NO.1|冷たかった少年

 校門前で待ち伏せる少年はとにかく目立っている。

 顔が生徒に知られていない――つまり、知らん転校生が誰かを待っている、何か面白いことが起きるに違いない、と好奇心に駆られても仕方がないことだ。むしろ、みんなが顔を向けるので一人一人の確認がはかどるから、夏行なつゆきは野次馬は気にせずにもう一人の【転入生】を見つけだそうとしている。


【転入生】の名前は械奈かいな。旧式のアンドロイドだ。

 

 自分にだけに向かっていた視線が急に去った。

 夏行の周りを囲んでいる生徒たちも坂の下の方に顔を向けている。

 生徒たちが遮って夏行には何が起こっているか観ることは出来ない。


 ギギ、ガシャン、ギギ、ガシャン


 何だろう、懐かしい音だ。


 夏行がコールドスリープからの蘇生したら世界は変わっていた。

 やり込んでいたスマホのゲームはサービスを終了している。

 入学式は長くて出れないので校門の立て看板の横に歩未あゆみと並んで写真を撮った。

 でも歩未は体調を崩して、コールドスリープに入る状態に戻るまで厳しい調整に入った。夏行は自分の過去――信じられないほど昔になってしまった記憶を脳裏に浮かばせた。

 現実はこうだ。解凍に成功して目覚めたら、家族はいないし歩未は半解凍で死にかけている。

 

 ――なんで自分は目覚めてしまったのだろう。

 

 歩未と校門で撮った写真を自分の遺影にすべきだったではないか。

 

 ギギ、ガシャン、ギギ、ガシャン


 違う。夏行は自分を奮い立たせる。歩未の身体がアンドロイドに使われる。そんなことは止めなければならない。

 決意を新たにして視線を上げると彼女がいた。プラスチックがお面のように張り付いている。

 当時は骨格の金属を全部は覆わなかった。皮膚に固いプラスチックが使用されている。現代――夏行にとっては未来のアンドロイドと会わせてもらったが外見では人と区別できなかった。

  

 プラスチックのアンドロイドを見て、夏行は懐かしさを感じている。


「あなたにします」


 プラスチックのアンドロイドが夏行を突くように指を差して言った。

 これは「械奈」だ。歩未の条件に適合する唯一の被移植体(レシピエント)。

 彼女を止めなければならない。


「あなたに恋をすると決めました」


 械奈は条件――恋の対象を定めて宣言した――。




 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る