第25話 教室で密着
流華の提案の後。正章は受け入れた。付き合いを認めた。
しかし、いつもと変わったことはなかった。特に起こらなかった。流華からのアクションもなかった。
1日が経過する。いつも通りの早朝。学校に登校する。普段通りの景色が見える。
流華は先に登校していた。席に座っていた。いつものように本を読んでいた。
流華は彼氏を認識する。立ち上がる。移動する。隣の席に座る。
「おはよう」
流華は朝の挨拶をする。
「お、おはよう」
正章も挨拶を返す。
流華が彼女だと考える。非現実だと感じる。幻だと疑ってしまう。
「これ。面白いから貸してあげる」
流華は先ほどまで読んでいた本を差し出す。
「ありがとう」
正章は受け取る。
「すぐに読んで欲しい」
「急だね」
「お願い」
正章は受け取った本を開く。読み始める。文章を追う。
「…」
流華はイスを動かす。正章に寄る。本を覗き込む。
「ごめん。ちょっと読みにくいんだけど」
正章は気が散る。不満を伝える。
「私も内容が気になるから」
「じゃあ一旦返すよ。俺は後からでいいから」
正章は本を閉じようとする。
「ダメ。私はこうやって読みたい」
流華は制止する。閉じる本の間に手を挟む。
「えぇ。じゃあどうしたら。このままだと読む気にならないよ」
「じゃあ。これならどう」
流華は身体を密着させる。ゼロ距離になる。手や足などが触れ合う。流華の香りが正章を包む。
「ちょ!? ち、近いって! 」
正章は驚く。動揺する。女子の柔らかさを感じる。心臓が跳ねる。
一方、クラスメイト達も驚く。注目する。
その1人に木下も含まれる。
「…これなら読みにくさが軽減するでしょ」
流華は閉じた本を開く。読み終わりページをめくる。
「ちょっと読みにくいかも。席半分貸して」
「は? 」
「いいから」
流華は返事を待たない。許可を得ない。正章も動けない。
流華は強引に正章からイスの半分を奪う。正章は追いやられる。2人でイスをシェアする。
「これで見やすくなったかも」
流華は満足する。読書を始める。文字を目で追う。
正章は読書に集中できない。それどころではない。密着、温もり、柔らかさが頭から離れない。
クラスメイト達は釘付けになる。一部は嫉妬する。一部は熱狂する。注目の的になる。
波乱の朝が始まる。
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