(14)リモート会議

 リモート会議は、初回こそ主担当の部長も出席して、会社の会議室で行われたが、二回目からはアズサだけが出席し、場所もアズサのデスクで行うようになった。アズサのノートPCの画面に、もうすっかりなじんだアズサの顔が写る。なんとなく遠方の姉と話しているような感じで会議を行う。

 この日の会議は、やはり取材の結果などの細かいところを話していたのだが、現地取材で、市内を見下ろせる高台にのぼった話になった時に、アヤミが唐突に発言した。

 

 「あのな、アズサちゃん、高いところ知らん?」

 

 「高いて、なに?」

 

 「ウチら、取材でそっちの市内の高台行ったやん。でもあの時はなんも降りて来えへんかった」

 

 「はい。そうでしたね」

 

 「ウチ、石山のマンションから琵琶湖見下ろしたやんか。そんな感じで、なんかもっと高いところから見下ろしたい」

 

 「もっと高い?」

 

 「なんや、航空写真いうか、そんな感じ」

 

 「飛行機乗られますか?」

 

 「いや、地面に立って、見たいんよ」

 

 「うーん、どこやろな。航空写真みたいで、地面…」

 

  アズサが数秒考える。

 

 「あ、富士山?」

 

 「富士山! ええな」

 

 「でも、富士山て、ここの市やないですよ」

 

 「うーん、そやね。でも、アズサちゃんちから近いんよね」

 

 「はい、ウチ、それで今の家に引っ越してきたんですから」

 

 「なんかね、ウチ、今、ホンマ『高いところ』に立って、地面を見下ろしたいんよ」

 

 「市内でなくてもええんですか?」

 

 「一応、見下ろせるなら見下ろしてみたい」

 

 「はい、…あ、ウチ…」

 

 「なに?」

 

 「え、あ、ウチ、この夏、家族で富士山に登るんです」

 

 「え、ホンマ? 行く、ウチも行きたい。一緒に連れてって!」

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