第16話:フロイドの街角 ~すべての距離を知っている~

テーマ:ワーシャル–フロイド法(Floyd–Warshall)


🏙 シーン:帰り道、少し遠回りした公園のベンチ

「今日、こと葉とちょっとケンカしたんだよね……」


紗和はベンチの背もたれに頭を預けて、つぶやいた。

AI研究会の帰り道、算法遥斗と並んで歩くのは久しぶりだった。


「言いすぎたつもりはなかったんだけど……伝わらなかったみたいで」


遥斗は、いつも通り静かな顔で言う。


「人間関係も、都市構造に似てるよ。

 たまに、“最短じゃない道”を通らないと、相手の街にはたどり着けない」


💻 アルゴ、夜の街に光るマップを投影

ワーシャル–フロイド法とは?


すべてのノード間の最短距離を求めるアルゴリズム


直接つながってなくても、“間に誰かがいれば”最短経路が成立する


例えば:


紗和 → 遥斗 → こと葉 の順で話す方が、

紗和 → こと葉 直接より伝わることがある


💡 紗和、ハッとする

「……そうか。私、最短距離“っぽい”道ばかり探してたのかも。

 “直接言えば伝わる”って思いこんでた」


「でも、相手の“心の地図”は、自分のとは違う」


遥斗は、手元のスマホで複雑なノード構造を見せる。


「たとえばこのマップ――一見遠回りに見えるけど、“気持ちの壁”を避けるには最短なんだ」


🎭 回想:こと葉との会話(昨日)

こと葉「なんでも“数字で測ろう”とするの、ずるいよ」

紗和「だって、測れないとわかんないでしょ?」

(沈黙)


🧩 今、気づいたこと

「こと葉って、“気持ちは目に見えないけど確かにある”って考えの人で……

 私は、“目に見えないならせめて形にしたい”って思うタイプなんだ」


遥斗が言う。


「つまり、“座標系が違う”ってことだね。

 でも、変換式を使えば、ちゃんと相互理解できる」


🧠 アルゴ、補足モード

✔ ワーシャル–フロイド法は「全ノード対全ノード」間の最短経路を求める

✔ 中継ノードを経由することで、“直接より近い”ケースが生まれる

✔ 「距離」は物理的なものではなく、“理解のしやすさ”にも応用可能


🌃 紗和、立ち上がる

「こと葉に、もう一回話してみる。

 ……今度は、直接じゃなくてもいい。

 彼女に届く“道”を探してみる」


遥斗はうなずく。


「大切なのは、**相手との最短じゃなく、“気持ちに届く道”**なんだよ」


🧠 今日のアルゴリズムまとめ

ワーシャル–フロイド法は、すべての点と点の最短経路を求めるアルゴリズム


間に第三者がいても、“最も距離の短い経路”を見つけられる


人間関係においても、“直線より届く曲線”が存在する


❓考えてみよう

君は誰かと“話がすれ違った”こと、ある?


その時、誰かを経由して“届く道”があったとしたら?


🎁 エピローグ

数日後。紗和はこと葉に、そっとノートを渡した。

そこには、手書きでこう書いてあった。


「最短じゃないけど、遠回りも悪くなかった。

 それでも、あなたに届いてほしいと思った」

――再接続希望:紗和より


こと葉は受け取って、小さく笑った。


「気づいたんだね。

 ほんとの“距離”って、数字じゃないんだよ」


次回 → 第17話「分岐のパラドックス 〜木構造の向こう側〜」

(テーマ:木構造/Tree Structure)


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