パルクール =ミリタリー学園=

ぱぴぷぺこ

第1話 地を駆ける疾風

 ――とある国のとあるミリタリー学園――


 ◆


「教授達のデモンストレーションが始まるぞ」


 パルクールの競技コースに生徒達が集まって来た。


「マジ? あ、ロイもいる」


「あれ誰? 初めてみるおっさんがいるぜ」


 先ほどまで自分達が競争していたコースのスタート地点で、四人の教授が準備をしていた。


 一組担任のエドワード、二組担任ミシェル、体育教官のロイ、そして事務局在中のウォレスだった。


「……誰だ? こんな無謀アホ企画イベント考えた奴は」


 スタート地点に立っている三人の、元教官だったウォレスがぼやいた。


「だって珍しいじゃない。同期が三人揃うなんてさ」


 二組担任のミシェルが、腕伸ばしのストレッチをしながら答えた。


「無事の記念に、縁起担ぎしようぜ」


 そう言ったのは、ミッシェルの隣で足首を回していた一組担任のエドワードだった。


「くだらん。今年教官やってなきゃ断ってた」


 エドワードの横でスタートの合図を待つロイが、素っ気なく言った。


「ロイお前はいいさ。俺はどうなんだ? 教官でも無い事務屋なんだぜ」


 一番端のウォレスは、逆端に控えるロイに向かって話しかけた。


「よく言うよ。その事務屋に負けて、体育教官をやる羽目になった奴もいるって言うのにな」


 エドワードはそう言いながら、ロイの方を見てニヤついた。


「あら、ウォレスはサマーキャンプを済ませたらいよいよ現場復帰でしょう? 体も慣らしておかなきゃ」


 発案者のミシェルがウォレスに明るく笑いかけた。

 思い思いに語っていると号令が飛んだ。


用意セット!」


 その声を受け、最後の一言をウォレスが言った。


「一つのコースを四人で駆けるなんて、まるで実践だな」


 本来、一人用のコースで、多くても二人で競争する程度の幅しかないのだ。

 ウォレスのその一言で、残る三人にも緊張が走った。


 "ピッ!!"


 ホイッスルがなり、四人は弾かれるように、一斉にコースへ飛び出した。

 一気に会場が盛り上がった。

 観客席は在校生で一杯だった。その中には同級生のジノと共に観戦するキムの姿があった。


「速……」


 自分達とはまるで違う、素早い教官達の動きに、キムは言葉を失った。

 生徒たちは思い思いの言葉を口にしていた。隣で観戦していたジノも


「凄いな。やっぱロイだ。無駄がないぜ」


 と感心している。

 先頭を走るミシェルと、その後ろから追って来るロイを見て、声援が飛ぶ。


「ミッチ先生有利。頑張れ!」


 キムはその様子をみながら、自分ならこの動線ラインで攻めるな、などと考えていた時だった。左端のブロックに飛び移ったウォレスに気がついた。


「あのライン……」


 上を走る三人に比べ、少し外れた位置の左側を飛ぶウォレスに、生徒のほとんどが気付いてはいなかった。


(飛ぶ高さが抑えられている分、次のブロック迄の距離があるのに、飛べてる……!)


 距離があるブロックを飛び移ることで、不足のスピードをおぎなうウォレスの戦法に、キムは感心した。


(凄い……。このラインで行くと後半、あのブロックで一気に抜ける……!)


 期待をしながら見守っていた、その時だった。


(しまった!)


 ミシェルは思わず心の中で叫んだ。


 飛び移ったブロックの着地点が浅かった為に、その先にある右手前方みぎてぜんぽうのバーが、思っていたよりも遠くなってしまったのだ。

 瞬時にルートを替え左斜め前、二メートル下のブロックへと飛び移ることにした。


「……駄目だ! ぶつかる……!」


 試合を見ていたキムが身を乗り出す。

 後ろから来ていたウォレスの、次に飛び移るブロックにミシェルが飛んで来ると予測したのだった。



 ----

(本文ここまで)


【あとがき】


 全5部作の第1回目です。

 とある国のとあるミリタリー学園のお話です。そう。空想のありえねぇ〜世界です。傭兵のうち能力の優れた者はMaster(教授免許)を持ち、当番制で学園担任等をします。なので〈今年は同期3人とパルクール教授Masterのウォレスが学園に在籍していた〉という設定になってます。

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 次回は生徒キムとウォレスが出会うシーンです。

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