第2話 冒険者ギルド

 僕は元の世界の家に城で得たものを並べる。

 お金はもちろん、装備とか地図とか本とか役に立ちそうなものを集めたよ!


 旅の目的は宝玉を3つ手に入れ、世界を滅ぼすこと。

 王様は宝玉の在処について何も知らなそうだったから、城の文献などには期待できないだろうしノーヒントだね。



 だから、異世界を地道に冒険するしかないね!


 取り敢えず服を着替えて異世界に行こう!


 僕は城で得た異世界の服に着替え(鎧とかは重くて着れなかったよ)、能力により「異世界」の森にワープする。


 ワープすると能力の実験により出来た不自然に何もない森の空間に辿り着く。


 とりあえず「勇者」らしく、まずは仲間を集めたいな。

 町に行ってギルドっぽいところで仲間を増やそう!



 町の中に行くと人々は慌ただしい様子だった。


「おじさん、何かあったの?」


「あぁ、今城の中から人が居なくなったらしくて大変なんだよ。噂によると、召喚した勇者様の仕業らしいんだけど」


「へえ、おっかない勇者もいるもんだねえ。その人勇者じゃなくて魔王なんじゃないの?」


 とんでもない奴がいたもんだなぁ。

 そんなおっかない奴に遭遇したら溜まったもんじゃないし、他の町に行こうかな。


 地図は確保したし、移動手段があれば良いんだけど……。


 能力は場所のイメージが出来ないと使えないからなぁ。




 そうだ!


 僕は元の世界にワープする。

 そして父の部屋に入った。


 ええっと、ここかな?

 あったあった。


 父の机の上から、車の鍵を手に入れた!


 家の車を異世界に持って行って、それで移動すればすぐに次の町に行けるぞ!


 僕は家の駐車スペースに行く。


 そういえば久し振りにこの車に乗るなぁ。

 確か最後に乗ったのは父親が癇癪を起こして僕を山の中に置き去りにした時だっけ。

 あの後結局警察のお世話になって家に帰ってこれたんだよねぇ。今となってはいい「思い出」だなぁ。


 感慨深さを感じながら僕は車の前に手をかざし、異世界の道をイメージする。


 しばらくして、異世界へと繋がるワープホールが出来る。


 大きさはちょっとギリギリ足りないけど大丈夫かなぁ。


 車の運転座席に乗り、エンジンをかける。

 アクセルを踏みワープホールへ突っ込んだ。


「うおおおおお……ってあれ、もう着いた」


 お決まりの歪んだ空間の中を車で渡る、みたいな事はなく、普通にさっきまでと同じように一瞬で、気づいたら着いていた。


 地図とコンパスは持ったし、取り敢えずここからそこそこ離れた町に行こうかな。近い町だと、恐ろしい勇者に出会いかねないからね。


 アクセルを踏み、異世界の道を進む。


 うおおお、元の世界程舗装されてないからかガタガタする。

 運転自体はした事なかったけど、案外簡単で楽しい。


 ………



 うーんしばらく進んだら道がなくなるなぁ。

 地図によれば、ここの草原の中を突っ切れば近道できるから、この草原の中に入るか!


 ハンドルを切り、草原の中に入る。


 草原の中には魔物が結構いたが、車をみると慌てて逃げ出している。


「ははは、車は元の世界で最も多く人間を殺した兵器だぞ! 慌てふためき逃げ出すが良い、魔物共よ!」



 ………

 ……

 …





 今どこだっけ……。

 しまったなぁ調子に乗って走ってたらここがどこだか分からなくなったぞ。

 まあ、道なりに進んでればどこかには着くか!


 と考えてしばらく進んでいたら、道の先に町があるのが見えた。


 取り敢えずあそこにいこう!



 町の手前で車をとめ、僕は町に入った。


 ここは……グロッタの町か!

 地図だとここの位置だから、城からまあまあ離れられたっぽいね。


 早速ここで仲間集めをしようかな!


 僕は「冒険者ギルド」に向かう。


 異世界によくありがちの「冒険者ギルド」だけど、結局何なのかよく分からないんだよねぇ。

 何をしてどうやって稼いでいて、何のための組織なんだろうか。ざっくりとしたイメージだとみんなで魔物倒して、お宝ゲットする感じだよね。

 でもみんな異世界ついたらまずここに行ってるし、間違いないよね。


「たのもー!」


 ギルドの中に入る。

 中はイメージ通りの感じだった。


 僕は受付に向かう。


「すいません、僕もよく分からないんですけど、ここで仲間を増やしたいんですけど」


「はあ……ではまず登録料を払って、ギルド入会の手続きを行ってください」


「登録料?」


 ギルドって入るだけでお金がかかるんだなぁ。

 でも、「存在料」よりは全然理不尽じゃないね!


 僕は城でくすねた、分かりやすく金貨と銀貨が大量に詰まった袋を取り出し、受付テーブルの上に置く。


「この中からどれくらい出せば良いのかな?」


「えっ!?」


 受付の人がお金の入った袋を見て驚いている。

 そして周囲も僕の方を見てざわつき始めた。


 僕、何かやっちゃいました?


「そ……そんなに沢山は要りません!銀貨1枚で十分です!」


「そうなんだ。はい」


 僕は銀貨1枚を袋から取り出し、差し出す。


 そして僕の個人情報を記入し、手続きを終えた。

 ちなみに住所とかは元世界の住所を異世界語で書いておいたよ!


「ちなみに仲間ってどうやって集めるんですか?」


「このギルド内で声を掛けて集めてください」


 自分から集めないといけないのかぁ。

 学校では強制的にグループを作ってくれてたからなぁ。

 ちなみにペアを組むときはクラス人数が偶数なのにも関わらず僕は1人になってたよ。


 ギルド内で挙動不審になっていると、声をかけられた。


「あの……良かったら私たちのパーティに入らない?」


 そこには美女3人が立っていた。

 ビキニアアーマーの戦士っぽい人と全身タイツの僧侶っぽいひと遊び人ぽい人で全員せくしーだ!


 あわわわ僕には刺激が強すぎるよ!

 まさか、異世界に来て早くもモテ期が来るなんて……!

 

「は、は、は、は、はい! 僕は陰道類って言います! よ、よろしくお願いします!!!! 」


「私達はこっちからベル、キャリー、クレア ね。よろしくね」


 やばい、陰キャラ特有の女性に対する免疫の無さが発動した!


「そんなに緊張しなくて良いよ。君可愛いね❤︎」


 あわわわわわ。

 これは僕に気があるって事だよね!?

 やばいぞ……こんな事ならイメージトレーニングしておくんだった……。

 一生機会なんて無いと思ってたからなぁ……。


「じゃあ交流も兼ねて、今からご飯食べに行こっか!」


 クレアが笑顔で言う。


「は、はい!」


 僕は彼女達について行く。


 いやあこれから僕はどうなっちゃうんだろう。一緒にご飯食べて、一緒に魔物倒したりして、それで恋に発展して、素敵なことが待ってるのかなぁ!?





 しばらくすると彼女たちはひと気ない路地裏に入った。


「……? この先にお店があるんですか?」


「ん〜? そんなの無いよ」


「え?」



 ――ガンッ



 後ろから何者かに頭を打たれる。


 僕の意識はそこで消失した。

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