第9話 感想の共有

 正章は普段通りに登校する。決まった時間に教室に入る。進む。自分の席に座る。


 カバンを開く。教材を取り出す。机に仕舞う。


「大浦君」


 流華が隣の席に座る。視線を向ける。声を掛ける。


「高嶺さん」


 正章は呟く。内心ではドキッとする。驚く。緊張する。


「どう? ラノベ全部読み終わった? 」


 流華は尋ねる。見つめる。様子を窺う。


「き、昨日のうちに読んだよ」


 正章は返答する。拙くなる。固くなる。


「そう。どうだった? 」


 流華は感想を尋ねる。求める。聞き出そうとする。


「面白かったよ」


 正章は端的に感想を答える。絞り出す。共有する。


「そう。どういうところがよかった? 」


 流華は続けて尋ねる。深掘る。具体性を求める。


「えっと。そうだな〜」


 正章は回答に困る。悩む。ラノベのストーリーを思い返す。脳内で再生される。


「…もしかして。面白くなかった? 」


 流華はボソッと呟く。普段のクールな表情を浮かべる。僅かに正章から視線を逸らす。下を向く。沈んだように見える。


「そ、そんなことないよ」


 正章は訂正する。フォローを試みる。頭を巡らせる。


「なら教えて。何が面白かったか」


「えっと。ざまぁというか復讐劇が爽快で面白かったよ! 読んでてスッキリした!! 」


 正章は具体的な感想を答える。展開する。流華に伝える。


「そう。なら良かった。…分かる」


 流華は視線を上げる。正章に向ける。小さな声で同調する。僅かに頬が緩む。感情が顔に浮かぶ。


「そうなんだ」


 正章は相槌を打つ。


 2人の間で静寂が生まれる。無言を貫く。目を合わせる。


「他にはない? 記憶に残ったシーンとかない? 」


 流華は感想を求める。違う切り口から求める。話題を発展させようとする。


「記憶に残ったシーン。ちょっと考えさせて」

 

 正章は今度は時間を貰える。猶予を貰う。考える時間を欲する。


「そう。構わない」


 流華は了承する。正章を無言で凝視する。待機する。


「くそ〜。どうして。どうして! 高嶺から話し掛けるんだ。あの陰キャに! 俺なんか相手にすらされないのに」


 木下は悔しそうに文句を言う。正章と流華を視界に収める。顔を歪める。嫉妬する。


 正章と流華は会話を交わす。ラノベに関する感想を共有する。木下の感情を無視する。


「羨ましすぎる! おかしいぞ! 」


 木下は文句を叫ぶ。結構な音量を発する。流華に届けようと試みる。


「…」


 流華は話を中断する。木下に視線を向ける。目を細める。興味を失う。視線を外す。正章に視線を戻す。会話を再開する。依然として対応をキープする。冷たい視線と態度を見せる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る