【恋愛喜劇大作戦】〜ネトゲの嫁から恋愛相談されてから、声が出せない幼馴染がやけに甘えてくる〜

さーど

プロローグ

ネトゲの嫁からの恋愛相談

Ep01.Ne:ネトゲの嫁のリアルと現実

【セコンさん】

【リアルと現実を、あなたはきちんと区別できていますか?】


 月光に反射されて爛々らんらんと輝く、膝元まで伸びた献上の葉が境界線まで広がる、幻想的な平原。


 くもりもけがれもない深き濃紺のうこんみ渡ったキャンパスに、色とりどりにコントラストを灯らせた神秘的な夜空。


 ……かなり厨二病ちゅうにびょうチックな言い回しとなってしまったが、隣から放たれた質問の意味を理解する為の時間稼ぎ風景の説明には最適さいてきであろう。


 緩やかな風の音、子守唄こもりうた彷彿ほうふつとさせるオルゴールの混じったBGMが、段々と意識の外へ押し出されてゆく。


 ……俺は少しばかりフリーズしてしまっていた──





 ──壮大な景色に、心地よいBGM。

 誤解しないで欲しいのだが、俺が暮らしている世界はファンタジーではなく、西暦20××年の地球である。


 俺がモノローグをつづらせて頂いたのは、長年人類が発展させてきた遊戯ゆうぎ、ゲーム。

 その中でも、通称MMORPGと呼ばれるオンラインゲームのジャンルである。


 俺が今プレイしているMMOは三、四年程前からブームとなったソフトで、高グラフィック、高操作性をウリにしており、特に操作性においてはMMO界隈かいわいの中で最も評価が高い。

 具体的に説明するのは難しいのだが、しょ(以下略説明文字数測定不能

 俺もこのソフト以外にもいくつかMMOをプレイしたり見たりしてきたが、やはりこのソフトの操作性が手に馴染んで1番楽しいのだ。


 おっと、つい説明が長くなってしまった。


 遅れてすまない。

 俺のNAMEなまえは【SECONNセコン】。攻撃、支援を両立した魔法使いユニットを好んで使っている。

 決して、某警備保障会社○○○OMではない。名前の元ネタも全く別のものである。


【リアルと現実を、あなたはきちんと区別できていますか?】


 チャットログに掲載ていさいされた文章。じっくりと考えた後に改めて読んでみるが、やはり意味がわからない。

 俺は自身のユニット──ローブを羽織はおった短い金髪にジト目な灰眼の青年──の隣に仰向けで寝転んでいる、質問を投げかけてきたユニットへと視点を向ける。


 アクアブルーの長い髪セミロングを軽く肩にかけた、タレた翠眼の美少女ユニット。

 彼女?のNAMEなまえは【Fir-Wo】、初見ではわからないだろうが、読み方はファウ。


 俺のゲーム内フレンドで、このゲームを始めた頃からの付き合いである。

 俺のユニットと同じくローブを羽織っているが、あちらは魔法使いではなく双剣使いだ。


 そして……ゲーム内で結婚したという存在でもある。


 最も、あくまでゲーム内でのメリットがあまりにも大きかったからによる、打算的な結婚だ。

 そもそもの前提として、俺はファウのリアルの性別を知らぬ存ぜぬである。

 ただ、俺が今ネット内で一番仲が良いのはファウであることに間違いはなく、素直に俺は彼女?のことをこころよい関係だと思っている。


 さて、と。ようやく考えがまとまってきた。

 俺はモニター前のキーボードに両手を置き、カタカタと音を立てながらメッセージを入力する。


【区別していると思う?】


【え・・・?‎( ꒪⌓꒪)】


 いや返信早いな。

 数秒の間も無くファウの返信が入った。

 いつもの事だが、ファウの速読力とタイピング速度には驚かされてしまう。


 しかし、至極しごく真っ当な答えを返したはずなのに、何故俺はドン引きされている雰囲気なのだろうか。

 確かにファウの言わんとしてることを理解して、意地悪な答えをしたかもしれないけども。


【自分のあやまちに気がついて欲しい】


 かなり早急にメッセージを打ち込み、送信。

 汝、己の過去と向き合え。


「…………」


 先程の俺と同じように、ファウはフリーズして反応を示さない。


 それを横目に、俺はキーボード横に置いてあるコップを手に取り、注いだ水を飲んだ。

 少し焦った影響で乾いたのどうるおしておく。


【すみませんΣ(゚д゚;)】

【ネットと現実、って言おうとしてました!】


 そう直すんだ。『ネットとリアル』ではなく。

 ともかく、ようやっと理解したのか、その返信 まくし立てるような速度だ。


 顔文字を混ぜながらのチャットなのに、この入力スピード……

 ファウのユニット頭上に浮かんだ『・・・』のふきだし、俺じゃなかったら見逃しちゃうね。


「くくっ」


 相変わらずドジが目立つファウに、俺は現実世界で小さく笑った。

 全く揶揄からかいがいのあるやつである。


【それならちゃんと区別しているよw】


【良かったです(^^)】

【もうセコンさんとは3年の付き合いなので、の事があったら、と少し警戒していましたが、杞憂きゆうみたいですね】


 ネットとリアルで、もしもの事。


 話の文脈が無いが、さっするに俺たちが結婚してるから云々うんぬんの話であろうか。

 例えていうなら、某アニメ化してるラノベのヒロインみたいな、ネトゲ上の旦那様は、現実でも旦那様!……みたいな。


 だとしたら『いやそれラノベの話だからね』ではあるが……

 無論、俺はしっかりと区別しているつもりだ。


 嫁や夫という間柄は極端きょくたんだと思うが、俺はどんなに親しいネッ友でもあまり踏み込んだ話はしないようにしている。

 実際に合わない相手との関係は、あまり楽観視するものじゃないからだ。


 それを楽観視していた人が、かなり痛い目を見たっていう話を聞いたこともあるしな。

 実際に体験した訳では無いが、警戒けいかいするに越したことはない。


 ……というか。


【そもそもとして、僕はファウの性別知らないし、出会い目的じゃないのは分かるでしょ?】


 そんな話をされても、これに限るのである。


 ファウとの付き合いは長いが、当然、あまり踏み込んだ話はしていない。

 ファウもそこまでリアルを話すタイプでも無かったから、触れないようにしていたし。


 まあ、会わない相手の事について探ったところで意味はないし、そもそも野暮やぼな話だ。


【(´・ω`・ )え?】


「ん?」


 ん?

 なにかおかしな事を言っただろうか。


【わたし、女って言ってませんでしたっけ?】


「言ってねえよ。女性かなとは思ってたけど」


 現実世界で声が出てしまった。少しお口調も悪くなってしまいました。


 言ったと思っていたのか?3年間も!?

 初めて関わってからこの3年間、リアルについて話した記憶が全く無い件について。


【言ってないよ?】


 驚きながらも、返信は打っておく。


 まあ、うん。

 先程ひとりごちたように、言動からして女性なのかなとは少し思ってたし、その上で野暮な話をしてこなかったけど。


【えぇ!?( ゚д゚)!?】

【私が明日からぴちぴちのJKになるって話もしていませんでしたっけ!?】


「してねえって!しかも同い年かい!」


【言っtてないyp!?】


 頭が追いつかなくて誤字ってしまう。


 待て待て待って。情報量が多いし、普通に全く知らない情報も入ってきたって。

 俺だって明日は高校の入学式だよ!!いやそんなことどうでもいいわ!(ノリツッコミ)


 えぇ……なんでだ?

 なんで急に、こんなリアルのことをカミングアウトしてくるんだってばよ?


【あれ〜?( ˙꒳​˙ )】

【わたし、セコンさんに自分のことは結構話してるつもりだったんですけどね( -ω- ) 】


 なんでだよ。

 これまでの付き合いでなぜそう思ったんだよ。


 ……ドジなファウなら有り得るか。……有り得るのか?ここまで来たら''ド''天然の域なのだが。


 まあいいか……(よくない)





【え〜( ・᷄ὢ・᷅ )セコンさん、ファミ○キはコスパ悪いから毎日は辞めておいたほうがいいですよ】


 それから俺たちは、自分たちのリアルでの話を明かして、そして雑談する程までになった。

 初めて自分のリアルを話したり、相手のリアルを聞いたりしたが、中々おつなものである。


 例えばファウのリアルでは、

 明日から高校に通う(本人曰く)ぴちぴちの新女子高生だということ。

 勉強も運動もすごく苦手で、受験は苦労したこと。

 お菓子作りが趣味しゅみで、友人にいつも配ってること。

 ラノベは電子よりも書籍しょせき派なこと。

 散歩するのが好きで、休日の度に行くこと。

 散歩がてらに本屋に行くことが多いこと。

 寝るのがあまり好きじゃないから、夜更かしして俺とゲームするのは毎日の楽しみなこと。


 当然全く知らなかったことや、これまでに話したから少し知ってたこと、そしてかなり嬉しいこと等、色々知ることが出来た。

 勿論、住んでる地域や通う学校等、そこまで度が過ぎた事までは話していない。

 

 さっきまで知らなかったことが雪崩なだれのようにおそってきたため、まだ頭の中は整理しきれていないが、とても楽しい。


【いや〜、セコンさんの知らないことって、こんなに沢山あったんですね〜( ¯꒳¯ )】

【歳が近そうな人だなとは思ってましたけど、まさか同い歳だとは】


【お互い様にね】


 ファウとリアルについてかなり踏み込んだところまで話してしまったが、俺達の関係にヒビが入る雰囲気はなかった。

 無論、俺は元々そういうつもりだったし、ファウにとってだってこの話は些細ささいなことなのだろう。


 こんな楽しい時間を、まだ続けていたい……が。


「……さて」


 流石にに戻らねばなるまい。

 かれこれ話していたら、いつのまにか半時30分くらい経ってしまっているのだ。


【ところで、なんで急に、リアルの事について話をしてきたの?】


 ネットとリアルの区別はできてるかという質問の意味云々うんぬん……それも言外にふくめて、俺はファウにたずねた。


 本人にとってはそのつもりはなくても、これまでの関係性を崩すことを明かしたのだ。

 もちろん、ファウのリアルを知ったところで俺達の関係にヒビが入る訳ではなくても、だ。


 俺にリアルについて、先程の雑談よりもっと重要な何かを話そうとしていたのかもしれない。


 俺は直感でそう感じた。

 ファウの感じ、杞憂きゆうの可能性はあるけどな。


【ああ、そうですそうです(`・ω・´)】

【実は・・・】


 やはりだ。何かあるらしい。

 さあ、ドンとこい!!


 ━━━しかし、俺は知らなかったのである。


【セコンさんに、私の恋について・・・恋愛相談をしたくて】


「……え?」


 ネトゲの嫁から恋愛相談をされるという。

 非リアにとって、世界最大規模の大問題管轄外が、襲ってきたのだ……

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