第5話誇りを刻む刃


 朝日が工房の天窓から差し込む頃、金槌の音が止んだ。


 ティナは無言で、赤い布に包まれた一本の剣をルガの前に差し出す。


「……できたよ。《デュランダル》専用の試作刀。一発の砲撃に耐えられるだけの強度、そして刃の芯に“魔力受容鋼”を仕込んである」


「マジか……見た目は……」


 布を外した瞬間、ルガは息を呑んだ。


 真紅と黒を基調とした刀身、根元に刻まれた“D”のような古代紋。

 ごっこ遊びで落書きしていた、あの“理想の剣”に限りなく近い姿だった。


「……かっけぇ……」


「ふふ、喜んでもらえてよかった。でも、あくまで“試作”。限界はあるからね」


「それでも……俺にとっては、もう十分すぎる。ありがとう、ティナ」


 ルガは腰にそれを下げると、ふいに大地の震動を感じた。


「……今の、何だ?」


 直後、鍛冶屋通りのほうから煙が立ちのぼる。


「街が……燃えてる!?」


 二人は慌てて駆け出した。

 広場に出ると、黒いローブに身を包んだ一団が店を壊し、武器を強奪している姿が目に入った。


「《黒鉄団》……!」


 ティナが呟く。その名はルガも知っていた。

 数年前に滅んだはずの反王国組織。彼らの目的は優れた武器技術の掌握、そして“かつての力”の復活だという。


「こんな時に……!」


 ルガは剣の柄を握り、叫ぶ。


「《デュランダル》、起動!」


 右腕が変化する。魔焔が腕に走り、真新しい剣がうなるように震えた。

 暴徒の一人が気づいて飛びかかる。


「死ねぇぇぇぇッ!!」


「……悪いが、試し斬りさせてもらう!」


 斬撃と共に、赤黒い衝撃波が走った。暴徒は吹き飛び、地面にめり込む。

 剣は──折れていない。砲撃一歩手前の威力にも、耐えられた。


「……すげぇ、これが……俺の《デュランダル》……!」


 ティナが後ろから叫ぶ。


「気をつけて!あいつら、“模倣狩り”って噂もあるの。スキルの力を吸い取る装置を持ってるって……!」


「……だったら、全部ぶっ壊してやるよ」


 ルガの瞳には、燃えるような意志が宿っていた。


「俺は、本物にはなれない。だけど──俺の力を、誇りを、侮辱させやしない!」


 その時、《デュランダル》の刃が微かに光った。

 まるで、主人の意志に応えたかのように。


 街を守る戦いが、始まった。



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