第2話
大輝と悠希がやり取りをしている頃、清香は自室にあるソファーに座り、読書をして寛いでいた。
「みーつけたぁ」
そんな声と共に部屋の扉が開き、ロマリアが中へと入ってきた。
「っ!」
その声を聞いた清香は立ち上がろうとしたが、その前にロマリアが背後から抱きついてきた為、身動きがとれなくなってしまう。
「君の血、ボクに頂戴?」
ロマリアは清香の首筋を舐め、清香は恐怖のあまり体を震わせてギュッと目を閉じた。
「やめろっす!」
ロマリアが清香の首筋に噛み付こうと大きく口を開けた時、ロマリアを飛び蹴りするよいに大輝が部屋の中へと入ってくる。
「ひゃぁっ!」
油断していたロマリアは腹に飛び蹴りを食らって清香を離しながら吹っ飛び、壁へと激突してしまう。
「大丈夫っすか…?」
大輝は清香の心配をし、触れようと手を伸ばした。
「っ…や!」
清香は涙目でその手を払い除け、自分自身をギュッと抱きしめながら怯えたように震えている。
「ロマリア!謝るっす!」
そんな清香を見て大輝は鋭い目付きをロマリアへと向ける。
「は?なんでボクが謝らないといけないんだっ!」
壁に体を打ち付けて痛そうにしながらもロマリアは立ち上がり、睨みつけるように大輝のことを見つめる。
「彼女をよく見るっす!怯えてるじゃないっすか!」
大輝は睨み返すようにロマリアのことを見つめながら清香を指さした。
「ボクは悪くない!悪いのは美味しそうな匂いをさせているこの子じゃないか!」
ロマリアは一度、清香のことを見たあとで反論する。
「確かに甘ったるい匂いさせてるっすけどそこは我慢すればいいだけのことっす!この甘えん坊!」
大輝は清香を示す手を下ろし、怒鳴り声を上げた。
「なっ!甘えん坊とはなんだ!このヘタレ!」
ロマリアは大輝の言葉にムッとし、大きな声で反論をしてから頬を膨らませる。
「……この件、空に報告しておくっすからね」
大輝とロマリア、二人の睨み合いは少しの間続いたが大輝は呆れた様にロマリアから目を逸らし、静かにそう言った。
「っ…ちょ、大輝。報告は待ってよ!」
大輝が目を逸らしたことでロマリアは勝ち誇ったような表情をしていたが、大輝の言葉を聞いて急激に青ざめて慌てて大輝へと近寄っていく。
「大丈夫っすか?ほんと、すまないことをしたっす」
だが大輝はそんなロマリアを無視してしゃがみこみ、清香の顔を覗き込むように見つめながら声をかけた。
「だい、じょ…ぶ…」
また背後から来るのではないかという恐怖から辺りを見渡していたが、大輝に声をかけられたことで清香は大輝やロマリアがいる方へと顔を向けた。そして大粒の涙を零した目で大輝たちを見つめながら何度も小さく頷いた。
「……全然大丈夫そうには見えないっすね。こいつを連れて今すぐ出ていくっすからあんし…っ!」
大輝はそんな清香を見て立ち上がった。そして安心して欲しいと言いかけた時、大輝は飛び込むように部屋の中へと入ってきたライトに思いっきり頬を殴られて倒れ込んでしまう。
「清香に何してんだっ!」
そんな大輝を見てロマリアはざまぁみろと爆笑した。ライトはそんなロマリアの笑い声に負けないぐらいの声量で叫びながら大輝へと近づいていく。
「ちがっ…ライト。その人は助けてくれたの」
清香はそんなライトの服を控えめに掴んだ。
「助けてくれた…?」
服を掴まれ、立ち止まったライトは清香へと目を向けた。
「うん…私の血を飲もうとしたのはそっちで爆笑している子」
清香はライトの服を離したその手で控えめにロマリアを指さした。
「……吸血鬼がなんでここに」
ライトはロマリアの姿を目にした瞬間、清香を自分の背に隠して警戒するようにロマリアを見つめる。
「知り合いなら任せて大丈夫っすね。俺はこの馬鹿を連れて退散するっす」
大輝は殴られた頬を手で押え、ゆっくりとした動作で立ち上がった。そしてロマリアの首根っこを掴み、部屋から出ていったのである。その際、頭がくらくらしているのか大輝の足はふらついていたが、しっかりとロマリアのことを掴んでいた。
「…あ」
殴ったことを謝ろうとライトは警戒を緩めたが大輝は既にロマリアを連れ去ったあとだった。
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