かぐやは銀のまなざしで

巳波 叶居/叭居

1


にゃあ、と猫が鳴く声が聞こえて、僕は目を覚ました。

目を開けて最初に飛び込んできたのは、僕が乗る月への輸送船の白い天井。そして窓の外に広がる宇宙空間と、着陸が近付く広大なレゴリスの野原。かすかな重みを感じて膝の上に目を向ければ、地球を発つ時におばあちゃんが渡してくれた、黒い猫型のロボットがこちらの様子をうかがっている。大きくて真っ青な瞳で僕を見つめ、もう一度にゃあ、と鳴いた。


それとほぼ同時に、頭に装着した感情生成AI《Emo-AI》の機器が小さく震えながら起動する。


それは僕がこれから月へ向かう喜びだとか、未知の場所への期待感だとかを増幅する効果があるはずだった。輸送船が到着する少し前の時刻に合わせて、そういう感情が生成されるようEmo-AIに指示プロンプトを出したのは僕自身だ。でもそれは、うまくはいかなかった。機器は小さく震えただけ。少しはあるかと思った期待感も、もやもやと曖昧なまま消えてしまった。「感情生成AI」なんて呼ばれているけど、Emo-AIは感情をゼロから生成することはできない。自分の中に在る感情だけを増幅できるシステムだ。僕の中にわずかでも月へ行く喜びなり期待感なりがあれば、きっといくらでもそれを増幅できたんだろうけど。どうやら、僕の中にそういう感情はないらしい。本当は、ちょっとはあるだろうと期待はしてたんだけどな。僕は自分自身に裏切られたような気がして、弱くため息をついた。


「まもなく到着します」という船内アナウンスが流れて、僕はもう一度窓の外を見る。灰色のレゴリスの野が近づく。人類が初めて月に降り立ったのは、何百年前だったろうか。そのころ月には空気もなくて、直射日光を浴びる箇所とそうでない箇所の気温差も激しくて、とても人間が住める場所じゃなかったと歴史の授業で習った気がする。今はだいぶ開発も進んで、月面には大きなドーム型の建物がいくつも築かれている。ドームの中は空気もあるし、寒暖差も、重力だって調節可能だ。さすがに地球ほど人口は多くはないけど、人も普通に暮らしてる。

そういう、月面都市に住んでいる人の多くは、レゴリスの加工産業に従事する人たちだ。レゴリスは加工すれば植物を育てる肥料になり、家を建てる建築資材になり、燃料電池にもなる。月面の開拓を支えた貴重な資源であり、今や一大産業の基盤だ。月面で製造されたレゴリス製品はけっこう人気で、いろいろな物が地球へ輸出されている。

中でも今いちばん注目を浴びているのが、レゴリスから精製した特殊な金属だ。15年ほど前にある企業が、レゴリスから不思議な性質を持つ金属の精製方法を発見したのだ。《ルナ・ジルコニア》と名付けられたその金属は、ダイヤモンドなみに硬いだけでなく、月面ではつややかな銀色で、地球の日光の下では磨かれたダイヤモンドのように透き通り、夜に月光に透かすと七色の光を放つという、謎めいた宝石みたいな性質を持っていた。精製方法は複雑らしいけど、使うレゴリス自体は比較的少量で済むので、資源節約の面からも今後の活用が期待される金属だ、というようなことを前に教育チャンネルの動画で言っていた気がする。僕が向かっているのは、まさしくその《ルナ・ジルコニア》の精製方法を確立し、今も《ルナ・ジルコニア》の製造を独占する一大企業である、カグヤ・カンパニーの月面支社だった。


実のところ、なんで僕がそんなところに向かっているのか、自分でもよくわからなかった。


地球で、島国の片田舎の高校に通っている僕は、自分で言うのもなんだけど冴えないただの高校生だ。みんなが当たり前のように使いこなしているEmo-AIも、ぜんぜんうまく使えない。僕がEmo-AIを使い始めたのは16歳の時。使用可能年齢になってほぼすぐのことだから、ほかの人たちと比べて遅かったわけでもない。実際、高校に入学して最初の年は、Emo-AIにまだ慣れないという会話がよく教室のはしばしから聞こえていた。けれど、いつの間にかみんなそんな話はしなくなって、当然のようにEmo-AIを使いこなしていた。テストの時は緊張や不安を和らげたり、楽しい話題で笑った時はその感情をもっと盛り上げて、大勢で笑い合うようになっていた。僕だって不安な気持ちはなくしたいし、教室でみんなが笑っている時は同じように笑いたい。でも、そういう時にEmo-AIを使っても、自分がなりたい気持ちになれたことなんてなかった。Emo-AIの自動生成機能を使っても、自分でアタリをつけて指示プロンプトを入れてみてもだめだった。いつもなんとなく周囲の雰囲気に合わせて、それらしい表情をつくることで精いっぱいだった。けれどみんな、そういう僕に気づいている様子はなくて。そういう僕は、クラスで特に仲のいい友達もいなかったけど、特に仲間はずれにされてもいなくて。何事もなく、目立たず過ごす高校生活を、僕はそれはそれできっといいのだろうと思って過ごしていた。


だから、ある日担任の先生に呼び出されて、「夏休み中にカグヤ・カンパニーで学生を集めてコンテストみたいのを開くらしいから、お前行ってみないか」と言われたときは、心底驚いたのだ。確かに美術の成績はちょっとは良かったけど、それだけだ。それにそういう大企業で働く人は、だいたいEmo-AI技能検定の上級合格者なはずだ。自分の感情をちゃんと把握して、それをコントロールできる人ばっかりの企業が、学生のコンテストとはいえ僕みたいな人間を選ぶなんて思えなかった。僕がEmo-AIを使うのが下手なことを、先生は見抜いているものと思っていたけど、そうじゃなかったんだろうか。僕の口からも気が進まないという返事をしたのだけど、先生は「せっかくうちみたいな田舎の学校でも推薦枠をもらえたんだ。参加者はタダで月に行けるし、それだけでもいい経験になるだろう。四の五の言わずにやってみろ」となんだかんだで強引に、僕のコンテスト行きを決めてしまったのだった。



ポーン、とチャイムが鳴って、船が月面のポートに到着したことを告げた。地球の船と違ってまったく揺れないので、いつ着陸したのかも気づかなかった。僕は座席の上の棚に置いていたリュックサックを背負い、膝の上に乗せていた黒猫を抱える。この黒猫型ロボットは、ひとりで月面へ行く僕を心配しておばあちゃんが貸してくれたものだ。「もしEmo-AIで不安な気持ちをどうにかできなくても、猫をなでれば多少は心が和むから」と言っていた。おばあちゃんは猫好きなのだ。腕の中で黒猫は、ゴロゴロと本物の猫みたいに喉を鳴らしている。体は金属製のはずなのに、触れればほのかにあたたかくて、少しほっとする。おばあちゃんが言ってたのはこういうことかな、と僕は思った。


輸送船のタラップを降り、ゲートをくぐると、月面都市のポートが眼前に広がる。輸送船と似たような真っ白な天井の下を、多くの人が行き来している。集合場所はどこだったかな、と携帯端末で案内状を確認しようとしていたら、「こんにちは、お待ちしておりました」と声をかけられた。顔を上げると、丸いフォルムの女性形アンドロイドが立っている。体は全身白っぽいセラミック製だが、胸元には『KAGUYA COMPANY』のロゴ、そして大きな瞳がつややかな銀色に輝いている。《ルナ・ジルコニア》だ。カグヤ・カンパニーの案内係ロボットに違いなかった。


「カグヤ・カンパニー学生コンテストの参加者の方ですね。わたくしの正面に立って、顔認証をお願いできますか?」


落ち着いたトーンの大人の女性の声で問いかけてくる。僕が言われたとおりに正面に立つと、案内ロボの目が光って、僕の顔をスキャンした。「ありがとうございます。では念のため、参加証もご提示いただけますか」と促されたので、僕は携帯端末で参加証を表示し、案内ロボに提示する。ふたたび銀色の目が光った。


「ご提示ありがとうございます。二段階認証が完了いたしました。会場にご案内いたしますので、どうぞこちらへおいでください」


案内ロボは行きかう人々を巧みに避けながら、ゲートのひとつへと向かっていく。僕は後れを取らないよう、懸命に追いかける。ゲートを抜けた先はロータリーのようになっていて、何台もの車やバスが停まっている。僕が住んでいる町の駅前にあるものよりも、ずっと大きくてきれいなロータリーだ。歩道を少し歩いていくと、案内ロボは一台の車の前で止まった。とてもきれいな青い車だ。月面を走る車は傷みやすいと聞いたことがあるけど、車体はぴかぴかで傷ひとつない。後部座席のドアが自動で開いて、座るよう言われたので促されるまま後ろの席に座る。ドアはふたたび自動で閉まる。座席のクッションはふかふかで、車にたいして興味のない僕でさえとんでもない高級車だろうということはわかった。隣に置いた黒猫ロボも、どこか気持ちよさそうに座席で体を丸めている。


「このたびはカグヤ・カンパニー学生コンテストへにご参加いただきありがとうございます。コンテストの概要について、改めて説明させていただきますね」


輸送船と同じように、音もなく車は走り出す。運転席に座った案内ロボが、正面を向いたまま話しかけてきた。


「カグヤ・カンパニー学生コンテストは、当社の《ルナ・ジルコニア》を用いた新製品のアイディアを募集するコンテストです。現在、《ルナ・ジルコニア》は主にアクセサリーやインテリア用品に活用されていますが、当社としてはもっとさまざまな製品に活用したいと考えております。そこで、若い方々においでいただいて、実際に《ルナ・ジルコニア》に触れながらアイディアを出していただくというのが開催の趣旨となります。入賞されたアイディアは製品化され、入賞者の方には賞金が授与されます。入賞されなかった場合も、参加賞として当社製品との引き換えクーポンなどが贈られます」


車は長いトンネルを進んでいる。月面都市は大きなドームのいくつかを、こういうトンネルでつなぐ構造になっているのだ。エネルギーとなる太陽光を取り入れるため、トンネルの天井には窓がある。僕は時々窓の向こうに現れる星空を眺めながら、ぼんやりと案内ロボの話を聞いていた。


「素材の状態の《ルナ・ジルコニア》は貴重品ですので、参加者の皆様には専用の施設に入っていただきます。期間は3日間。おひとりでの参加の場合、アイディアの混同を防ぐためほかの参加者との接触は禁止されております。地球にいらっしゃるご家族との通話等は、それ自体は禁止はしておりませんが、アイディアについてのご相談は禁止しております。たいへん恐縮ながら、通話内容はオペレーターAIによって常時違反がないかの判定をさせていただきますので、ご了承ください。規則を破られた場合は、即座にコンテスト失格となります。なお、Emo-AIの使用は自由ですので、ご不安を抑えたい時などはいつでもお使いください」


「あの」


Emo-AIの名前が出たので、僕はつい、気になっていたことが口をついて出てしまった。


「僕は、その、あまりEmo-AIがうまく使えません。カグヤ・カンパニーさんみたいな大きな企業の方は、みなさんEmo-AIを上手に使える方ばっかりと聞いてます。学生とはいえ、僕みたいな人間がコンテストに参加して、問題はないんでしょうか」

「まったく問題ございません」


案内ロボがはっきりとした口調で答える。車のミラーに映る銀色の瞳が、なぜか微笑んでいるようにも見えた。


「大切なのは優れたアイディアを出していただくことですので。また、当社もEmo-AI技能検定の上級者ばかりというわけではございませんよ。あまり気になさらず、アイディアを出すことに集中していただければと思います。当社指定の範囲とはなりますが、部屋に置いてあるタブレット端末では、動画コンテンツや電子書籍などを自由に閲覧することができます。ご不安をEmo-AIなしで解消したい時にご活用いただいてもよろしいですよ」


そうこうしているうちに、車はトンネルを抜け、【006】と番号が振られたドームに入る。ここはカグヤ・カンパニーのような大企業が立ち並ぶ商業エリアだ。おそらくレゴリスが原料の建材だろう、淡い灰青色の頑丈そうなコンクリートで造られた建物が並んでいる。そのうちのひとつ、ひときわ大きな建物の前で、車は止まった。カグヤ・カンパニー月面支社だ。案内ロボの胸元にあったのと同じ「KAGUYA COMPANY」のロゴが、建物の正面できらきらと銀色に輝いている。


リュックサックを背負い、黒猫を抱いて車を降りる。正面玄関に入ると、広々とした空間の中央に銀色のオブジェが飾られていた。台座の上にあってかなり大きく見えるけど、オブジェ自体の高さは僕の身長の半分くらいだろうか。最初は花かなにかをモチーフにしたものかと思ったけど、よく見ると中央には裾の長い衣を着た女性が立っている。女神像か何かのようだった。


「このオブジェが気になりますか?」


僕が目を奪われたことに気づいたのだろう。案内ロボが小首をかしげるようにして僕に顔を向ける。


「こちらは当社の社名の由来である『カグヤヒメ』をモチーフにした像です。月で生まれたというこの世で最も美しい姫君を、当社開発の《ルナ・ジルコニア》のみを使って制作しました。当社を象徴するオブジェです」


どこか誇らしげな口調で言いながら、案内ロボがそばにある操作パネルのようなものに触れる。カグヤヒメ像のまわりの照明が暗くなり、暖色系のライトが灯る。すると瞬く間に像は透明になり、ダイヤのようにきらきらと輝いた。


「こちらは《ルナ・ジルコニア》の特性が一目でわかるものとなっております。このライトは太陽光に近い光で、当てるとこのように像は透明になり、光り輝きます。地上で最も美しい宝石である、ダイヤモンドのように」


案内ロボがもう一度、今度は別の操作をする。暖色系のライトが消え、今度は白に近い色合いのライトが当てられる。するとカグヤヒメはさらに変化し、金のような銀のような色合いになって、全身から七色の光を放ち始めた。それはとても劇的な変化で、僕は思わず息を呑んだ。


「このライトは月光を模した光で、当てるとこのように像は色を変え、七色に輝きます。光を反射するだけでなく、みずからも発光しているのです。このような反応が起こるのは、月光を当てた時だけです」


案内ロボの説明を、僕は半ば聞き流してしまっていた。それくらい、カグヤヒメの放つ輝きに圧倒されていた。

なんてきれいなんだろう。いや、きれいなんて言葉では足りないくらいだ。思わず猫を抱く腕にぎゅっと力が入る。腕の中でにゃあ゛、と不快げに黒猫が鳴いた。


「ここでは本物の月光を当てた姿をお見せできないのが残念です。本物の月光のもとでの輝きは、もっともっと素晴らしいですよ。地球の本社にも同じものがございますので、いつかぜひご覧くださいね」


案内ロボが操作パネルに触れると、しゅん、とライトが消え、通常の照明に戻った。ぼんやりと夢見心地が続く僕に、「では、こちらです」と案内ロボがついてくるよう促す。長い通路と、いくつかのブロックを抜けて案内されたのは、ホテルの廊下みたいな雰囲気のエリアだった。いくつか並んだ木目調のドアのひとつを開けると、これまた高級ホテルのような部屋が現れた。広々とした空間に、見るからに座りやすそうなソファや透明なガラステーブル、作業机らしいものも見える。大きな窓には目にやさしいパステルカラーのカーテンがかかっている。


「滞在中はこちらの部屋でお過ごしください。トイレやお風呂、冷蔵庫など生活に必要なものは一通りそろっているかと思います。ドアはオートロックになっております。コンテストの参加証がキー代わりとなりますので、部屋の外に出られる際は必ず参加証をお持ちくださいね。また、建物の外に出たい場合は事前にご相談ください。相談なしで出てしまいますと、場合によっては失格となりますのでくれぐれもご注意ください」


案内ロボはほかにも、部屋にあるタブレット端末やお風呂などの設備の使い方についてひととおり説明した。タブレット端末は車の中で話していた動画や電子書籍だけでなく、施設のマニュアルやカグヤ・カンパニーの製品カタログなども見られるそうだ。食事は社員用の食堂を無料で使わせてくれるそうだが、事前にタブレット端末から注文すれば食事を部屋へ運んでもらうこともできるし、手続きを踏めば会社の外にある飲食店も利用できるとのことだった。


「今日はもう遅い時間になりますので、よろしければこのままお部屋でお休みください。素材となる《ルナ・ジルコニア》は、明日の朝食後にこちらに運んでまいります。お食事はどうされますか? 機内食は召しあがったかと思いますが、おなかが空かれてるようでしたら今から社員食堂もご利用できますよ。社員食堂は常時調理担当ロボットが控えておりますので、一日中ご利用が可能です」

「あ、ええと、おなかはあまり空いてないので大丈夫です。あの、飲み物はありますか?」

「はい、飲料水でしたらそちらのウォーターサーバーをご利用いただけます。電動ポットもございますので、あたためてお湯にすることもできます。紅茶と緑茶のティーバッグもそちらにございますので、お茶を淹れることもできますよ。よろしければお淹れしましょうか?」

「い、いえ、大丈夫です。あとで、自分で淹れます。ありがとうございます」

「承知いたしました。では、わたくしはいったんこれで失礼します。わたくしは常にこのフロアに控えておりますので、何かわからないことがございましたらいつでもそちらのタブレット端末からお呼びくださいね」


一礼するようなしぐさをして、案内ロボは部屋から出て行った。しん、と急に空気が静かになる。ああいう案内ロボットは地元にもあるけれど、あれは特別優秀な人工知能が使われているのだろう。あんなに丁寧に、なおかつ流暢に案内するロボットを僕は見たことがない。僕はたぶん緊張していたのだと思う。あの案内ロボがいなくなって、なんだか呼吸が楽になる感覚があった。


僕はコップを手に取り、ウォーターサーバーで水を注いで一気に飲み干す。そうして、どっとソファに倒れ込む。予想した通りのふかふかで、でも適度にクッションが効いた感触だ。僕は寝転がった姿勢のまま上着を脱ぎ、靴を脱ぎ、靴下を脱いで、大きく大きく息を吐く。ソファから投げ出した右手に、黒猫の体が触れる。にゃあ、と鳴いて黒猫は、そこから僕の腕をよじよじと登ってきて、胸元を踏んで横切り、ソファの背もたれの上まで上がった。そこでもう一度にゃあと鳴いて、こちらを見下ろしてくる。大きな真っ青な瞳に、だらしない格好の僕の姿がくっきりと映って、僕は苦笑した。


「…きれいだったなあ、あれ」


ふっ、とさっき見たカグヤヒメの像のことを思い出して、僕はつぶやいた。


「新しい商品を開発したいって、言ってたけど。もう、あんなにすごいものが作れるのに、アイディアを募集する必要なんてあるのかな。僕が考えたアイディアなんて、要らないんじゃないかなあ……」


Emo-AIがうまく使えない僕。先生に押し切られてこんな遠くまで来てしまった僕。案内ロボット相手でさえ緊張してしまう、冴えない僕。ほとんど無意識のうちに、僕はソファの上の猫を指先で撫でていた。ほのかにあたたかい感触。黒猫は青い目を細めて、ごろごろごろ、と鳴いた。


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