第122話 まずは第10区域

「第10区域到着~!!」


 変わったモンスターやちょっとした仕掛けはあったものの、第8、9区域は特に詰まることなく通過し、約一時間半歩いて、ミツミたちは大穴の底、第10区域に到着した。

 第10区域は大きく開けた大空洞となっており、目の前には水面を青く光らせる巨大な地底湖が広がっている。


「ここに来るのも久しいわね」


「やっと着いた~! ヒナとカオリの配信で観たやつ!! って、わぎゃー!! 足元にゴキブリ!!」


 足元をカサカサと這い回る黒い生物にミツミは跳び上がった。

 黒光りする体表、無駄に素早い足、縦横無尽に足元を動き回るそれは、どこからどう見ても、例のG。


「それは『ダストイート』。この辺りを清潔に保ってくれる無害なモンスターよ」


「だけど先生! 私は今っ! 精神的被害を受けてます!!」


「その内慣れるわよ。まあ、ロクでもないもんばっかり食べてるだろうから、食用には向かないわね」


「食用でも食べないよ!!」


:カオリちゃん、中層経験者なだけあってちゃんと慣れてるなw

:私たちも今、精神的被害を受けています

:Gは等しく人類の天敵なのである

:配信サイトの神機能でモザイクかかってて良かった~


「でも、思ったより早く着いたわね、第10区域。とりあえず、水浴びからする?」


「する! したい!」


:ミツミちゃんの水浴び

:↑通報した

:まだなんも言ってないんだが

:何を妄想してるのか丸わかりなコメする方が悪い


「言っとくけど、画面には映さないわよ。洗い流す水の音でも聞いて、精々興奮してなさい、ド変態ども」


:罵倒ボイスありがとうございます!!

:ぶ、ぶひーーー!!

:捗る


 本格的に気持ち悪くなり始めたコメント欄は一旦見ないことにして、カオリはミツミの背中を押し、地底湖の方へ近付いていく。

 辺りにはテントを張ってキャンプをしている人や、釣りを楽しんでいる人が多く見られる。


「ここってすごいのんびりしてるよね~。みんな休憩してるの?」


「まあ、次の区域に進むために休憩してる人もいるだろうけど、単純にダンジョンで過ごすのが好きで、特に目的もなくのんびりしてる人もいるんじゃない? 最近割と流行ってるらしいわよ、気分転換にダンジョンキャンプしたりするの」


「へ~。確かに、この辺ってそんなに強いモンスターもいないから安全だし、いい感じに暗くて落ち着くもんね」


「じゃあミツミ、ここで一夜過ごしたい?」


「それは無理!! ゴキブリやだ! ムカデやだ!! こんな所じゃ、絶対寝られないよ!!」


「そうよね。そういう人がほとんどだから、広さの割に長居する人も少ないし、休日なんかをダンジョンで落ち着いて過ごしたいって人に向いてるのよ。まあ、今のミツミみたいにうるさいやつもいるだろうけど」


「うるさくてごめんなさい! でも、無理なもんは無理なんだもん!!」


「ま、その内慣れるわ。ダンジョン探索してたら、もっとえぐいのも出てくるから」


「やだー!!」


 なんて会話をしつつ、地底湖の周囲を回って、人のいない岩陰に辿り着く。


「さ、人が来ないか見てるから、この辺でさっさと水浴び済ませちゃって。どうせダストイートが食べるから、泡とか地面に落としちゃっても大丈夫よ」


「は~い」


 ~ミツミ水浴び中~


「ふ~! さっぱり!! 見張りありがと!」


「えぇ」


 全身を水と石鹼で洗い流し、タオルで拭いて、もう一着持って来たジャージに着替えたミツミが岩陰から出て来た。


:今だけダストイートになりたい

:ミツミちゃんの肌を伝って落ちた泡を食べたい

:お前らマジで永久追放されろ


「あ、心配しなくても、ライン越えな発言してる人は時間がある時にBANしてくつもりだから、安心してね~」


:ま、まずいっ

:早く過去コメを消さなければ!!

:俺ら変態が淘汰され、コメ欄の治安が保たれるのならそれでいいさ……

:潔い変態がおる


「じゃあそろそろ第11区域に行こうと思うんだけど……ちょっと不安要素があるのよね」


「なに?」


「あんた、北中央でのソロ配信以降、スキル出す練習続けてるの?」


「もちろん練習してますよ!」


「それにしては、今日一回もスキル名聞いてないんだけど」


「あれ、そうだっけ? カオリとヒナとのダンジョン探索、ひさしぶりで楽しすぎて忘れてたかも!」


 ミツミの言葉に、若干嬉しそうに口角を上げつつも、腕を組んで、厳しい態度をどうにか保つカオリ。


「……まあ、練習してるならいいんだけど、本番で出なかったら怒るわよ?」


「まあまあ見ててくださいよカオリさん! 行くよ! 『フレイムストリングス』!!」


 スキルを発動させて、ミツミの指から飛び出したのは、小指程度の長さの火の糸。


:ん?w

:前と変わんなくねーか?


「ちゃんと出てないじゃない。やっぱり練習をサボって……」


「違う違う!! 見ててね、せーのっ!」


 掛け声と共に、ミツミは火の糸を思い切り引っ張る。

 すると、この前のロックロックスパイダーとの戦闘中のように、火の糸がスルスルと伸びていく。


「んひゃっ! ん、んんぅ……はふっ、ひむにゅっ。はぁ……はぁ……。ほら、ちゃんと伸びたでしょ?」


「伸びたでしょ? じゃないのよ! どういう声出してんのよ!!」


:えっっっっっっど

:ミツミちゃん!?

:突然のエッチなボイス助かる


「いや~、ロックロックスパイダーと戦った時みたいな痛みはなくなったんだけど、代わりに、今度は引っ張ったら体の奥がまさぐられてるみたいにゾワってなって、くすぐったくなるようになっちゃったんだよねー」


「改めて不安要素しかないんだけど」

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