最終章2 ETFファンド発足と波乱の緒戦
アルシャム地方の交易都市に、俺たちは新しい拠点を借りた。
そこで旗揚げしたのが――フェニックス・ファンド。
かつてエリナと俺が立ち上げた商会の名称“不死鳥”を冠して、追い込まれても蘇るという意思を示す。
ETF(Exchange Traded Fund)……現代の俺がいた世界でも使われていた仕組みを、こちらの異世界風にアレンジしたものだ。
要は「出資者が証書を持ち、ファンドが集めた資金を運用し、儲かった利益を皆で分配する」という形。俺たちは“運用担当”になるわけだ。
「えーと、ややこしく聞こえるかもしれませんが、投資家同士で“株”を共同保有するイメージです。だれかが巨額資金を出すんじゃなく、皆さんの小口資金を一つにまとめるわけですね」
説明会でそう語る俺に、集まった商人や冒険者、農民や貴族までもが耳を傾ける。
最初は「詐欺じゃないのか?」とか「ギルドの逆鱗に触れるぞ」とか、いろいろ言われたが……。
「私たちはギルドの利権をぶっ壊したいんです。皆さんが損をしない仕組みで、なおかつ強大な相手に負けない資金を作る。それが、このファンドの目的なんです」
俺が熱弁を振るうと、興味を示す者も多かった。王都やマーリスで俺たちの取引に触れた若者などは「マコトさんなら信じられる!」と熱狂的に参加を表明してくれた。
一方、エリナは出資申し込みのリストをすべて記憶し、「怪しい資金が紛れていないか」をチェック。記憶力がチート級に優秀な彼女が“審査”してくれるので、不正やスパイを弾きやすい。
こうして予想を上回る速さで、フェニックス・ファンドの初期資金が集まっていった。噂が噂を呼び、出資希望者が行列を作る日もあったくらいだ。
俺自身も驚くほどの盛り上がりだが、これはつまり……大口資金が作れる。ギルドに対抗する最初の武器になるわけだ。
分散投資の考え方を説明すると「なんかよく分からないけど凄そうだ!」と賛同する商人は多かった。
実際にエリナが運用アドバイスをし、最初に投資した先物や株式(権利証)が軒並み上がってしまったものだから、「このファンドすげえ」「マコトたち勝てるぞ!」と盛り上がるのも無理はない。
「すごいわ、マコトさん……こんなに早く大きな額が集まるなんて」
「いやエリナ、お前の分析力も凄いからな」
二人で顔を見合わせて苦笑する。いつの間にか、フェニックス・ファンドは“投資の神様”みたいに持ち上げられつつあった。
もちろん実際はそんな簡単じゃない。リスクはあるし、これからが本番だ。
けど、この熱は利用しない手はない。ETFファンドこそ俺たちの逆襲の要……それを自覚して、さらに気合が入った。
運用も一段落した段階で、俺は計画の第一段階として“ギルドの主要品目の売り崩し”を提案した。
ギルドが独占している鉱石・魔法石・高級織物などをまとめて叩くのだ。
例えば、ギルドが高級織物を供給絞って高値を維持しているなら、先物市場でフェニックス・ファンドが大量に空売りをかける。
需給バランスを崩すだけじゃなく、エリナが仕入れた近隣国の“大量生産”情報をリークすれば、織物の値段は一気に暴落するだろう。
「ギルドが必死に買い支えても、こっちの売りポジションが圧倒的なら下落は止まらない。莫大な含み損を抱えることになりますね」
エリナは楽しそうに計算しながら、俺に言った。俺も「悪魔的だな」と苦笑しつつ、背筋がゾクっとする。
それでも、こちらが生き残るには容赦なんかしていられないんだ。
ファンド参加者に呼びかけて一斉に空売りを仕掛けると、すぐに市場から「織物暴落」の悲鳴が上がった。ギルドの大商会は大慌てで対応するが、織物だけじゃなく鉱石や魔法石など複数の商品で同時攻撃したため、相手は防戦一方に。
「くっ……フェニックス・ファンドめ……!」
王都で幹部たちが血相変えてる様子が目に浮かぶ。
ギルド長は「まだ我々には膨大な資産がある。こんなやり方では潰れん」と言い放ったらしいが、着実にダメージは蓄積しているはず。
俺たちの狙いは、そこから内部崩壊を起こすことだ。
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