第3話

「ごめんね、後で話していい!?」

「あっ、こちらこそ、ごめん! そんな軽く聞いていい話じゃないよね」

「いえ、わたしは、片思いなので、本当は自分の気持ちを話していいのか分からないのです」


 ちょっと待て、唯が片想い、と言うのはどう言うことだ。あれだけ可愛いのに、好きだと言ったら断る男なんていないのに!


「兄貴から、直接振られたの!?」

「いえ、そんなことはないですよ。でも、わたしが告白した時、困っておられたようなので、多分無理なのかなって思います」

「うーん、よく分からないけど、そうなのかな!?」


 はあ!? 瑠璃よ、なぜ、そこは強く否定しないのだ。俺の気持ちなら手に取るくらい分かるだろ。


「じゃあ、そろそろ上がりますね」

「ああ、ごめんね。じゃあ、わたし部屋に戻るからね。今、制服洗ってるから、乾かすまで少し時間かかるかも……」

「そこまでしていただいて、申し訳ありません」

「いいって、いいって! それより門限とか大丈夫!?」

「家には一度電話を入れます。友達の家にいるって話そうかと」

「なら、泊まって行ったら!?」

「それは流石に……」


 はあ!? どさくさ紛れになんてこと言ってるんだ。俺はふたりの話を盗み聞きしながら、のたうち回っていた。


「兄貴、お姉ちゃん、もうすぐ上がるって」

「お前、馴れ馴れしいぞ。相澤さんだろ、そこは……」

「硬いなあ、それはそうと聞こえた!?」

「なんのことだね、妹よ」

「わざとらしいんだよね。聞こえるように大きな声で話してるんだからさ」

「あれはわざとか!」

「やっぱり聞いてるじゃん、すけべ」

「いや、それは……、気になるじゃないか」

「まあ、いいや。で、兄貴から何か言うことない!?」

「そうだ! なぜ、相澤さんが無理かも、って言ったところで反論しないんだ!?」

「それ言っちゃったら面白くないじゃん。ここはへタレ兄貴の悶絶を期待しないとね」

「お前は敵なのか!? 味方なのか!?」

「わたしは唯お姉ちゃんの味方かな」

「なら、一緒だろ!」

「違うよ」


 瑠璃は嬉しそうにそう言うと俺のベッドに座った。瑠璃の胸はそんなに大きくはないが、そこそこはある。年相応だ。それよりも……。


「なあ、その部屋着露出度高くないか!?」

「えーっ、お兄ちゃん、妹にも欲情するの!?」


 俺は慌てて手で瑠璃の口を塞いだ。隣のベッドに座ると瑠璃がやけに挑発的に足を俺の目の前に差し出してくる。


「どう言うことだ」

「ふぁふぁふぁうう」


 あっ、これでは喋れないか。


「お前は声が大きいからな。もう少し小さい声で話せ!」


 そう言うと瑠璃の口から手を離す。


「助けてえ、お兄ちゃんに犯される!!」

「あのさ、今の状況分かってる!?」

「うん!!」


 本当に嬉しそうに頷くなあ。こんなところ唯に見られたらどうするんだよ。


「今日は相澤さんがいるだろ」

「だからだよ、お兄ちゃん、自覚ないから言っておくけどね。唯お姉ちゃんにとってベストな選択肢はお兄ちゃんと付き合わないことだよ!」


 こいつ、俺に刃向かつもりか。いや、それにしても、これは非常にまずい。瑠璃は俺をからかうところがある。今、同居さながらの状態で、瑠璃を敵に回してうまく行くわけがない。


「何が欲しい!?」

「お兄ちゃん、よくわかってるね。大好きだよ!」


 そう言って瑠璃は俺に抱きついてくる。その反動でベッドに倒れ込んだ。その瞬間、扉が小さく開いたのに気づいた。その向こうにいる目と合った瞬間、大きく逃げる音がした。


「おい、お前のせいだからな!」

「なんのこと!?」

「今、相澤さんが呼びに来てた」

「ああ、とうとうバレちゃったね。ふたりの関係」

「俺は実妹に欲情する気なんて、ないからな」

「ええ、ひどーい、あの時のことは遊びだったのね」

「まじで、ふざけるなよ!」

「そんなに怒らなくても」

「聞かれたらどうすんだよ!」

「うんしょ、分かってるって!」


 瑠璃はそのまま部屋を出て、小さくウインクした。


「じゃあ、欲しいもの考えとくから、明日買ってね!」


 瑠璃はそう言うとパタパタと走って行ってしまった。あれ、なぜ瑠璃が迎えに行かないいとならないんだ。先ほどは風呂場だったから問題があったが今なら無問題のはずだ。


「お姉ちゃん!」

「あっ、俺も行く!」


 瑠璃の思い通りにさせられてたまるものか。俺は唯のいるリビングに向かった。


「お姉ちゃん!」

 なぜか瑠璃が唯に抱きついていて、すりすりしている、て言うか羨ましすぎるだろ。


「澤田さん、本当に今日はありがとうございました。何から何までしていただいて……」

「いえいえ、気にしないでください。俺こそ無理やり連れて来てしまって、すみません」

「それは全然問題ないです! 本当にありがとうございました」


 瑠璃ちゃんもありがとうね。唯はそう言って玄関に向かおうとした。


「えと、その格好で帰るのは無理じゃないかな!?」

「あっ……、す……すみません」


 唯は顔を真っ赤にして俯いている。きっと俺が中途半端な態度だったのと、俺と瑠璃が抱き合っているところを見たからだ。


「お姉ちゃん、もしかして、なんか勘違いしてる!?」

「はい!? えと、わたしは……別にお二人の関係がどういう関係だとしても、それはその……わたしが否定する権利はないと言うか……」

「あははははっ、やはり勘違いされてたよ!」

「そこで俺に振るのやめてくれ!」

「えーっ、ならわたしが答えようか」


 その時の瑠璃の嬉しそうな笑顔に悪寒を感じた。これはまずい。完全に俺をからかう時の顔だ。


「いや、俺から話すよ! あのさ、俺と瑠璃は実妹で、普通の兄と妹の関係だからね。さっき、抱きついていたのは、こいつ何か欲しいものを買ってもらえるとなると、抱きつく癖があるんだよ!」


 言っていて俺もどうかと思う。抱きつく癖って絶対変だろ。


「ふふふ、さっきはびっくりしたけど、そうだったんですね。あれ、安心したら涙が……」

「お姉ちゃん、大丈夫!?」

「はい、大丈夫ですよ」


 その時、瑠璃が大きく手を打った。


「ねえ、お姉ちゃん、さっきも言ったけど、どうせなら今日泊まって行かない!? 服だって乾くの時間かかるから!」


 おいおいおいおい、瑠璃よ。なぜ、そんな無茶なお願い二度も出来るんだよ。無理に決まってるだろ!


「相澤さん、流石に無理ですよね。ごめんなさい、こいつ強引で……」


 その瞬間、唯は身を乗り出して俺に言ってきた。


「今日、泊まって行っていい!?」

「へっ!?」


 絶対断られると思ったのに、一体これはどうなってるの!?




⭐︎⭐︎⭐︎



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