第2話 嘘のはじまりー律ー


「……また、来てしまったな。」


駅前のロータリー。

見慣れない地方都市の夕暮れは、東京とは違う、穏やかな空気が流れていた。


律はスーツの襟元を直しながら、スマホを見下ろす。画面に表示されているのは、待ち合わせの場所を確認するメッセージ。


送り主の名前は――灯。




(“こっちで働いてる”なんて、よくもまあ、すぐ出てきたよな)


罪悪感はあった。


でもそれよりも、また会いたいという気持ちが勝っていた。

ほんの軽い嘘のつもりだった。



――今はたまたまこっちに来てるだけ。

――東京で働いている。


そんな言葉を伝えてしまえば、もう二度と彼女と会えなくなる気がして。



仕事が終わった後、わざわざ新幹線に飛び乗ってまで来た自分に、思わず苦笑する。

けれど、その足取りは軽い。


彼女の声を聞きたかった。

もう一度、会いたかった。

それだけだった。

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