#28 ここがオークション会場か……怪しい所ではないよね?

 さて、そんなこんなでオークション会場に辿りついた。


 もっと気品ある洋館で行われるのかなと思いきや、おとぎ話に出てくる小人の三角帽子みたいな形をしていた。


 貴族らしき小人が続々入っていく中、僕達は半仮面をかけた紳士服姿の小人に近づく。


 この小人が招待状をチェックしていた。


 さて、果たして三ヶ月前に貰ったの招待状の有効期限は大丈夫だろうか。


「拝見致します」


 某歌劇団のようなボイスでリンアから受け取ると、目元の部分がくり抜かれて、水色の瞳が露わになっている眼でジッと見ていた。


 そして、顔を上げた。


「おかえりなさいませ。リンア様。そして、お連れ様。よくぞお越し下さいました。どうぞ、こちらへ」


 紳士服の小人は深々と頭を下げると、僕達を案内してくれた。


 入り口は同じだった。


 会場は、逆円錐形だが、底は小さな丸いステージだった。


 そこを中心に、放射線上に歩道を作り、その道と道を挟む形でひな壇が四つ置かれていた。


 東西南北のブロックに分かれていて、全部で12つのひな壇がある。


 見た所、東西南のブロックはほぼ埋まっていた。


 北のブロックも次から次へと客が入ってきているから、このオークションが如何に人気かが分かる。


 だけど、みんなは下から順番にひな壇に腰をかけているのに、僕達はその席を通り過ぎていった。


 入り口からすぐ、円の縁は通り道となっていた。


 弧を描くように歩いていくと、ドアがあった。


「どうぞ、お入りください」


 紳士服の小人が開けると、階段だった。


 地下へ続いているらしく、壁には等間隔でランタンが吊るされていた。


 リンアがお礼を言って、中に入った。


 僕は恐る恐る入り、階段を降っていった。


 カツンカツンという石階段から出る特有の足音が、禁断の領域に踏み込んでいるような気持ちにさせられた。


 チラリと背後を見ると、マニラが不安そうな顔で降りていた。


 その後ろには、あの紳士服が僕達を監視をするかのように降りていた。


(何かあったら、僕の魔法でどうにかしよう)


 そう心の中で思いながら歩いていると、下に着いた。


 ここは会場の地下だろうか。


 会場の方も薄暗かったが、ここはもっと暗かった。


 まるでここに何があるのかを隠すかのように。


 少し奥に進むとランタンで明かるくなっている箇所があった。


 ぞこには、奇麗に髪がまとめられた半仮面の小人が木の机の前に立っていた。


「ようこそ。オークションに出品なさるものをこちらにお出しください」


 透き通るような声でそう言われた。


 なるほど。ここは出品を取り扱う場所なのか。


 リンアは「ほーい」とポシェットからあのフラスコを取り出した。


 驚く事に、採取直後は白濁っぽい色合いしていたそれが、黄金色に輝いている。


 一体あの材料で、どうしてこんな風になったのか理解できないけど。


 リンアがそれを出すと、たちまち反応が変わった。


「おぉ、これは……まさか……」


 食い入るようにフラスコを持ち、そこに入っているものを、まるで美術品でも見ているような眼差しで見ていた。


 が、ハッとしたように咳払いをすると、

「う、受けたまりました。どうぞ、オークションをお楽しみください」

 と、先程案内した紳士服に席に誘導するように言った。


 紳士服の小人は一礼すると、さっきまで歩いた階段ではない方向に案内された。


 少し歩くと、小さいランタンで照らされた木の扉が見えてきた。


 そこを開けると、部屋ではなく押入れみたいに狭い空間だった。


 そこに収納するかのように、全員中に入る。


 なんかおもちゃ箱に入っているような気持ちになった。


 紳士服の小人は、隅に立っていた。


 彼女は扉を閉めると、ドアの近くに付いてあるハンドルを両手でクルクル回し出した。


 すると、ガクンと地面が揺れたかと思えば、底から持ち上げられるような感覚がした。


 あ、これってもしかしてエレベーターかな。


 そう思っていると、揺れが収まった。


「どうぞ」


 ドアが開かれ、出てきた所は外だった。


 どうやら会場の裏側らしい。


 再びグルッと入り口まで戻って、中に入った。


 それにしても、エレベーターがあるなら最初からそうしてくれればよかったのに。


 もしかして、あの受付は出品する品を審査して、それが紛い物だったら階段で登らせという冷遇(貴族の格好では上るのが大変そうだし)をして、本物だったら客としてエレベーターに乗らせる、という事ではないだろうか。


 まぁ、正解か不正解か分からないけど。


 あんまり詮索しないでおこう。


 紳士服の小人は、北ブロックのステージから真ん中辺りに案内してもらうと、一礼して去っていった。


 ちょうどその時、ラッパの音が鳴った。


「ただいまより、オークションを開始したいと思いま〜す!」


 軽快なお姉さんの声が会場中に響き渡った。


 いよいよ、オークションが始まる。


 どんな感じなのだろう。楽しみだな。

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