広いような、狭い世界?

先行き不安な52丁目。

第1話 誕生前の話。

 これは、あるひとりの魂がこの世での修行を決心してからの話。

 おもしろいかどうかはわかりません。


 私の母親は思春期の頃に母(私の祖母に当たる。紛らわしくなるので祖母と呼ぶ。)を亡くし、某映画製作所のロケハンをしている父親(これも紛らわしくなるので祖父と呼ぶ。)と年の離れた弟と3人暮らしだった。

 祖父は家事を一切手伝わない。それどころか祖母がなくなると、通っていた高校を母親本人に相談もせずに退学させてしまった。 

 母親には初恋の人がいてお付き合いもあったそうだが、『初恋の人とは結婚できない』という謎めいた言い伝えを信じてしまい別れてしまったそうだ。

 それからほどなくして、私の父親となる人と海で出会ったそうだ。そして、私を身ごもった。父親が田舎の次男坊だったためか両親からは、「長男が先だ。」と反対された。堕ろすつもりで産科に行った母は医者に「もし、今堕ろしたら次に妊娠はできなくなる」と言われ生むことにしたそうだ。

 1972年、昭和47年は横井庄一が帰還して、連合赤軍あさま山荘事件が起きて、札幌オリンピックが開催され、川端康成が亡くなり、沖縄が返還されるなど様々な出来事があったらしい。

 そんな年、私は母親の腹の中に居座り続けること2週間、予定より遅れて強制誕生させられる。スピリチュアル的にいうと「これから始まる長い長い人間の下積み時代。何が待ち受けているのか?」と、この世界に来ることを不安に思っていたのか?  

 結局、意を決して誰も予測がつかないひとりの人間の歴史の始まりを選択したのである。

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