第23話 アルメダ4 イルメダの価値と転移人   

「アルメダはイルメダの聖属性の重要性を気にしてないようだが」


「イルの聖魔法?

重要って、イルは少しの毒や傷しか癒せないよ。

LV自体は高いけど、ギフトの聖魔法が覚えられなくて聖LVは低いままだし、

お父さんはよくて中位ランクのB級冒険者になれればいい方だって」


「それはいままでの環境や練度不足なだけ。

希少な聖属性の使い手は聖女の素質を有している」


「野良のイルが聖女なんて絶対ムリだよ。

上位回復術師だって聖属性持ちの1万人に1人なれればいいって聞いたよ」


「大抵は平凡のまま生涯を終える。

しかし血縁者に聖属性の聖者や上位回復術師がいる場合は話が違う」


「お父さんも、母さんも聖属性なんて持ってないんだけど」


「もっと昔の先祖とか、世代を越え発現することもある。

強制的なら「覚醒」という手もある」


「覚醒って耳とかシッポが生えて、LVが上がりやすくなるっていう、あれ? そんなの作り話や大げさなお話じゃないの?」


「低LVなら覚醒しても成長の余地は低いが、高LVなほど秘められた能力が顕れると言われている」


「信じられないんだけど…」


「覚醒の話は数が少なく平民にはほとんど知れ渡ってはいない。

大成する者もわずかだ。この国で一番有名な人物はドラゴン・スレイヤーの亜人「シーナ・アルフレッタ」だ」


「アルフレッタさま? 精鋭者(勇者パーティ)とか、黒竜の脅威から獣人の街を救ってくれたとか、戦争を止めた救世主さまだよ」


「聖魔術ではないが覚醒後SSランクにまで上り詰め賢者並みの炎や雷魔法を発現、扱えるようになった」


「覚醒、すごい!

けどそんな凄い人たちと、イルが同じだって思えないんけど」


「これはイルメダだけじゃない。アルメダもその可能性を秘めている」


「わたしも?」


「お互いに属性の種類は違うが歳の割には高LVだろう。覚醒したら絶大な力を持つ可能性もある。

あまり出回っていない話だが、賢狼に位置する狼人族はかなりの確率で大成するという話だ」


「賢狼って、わたしたちただの狼人族だよ、それも半獣人(耳尻尾なし)」


「遠い先祖の事までは知らないだろう?」


なんで、シンエイがあたしたちの先祖のことをしっているんだろう?


「イルメダの高LV、聖属性は貴重。

聖者クラスでなくても高位の上位回復術師の可能性があるなら、どこの権力者でも奪ってでも手に入れたいはず」


「イルが狙われるってこと?」


「ほとんど確信に近いが、あのお姉さんは聖者の力を持っている。

毒の治療前にボクに対して視えないと言った。

これは聖者にしかない鑑定眼だ」


「お姉さんは、やっぱり聖女さま……」


「もし、あのお姉さんが他国の聖女で、イルメダの高LVのステータスを確認していたら? 

聖女の素質の可能性があるなら三国(ソンガリーア帝国 レイブル王国、ソントレー国)、その他のどこの国でも手段を問わず手に入れたいはず。

「欺き」や「二枚舌」のスキルを使って、アルメダイルメダに近づき懐柔しようとしていたら?」


「コワイこと言わないでよ。

シンエイはお姉さんを疑うの?疑うんだったらわたし怒るんだけど。

お姉さんに聖女の力があったとしてもなくても信用できる人だよ!

確かにいろいろ謎だけど、いままで騙そうとしてきた人たちと違う人だよ」


「これはひとつの可能性だ。あの人は間違いなく信用できると思う」


「でしょ。そんな酷いことするならシンエイの毒をとったりしないよ」


「この話を切り出したのはイルメダを危険に晒さない為、最悪な事態を想定すること。慎重に話し合って今後の行動を決めるためだ」


「……ごめん、イルのために、考えてくれてたんだね。…ありがとう」


「感謝はいい。ボクにそんな資格はない……」


「?」


シンエイは窓ガラスの方に近づき、外を見回す。

わたしもその後をついて窓の外を見る。


ボブゴブリンが見えない壁を木の棒で叩いて怒っている。


「障壁か。魔法で常時発動なら凄い魔力量。魔石を使ってるなら凄い量だろう」


窓ガラス、ガラスの枠、壁に手を触れる。


「こんな材質は見たことがない。食べ物以上にこの部屋や魔道具も異質だ。帝室や王室でもこんなに洗練されていないだろう」


「お姉さん、王国や帝国の言葉じゃないけどどこの人かな。

どこかの国の精鋭者(勇者パーティ)? 

もしかしたら冒険物語のようなお姫さま一行とか?」


「街から一瞬でこの森に来たんだな?」


「それって空間転移だよね。大昔の大賢者しか扱えないと聞いたことあるんだけど」


「そしてこの家を出した。スキルかギフトで」


「ハウスって言ったらポンッと出たんだよ。

それから身体や服を洗浄魔法でキレイにしてくれて、この部屋に運んでくれたの」


「みんな靴は履いてないよな」


「そう。この家では靴を脱いでって。びょうげんきん?とかがあるからって言われた」


「食事のスープ、米が入っていた」


「え?お米?あの白いの?」


「卵入りのお粥という食べ物だ」


「わたし、初めてお米食べた!」


「見知らぬ物の数々、漢字に靴、米……」


「それがどうしたの?」


「アルメダは「転移人」の存在は知っているか?」


「……知らない」


「あのお姉さんは転移人だ。「神龍」がこの世界の魔王を討伐させるため、「地球」という別の世界から力のある者を転移させる、それが転移人という存在だ」


「……ごめん、まったく意味も話も見えないんだけど」


「「星の人々」の絵本は知ってるか?」


「うん。夜のお空に浮かぶお月さまやお星さまに住んでる人たちのお話だよね」


「このボクたちが住んでいるテラウスも、夜空に浮かぶ無数にある星のひとつ。これは理解できてる?」


「うん」


「遠い地球という星から、このテラウスに来たのが転移人なんだ」


「……どうやってくるの? 飛んで?」


「さっき話した戦争の女の子がいたろう?

話はだいぶ違うが、神龍が地球と言う星から転移人をこのテラウスの星へ呼ぶのは同じだ」


「神龍さまって、そんなことできるんだ」


「そして、テラウスの精鋭者(勇者パーティ)が敵わない魔王を倒してくれる、神龍に選ばれた人間、それが転移人だ」


「精鋭者って、弱いの?

わたしの知ってる賢者のマーレット・ギブソンさまとか、

魔術師の「シーナ・アルフレッタ」さまはものすごく強いんだけど」


「その2人は実在しA、Sランクの強者だが、

地球からの転移人には敵わないだろう」


「そんなに違うの?」


「その差は歴然らしい。

地球からの転移人の勇者賢者聖者は」


「お姉さんたちは、遠いチキュウの星から来た。

神龍さまが呼んで、魔王を倒す、転移人。

勇者、賢者、聖者。

それが、お姉さんたち……。

あ、薬屋の人がシンエイのことを転移人の、子孫とか言ってたけど…」


「70年前の転移人にクジョウという賢者がいた。ボクはクジョウという賢者のひ孫に当たる」


「シンエイは賢者の血を継ぐ子孫!?」


「賢者の血と言っても血が薄まり超越する力も能力もない。同世代と比べれば強い方だが大人の力、スキルギフトの数には敵わない。

70年前のクジョウは魔王討伐後、地球には帰らずこの世界に留まったといわれている。その末裔がボクたち、クジョウ家の者だ」


「チキュウの人って、わたしたちとどう違うの?」


「外見も中身も違わない。ただこのテラウスの世界の誰よりも強い存在。

神龍から恩寵を与えられ、魔王討伐を任されている存在だ」


「なんとなくわかったような、わからないような…?

けどお姉さんたちは物語に出てくる魔王を倒す勇者さま、賢者さま、聖者さまさまたちでいいんだよね?」


シンエイは頷く。


「ちょっと混乱してるけど、

お姉さんは勇者さまたち。

本物の…すごい!

これから、どうすればいいの?」


「普通でいいだろう。クジョウも「テラウス」人と何ら変わらなかったと言い伝えられている。力や権威を振りかざせず、亜人獣人差別もしない人だったらしい」


「転移人凄い!お姉さん優しい人だし、

クジョウさんも素晴らしい人だったんだ」


「クジョウ自身は素晴らしい信念の持ち主だったらしい。

魔王を倒した後、地球には戻らずこの世界で家族を築いた。

クジョウ流の当主として理想郷の里を立ち上げ発展させ、身内や仲間の為には命を張ったそうだが、年老い行方不明とされている。

クジョウ家は存続したがクジョウの理念は淘汰され、理想とはかけ離れた金や利益を追求する暗殺集団に成り果てた」


シンエイが、暗殺集団…!?


「アルメダの願いは、イルメダを守ることだろう?」


「う、うん」


「ボクも守る」


「え?」


「君もだ」


シンエイ、もしかしたら、わたしのことを?(////)

あ!もしかしたら、イル!?


それはイヤーー!

いや、イヤじゃないけど…それでもイヤーー!


「君たちが、ボクを許してくれるならだが…」


許す? シンエイがさっき言いたかったことは、里の暗殺集団のこと?

自分が人殺しだから? そんなの全然関係ないんだけど…。


ドアのノック音。


「「!」」


ドアが開き、お姉さんが笑顔で入ってくる。


「話はしっかりと聞かせてもらった!」


「「……」」


「少年が疑心暗鬼のように、こちらも少なからず警戒をしていた。

どこの世界でも人物像や正体などの情報収集は必須、基本だからね。少年なら理解してくれるよね?

日本のシノビの末裔、子孫。暗殺集団ということは帝国では間者みたいなことをしていたのかな?」


「ボクたちの話を聞いていたんですか?」


お姉さんが手に持っている小さい四角い板を見せてくれる。

板の中にわたしとシンエイがいた。


――――

『勝っちゃった? 「ごんた」さんの負け?』

『勝ったらしいけど、なんだろうこれ?』

『おとぎ話に出てくる小人族?いるか分からないけど』

――――


「???」


これ、わたしとシンエイ?

え?小さい箱の中に…。

閉じ込められた?え、でもここにいるんだけど!

どういうこと!? コワイんだけど!


「これは、この世界で言うなら魔道具に類するモノ。 時を再現できる魔道具かな」


魔道具?それなら納得できる、のかな?


シンエイは警戒している。


「少年のバックグラウンドには興味津々だ。

影のある危い雰囲気もいいよ。

姉妹に意味深な感情を抱いてるのもポイントが高い」


「………」


「あ、あの!」


「うん、何かな?」


「お姉さんは、本当に、本物の聖女なんですよね」


「うん、そう。

それより、驚いたよー、少年」


え!?それだけ? 話し変わっちゃう?


お姉さんはショウギを見て、板に触れると、コマが動く。


「ゴン太に勝てるなんて偉業以外何者でもないよ。

4冠の澤田棋士9段さえもこのAIには敵わない。

アタシなんか澤田棋士でさえ、0勝4敗の体たらくだ。

これでもアタシ女性初の棋士、史上最年少でちょっとは有名なんだよ」


まったく意味が分からない…。

聖女さまなんだよね?


「最強AIコンピュータに人類は連敗中なんだけど、少年、いい人材だわー。それってスキルの力、発動したんだよね?」


「………」


「スキル発動じゃない? 

数秒で思考して駒を動かすのが地頭だったら、アタシとしてはそっちの方が衝撃なんですけど」


黙るシンエイにお姉さんは顔を近づける。


お姉さん!あんまり近づかないで!


「お し え て」


「…スキル「予見力」」


「やっぱりねー。

「予見力」、先を見越す予測に近いスキル。

試したんだよー。

アタシにもあるんだけど、スキルLVは2。少年のLVは?」


「LV5」


「5でAIに勝てる?スキルどんだけ有能なんだよ。

最初の一手で「金」を動かしたけど、どうみても優勢は5ニの「角」成りじゃない?」


シンエイが圧倒されてる。


「それだと、数手先の相手の6八の「歩」が生きて一気に攻め込まれる」


お姉さんは板のコマを動かす。


「3三「香」。1八「馬」成り。9四「飛車」が……こう来て、こう」


たしかショウギは何手先も何通りも読む遊戯とお父さんは言っていた。


「ほー、理に適ってる……。

LV2ではその域には達しない。けど、いい線はいってた。


けど日本に戻った場合、スキルが使えないなら無しで闘わないといけないんだよねー。スキル頼りはここではいいけど、頭が錆びつく諸刃の剣かも。

しかし未知の戦型、新しい棋譜が発見できるならこれはこれで有りかな?

名が残るよ! それにはまずいろいろ試して――」


よく分からないけど、ショウギに対するしゅうねんが凄そうだ。

転移人の人はショウギが好きなのかな?


「スキルって任意で下げることできたはずだね」


お姉さんはシンエイの肩に手を置き、わたしを見る。


「ちょっと悪いけど、少年、今日の夜、貸してくれない?」


「…ち、ち、ちょ、お姉さん!」


「今晩は一緒に突つき合おうよ、少年」


つ、つ、突く?…さすがにお姉さんでも、そ、それは……。


「今夜は寝かせないよー」


<パコーン!>


もう1人のお姉さんが、部屋に入って来て白い厚い紙で叩いた!


「アンタ、こんないたいけな少年を!児童買春罪よ!」


「性的な意味はないよー、将棋の駒を突くんだよー」



――

23 アルメダ4 イルメダの価値と転移人 終わり  (73)

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