な理由となり得るのではないか。
菜々美は再び錦染苑を訪れた。香織は目に見えて憔悴していたが、それでも気丈に工房の日常を絶やさないよう努めているのが痛々しいと同時に、その芯の強さがどこか男心を惹きつけてやまない何かを感じさせた。
「香織さん、お父様の作品について、何か気になることはありませんでしたか? 例えば、特定の時期の作風が微妙に違ったり、お父様ご自身が手がけていないような、どこか異質な気配を放つ作品があったり…」
菜々美の問いに、香織は言葉を探すように視線を彷徨わせた。その潤んだ瞳が、何かを訴えかけているようにも見えなくない。
「父の作品は、全て父の魂が込められたものだと信じています。ですが…」
香織は少し言い淀んでから続けた。その声は、まるで秘密を打ち明けるかのように微かだった。
「数年前、父が体調を崩した時期がございました。その頃の作品は、どこか…いつもの父の力強さとは言い切れない、まるで別の人間が描いたかのような繊細さと、ある種の…そう、まるで女性の手によるのではないかと思わせるような、官能的とすら言える優美さを感じるものがあったような気がしてならないのです。父は『新しい境地だ』と申しておりましたが…私には、それが父自身の言葉とは思えなかった…」
その時、工房の隅で古い資料を整理していた藤代が、ふと顔を上げた。その顔には、何かを知っていながら語れない苦悩が刻まれていた。
「旦那様が体調を崩された時期…確かにございました。あの頃、旦那様はほとんど染色場にはお立ちにならず、書斎に籠もっておられましたな。それでも、素晴らしい作品が次々と完成していった。我々も、旦那様の卓越した指導力があってこそと信じて疑いませんでした…あの時までは、何も知らなかったのです。知ろうともしなかった…」
藤代の言葉は、どこか歯切れが悪く、全てを語っているようには聞こえなかった。その瞳の奥には、深い後悔の色が滲んでいないか。
菜々美は、錦染苑の周辺で聞き込みを続けるうちに、ある若い男性の存在に辿り着いた。名は橘蒼太(たちばな そうた)。数年前まで錦染苑に籍を置いていたが、詳しい理由も明かさないまま、まるで何かに追われるように忽然と姿を消したという。そして、事件の数日前から、工房の周辺でその姿を見たという者がいないでもなかった。その影は、不吉な予感を伴っていないだろうか。
「橘君は…本当に才能のある子でした。…ありすぎるほどの」
かつての同僚だった職人は言う。その声には、羨望と畏怖が混じっていないだろうか。
「特に絞りの技術は天才的で、雅山先生も、その才能には一目置かざるを得なかったはずです。いや、あるいは…嫉妬すら覚えていたのかも知れません。ですが、ある時からふっつりと精彩を欠き…雅山先生との間に、我々の知り得ない、何か決定的な亀裂が生じたのかも知れません。それ以来、彼の笑顔を見ることはありませんでした。まるで魂を抜かれたかのようだった…」
菜々美は、あの異様な緋色の絞り。それが橘蒼太と無関係であるとは、どうしても思えなかった。彼の、常人離れした絞りの技法、そして錦染苑を去った理由。そこには、事件の真相を解き明かす鍵が、まだ誰にも知られずに眠っているのかも知れない。そしてその鍵は、血塗られた過去へと繋がっているのではないか。
第三章:揺らぐ証言と新たな疑惑
葛城警部もまた、橘蒼太という存在に辿り着いていないわけではなかった。彼を重要参考人として行方を追っていたが、蒼太は警察の追跡をまるで嘲笑うかのように巧みにかわし、その手がかりは容易には掴ませなかった。まるで闇に溶け込む術を知っているかのようだった。
警察の捜査が進むにつれ、綾小路雅山の「完璧な名匠」という表の顔は、決して一枚岩ではなかったことが露わになりつつあった。複数の弟子たちから、雅山の神のごとき厳しさや、時に理不尽とも思える要求についての証言が得られた。それは、凡人には理解できない、天才ゆえの孤独と狂気を孕んでいたのかもしれない。しかし、それらが雅山を死に至らしめるほどの強い動機となり得るとは、誰も断言できなかった。
そんな中、鑑識から新たな報告が上がる。それは、事件の様相を一変させる可能性を秘めていないでもなかった。
「雅山氏の作業着のポケットから、ごく微量ながら、錦染苑では通常用いられることのない特殊な染料の粉末が検出されました。これは、ある特定の個人工房でしか使われていない、まるで秘薬のように門外不出とされてきた調合によるもののようです。その色は…まさにあの緋色を生み出すものではないかと」
その染料は、非常に鮮やかで深い緋色を出すことで知られていたが、その製法は固く秘され、外部の者が知ることはまずあり得ないとされていた。それは、血の盟約にも似た、禁断の知識だった。
菜々美は、その染料について調べていくうちに、橘蒼太が錦染苑を去った後、その門外不出の緋色を扱う、とある小さな工房に、誰にも知られずに出入りしていたという情報を掴んだ。まるで、己の運命に導かれるように。そして、その工房の主こそ、かつて雅山と袂を分かち、以後、二度と交わることのなかった元弟子だったという事実は、菜々美の予感を、もはや否定しようのない確信へと近づけずにはおかなかった。
「橘君が、雅山先生を…?」
香織は言葉を失い、ただかぶりを振るばかりで、その事実を受け入れられない様子だった。その細い肩は、頼りなく震えていた。
「あの子は、父の才能を心から尊敬していました。父も、蒼太君の才能を認めていたはずです。…少なくとも、表向きは。確かに、何か誤解やすれ違いはあったのかも知れません。でも、だからといって、父を手に掛けるなど…そんなこと、あっていいはずがないのです。信じたくない…」
菜々美は、藤代にもう一度話を聞いた。彼の目には、もはや隠し切れない苦悩が浮かんでいた。
「藤代さん、橘蒼太君が工房を辞めた本当の理由を、ご存知ではないのですか? そして、あの緋色の絞り染めの布に、何か心当たりはないのでしょうか? あなたは何かを隠してはいませんか?」
藤代は長い沈黙の後、まるで重い十字架を下ろすかのように、これまで誰にも語ることのなかったであろう言葉を紡ぎ始めた。その声は、絞り出すようだった。
「…蒼太君は、おそらく、才能に恵まれすぎていたのやも知れません。彼の絞りの技は、時に旦那様の作品をも凌駕するかのような、目を瞠るほどの輝きを放っておりました。…それは、師にとっては許し難いことだったのかもしれない。旦那様は、心のどこかで、その才能を…自身の地位を揺るがしかねないその輝きを、恐れていたのではないかと…そう思えてならないのです。そして、その恐れは、やがて憎しみへと変わっていったのではないかと…」
そして、絞りの布について尋ねると、藤代は顔を曇らせ、遠い目をした。
「あの緋色の絞りは…昔、旦那様がまだ若く、名を上げる前の修行時代に、ある女性から贈られたものとよく似ていると、古参の者から聞かされたことがございます。その女性は、旦那様にとっては生涯忘れられない、魂を焦がした存在であったと。しかし同時に、あの緋色の絞りは、決して幸せとは言えない、血を分けたような愛憎の果ての別れを象徴するものでもあったと…詳しくは、私も存じ上げないのですが。それは、触れてはならない記憶だったはずです」
緋色の絞り染め。それは、封印されたはずの過去の愛憎を呼び覚ます、禁断の鍵だったのではないか? そして橘蒼太は、その誰も触れてはならなかった、血と情念に染まった過去と、いかなる繋がりを持っていたというのか?
事件は、雅山の個人的な怨恨という単純な構図ではなく、錦染苑、いや、京友禅という伝統世界の奥深くに潜む、容易には解きほぐせない人間関係と、才能を巡る底なしの闇、そして男と女の業が絡み合う、抗い難い運命の渦へと、菜々美を引きずり込もうとしているかのようだった。
雨は、まだ止む気配を見せない。
工房の片隅には、誰の手も加えられないままの白い反物が、まるで次なる悲劇の訪れを、声もなく待ち続けているかのように、静かに横たわっていた。菜々美は、この事件がこれで終わりではないことを、そしてまだ本当の闇には触れてすらいないことを、全身で感じ取らずにはいられなかった。その闇は、あまりにも深く、そして甘美でさえあった。
(つづく)
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