SFミニアチュール——選択の余韻

しおん

第1話 最後の注文

 狭いカウンターの向こうで、ロボットが静かに待っていた。


 この店には昔から通っている。カプセル型のコーヒーをセットし、ボタンを押せば、完璧な温度と濃さの一杯ができあがる。


 雑談は不要、注文も不要。ただ座れば、適したものが提供される、それがこの店のルールだった。


 しかし、今日は違った。


 カウンターのロボットは何もせず、ただこちらを見ていた。


「どうしたんだ?」


 ロボットは静かに答えた。


「あなたの好みが判別できません」


「そんなはずはない。いつも通りでいい」


「いつも通り、が存在しません。あなたの選択は変化しています。最適なものが提供できません」


 何かがおかしい。ロボットは最適な飲み物を出すはずだった。


 もしその「最適」が毎回変わるのなら……


「じゃあ、おすすめをくれ」


 ロボットは一瞬考えたようだった。


「最適なものは、あなたが自分で決めるべきです」


 しばらく沈黙が続いた。


 主人公は席を立ち、カウンターの隅にあるメニューを見る。初めて注文をする。


 ロボットは満足そうに動き出し、コーヒーを淹れた。


 それは、今までで一番美味しい一杯だった。

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