(21)帰省の誘い

 アズサはその日帰宅すると、帰省のことをヨウスケに聞いた。さすがに自分が帰省することになったのに、同居中の弟に言わないわけにはいかない。

 

 「ヨウスケ、今度の週末、大津の家行かん?」

 

 「急になんや?」

 

 「今度の週末、大津でアヤミさんに会うことになってん。仕事の都合で呼ばれたんや」

 

 「へえ、そなんや。でもオレ、新幹線代とか持ってへんよ」

 

 「ううん、ウチ出したるよ。ウチの分は出張で交通費往復出るから、ヨウスケの分だけならウチが持つ」

 

 「ホンマ? ええの? なら行く!」

 

 「ウチは、金曜の夜の新幹線で家に帰って、月曜日の夜こっち戻ってくる。あんたどうする?」

 

 「オレ、金曜日は授業ないから、朝から行けるで。でも、月曜日は授業あるから、日曜日に戻らんとダメや」

 

 「ほなら、行きかえりは別々にしよか」

 

 「お姉ちゃん、それでもええの?」

 

 「ウチら、もう大人やで」

 

と言ってアズサは笑った。さらにアズサは、

 

 「まだ細かいとこ決めてへんけど、アヤミさんと会うんは、月曜日かな。仕事やから。ヨウスケは会えへんか」

 

と話す。ヨウスケはちょっと残念そうに

 

 「そうなんや。アヤミさん、会えんのか。残念」

 

 「それもちょっとあとで聞いてみるわ」

 

 アズサはそう言って、話を終えた。そのあと、アズサは翌日の支度などして、ぼちぼち寝る時間となっていたが、寝る前にアヤミにSNSを打ってみた。

 

 「起きとる? 週末の件?」

 

 すぐに返事が来た。

 

 「起きとるよ」

 

 「日程どうする?」

 

 「アズサ金曜日夜来るやろ 土日実家なら 月曜日行こか」

 

 「ヨウスケが会いたいて」

 

 「ヨウスケさん来るん?」

 

 「ヨウスケ金曜朝こっち出発 日曜夜戻る」

 

 「ほなら土曜会う? 比叡山は月曜でええよ」

 

 「ええの?」

 

 「おけ」

 

 「り」

 

 アズサはアヤミがヨウスケとも会ってくれることが嬉しかった。また富士登山の姉弟三人状態が再現される。アズサは隣の部屋のヨウスケに声をかけた。

 

 「寝とる?」

 

 「起きとるよ」

 

 「アヤミさん、土曜日に会おうて」

 

 「ホンマ? 会えるん? やった」

 

 「お父さんとお母さんには知らせとくね」

 

 「あざす」

 

 引き戸越しに嬉しそうなヨウスケの声が聞こえた。

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